フジテレビの月9枠で放映されている新ドラマが『続・続・最後から二番目の恋』である。個性的な登場人物が洒落た大人の会話を展開していく、実に面白いドラマである。若者世代にとっては期待外れのようだが、60代以上の高齢者にとっては、今までのような軽薄な物語とは違ってかなり見ごたえのあるドラマである。何しろ会話が軽妙洒脱であり、ウィットに富んでいて、とってもお洒落な内容なのである。取り立ててショッキングな筋書きはないものの、登場人物がどんな会話をするのかと毎回ワクワクドキドキするのである。
最近のドラマは、若者を対象にしたのものが多いし、恋愛ドラマであれば主人公は当然20代か30代である。たまには、中年者を対象にしたものがあるが、60代のリタイア者や退職間近の人物が主人公のドラマなんてあり得なかった。ましてや、フジテレビの月9と言えば、伝統的に若者を対象にした純愛ドラマが多い。そこに、高齢者向けの恋愛ドラマを持ってきたというのは、プロデューサーとしての大英断と言える。しかも、会話をメインにするという、ある意味斬新なアイデアで勝負するというのは、素晴らしいチャレンジである。
ドラマのタイトルもユニークである。最後から二番目の恋というのは、意味深である。最初の恋というのは初恋であり、人生で最後の恋とは終恋とでも言べきか、当然失敗は許されない。最後の恋だからなんとしても成就させたいと考えるし、相手を選ぶにも慎重になる。失敗は許されないなれば、慎重かつ臆病にもなろう。最後から二番目ということなら、失敗しても次があるからと、少し気楽にもなれるだろう。とは言いながら、60代を越えてからの恋愛はどうしたって臆病にならざるを得ない。自分に自信もないから、恋愛に踏み切れない。
最後から二番目の恋というタイトルは、我々のような高年齢者にとって、救いになるような良い題名である。若い頃に聞いた、あるユーモア話を思い出した。男というのは、相手の女性にとって最初のオトコでありたいし、女は相手の男性にとって最後のオンナでありたいと望むという話である。何故なら、女性はオトコにとって自分が一番いい女であったと思わせたいので、これ以上の女性と巡り合えないと確信させたいのだという。一方、男は他のオトコと比べられるのが嫌なので、最初の男性なら比較されず安心して付き合えるらしい。
この笑い話は、実に男女の機微を言いえて妙である。男というものは、スタイルや外面に拘るので、女性から見て良い男を演じたいのかもしれない。人間は内面こそが大事なのに、外面を比較されることを嫌がるようなオトコなんて、大人の女性にとってはクズ男である。男だって、相手の女性にとって最後の男性になりたいものだ。とは言いながら、最後から二番目の恋のように、あまり気後れすることなく、自然体で新しい恋に挑戦したいものである。今は普通に90年生きる時代なのだから、新しいババ恋ジジ恋もいいもんだろう。
最後から二番目の恋というドラマを鑑賞してしみじみと感じるのは、このドラマのような軽妙洒脱な会話が出来るような恋愛をしたいということである。上品で教養を感じさせながらも、けっして知識をひけらかすことなく、ユーモアが醸し出されるような会話を楽しみたいものである。いろんな比喩を用いながら、下ネタもさらっと挟み込みながらも下品にならないように、笑い飛ばせるような会話をしたいと思う。直接的な愛の表現はなくても、相手の想いが手に取るように解るけど口に出さない、そんな大人の恋愛をしたいと思う人も多いだろう。
しかし、高齢者が実際に新しい恋に踏み切るにはハードルが高い。ましてや、いくら恋愛をしたいと言っても相手が必要である。白髪頭で年金生活の貧乏ジジイに恋心を抱くようなもの好きなんている訳がない。フジテレビの「最後から二番目の恋」に出てくる主人公、中井貴一や小泉今日子のような魅力的なナイスシルバーには程遠いことを認知している。ましてや、あのドラマに出てくる主人公のような洒落た会話が出来るような高齢者は、鎌倉あたりの洒落た街なら沢山いるだろうが、田舎には殆どいない。でも、いつかはそんな相手に巡り合い、最後から二番目の恋をしてウィットに富んだ会話を楽しみたい。