育てにくい子になってしまった訳

 世の中の多くのお母さんが持つ共通の悩み、それは『どうしてこの子はこんなにも育てにくい子になってしまったのだろう?』である。愛情をたっぷりとかけて、何不自由のない幸福な生活が出来るようにと、せっせと世話を焼いて育てたのに、何故こんなにも育てにくい子どもになったのだろうと悩んでいるのである。幼児期の頃には、あんなにも素直で良い子だったのに、小学生の頃からどういう訳か手のかかる子になってしまい、しまいにはことごとく親の言うことを、まったく聞かないか守らない子になってしまったのである。

 中学生から高校生になった子どもは、何を考えているのか解らず、突拍子のような言動をして母親を困惑させてしまっている。ごく普通の子育てをしてきたつもりなのに、どうしてこんなにも育てにくい子どもになってしまったのか、訳が分からず途方に暮れてしまっているお母さんが実に多いのである。そして、このような場合共通しているのは、お父さんは困っていないし、大変なことだという認識がないのである。それだけでなく、この育てにくい子どもの味方をする始末で、許せないのは躾の邪魔をしてしまうことである。

 世の中の多くのお母さんたちは、自分が育てられたと同じように我が子を育て上げるのが常である。自分自身がまともに育ち、どちらかというと良い子だと評価を受けて育ってきた。両親からも、そして社会的にもある程度の良い評価を得られているし、何も問題なく普通に生活を営めている。自分と同じように愛情をかけて我が子を育てたつもりなのに、どうしてこんなにも育てづらいのか訳が解らない。原因さえ解れば手の打ちようもあるし、何とか対策や改善策が見つかればと探求をするけれど、解決策は見つからない。

 とても育てにくいとお母さんが感じるのは当然で、ことごとくお母さんの常識や社会的常識と違うことを子どもは平気でしてしまうのである。勉強や片付けは後回しにして、ゲーム・コミック等にはまってしまう。ひとつひとつの動作が遅くて手際が悪く、いつも夜遅くまで起きている。朝はひとりで目覚めることが出来ず何度も起こされてようやく目覚め、朝の準備も出来ず忘れ物も多い。学校からの宿題・課題はいつもぎりぎりか、期限を過ぎるのが常。なにしろ勉強は後回しで、自分の好きな事だけに熱中する始末。

 育てにくい子どもになってしまった原因は、元々その子の遺伝子にあるかもしれない。現代の医学の急激な発達に伴い、乳児死亡率は飛躍的に低下した。一昔前には、遺伝子にエラーがあり脳機能の障害がありながらも産まれてきた子どもは、当時の医療水準では助けるのが難しく、死産または早逝していた。ところが、周産期医療の発達と小児科医療の水準向上により、脳の器質的な障害があっても助かるようになったのである。これは、喜ばしいことであるが、一方では社会に適応しにくい子どもさえ、生存が可能になったのである。

 こうして医学の発達により生き延びてきた子どもたちを、ごく普通の子どもだと思って子育てをしてしまうと、持って生まれてきた少し変わった気質や性格を、益々強化させてしまうのである。こうして、発達障害グレーゾーンと呼ばれる育てにくい子どもが、増えてきているのである。ここで注目すべきは、親はとても育てにくい子どもだと感じてしまうのだが、当の本人は自分が育てられにくいという認識はなく、生きづらいというように感じているという点である。そして、自己組織化やオートポイエーシスの機能が働かなくなっているのである。

 育てにくい我が子が、発達障害のグレーゾーンであるという認識を親が持たないが故に、お母さんは子育てに心身ともに疲れ切ってしまうのだ。ましてや、こういうケースのお父さんは自分自身も発達障害グレーゾーンであるから、子育てを苦手にしているので逃避してしまう。当然、子育ての役割の殆どが母親の分担となる。さらに不幸なのは、母親があるがままにまるごと愛する母性愛だけでなく、躾の愛としての父性愛まで注がなくてはならない点である。こうなると、母親は育てにくい子に対して、さらに強い過干渉と過介入を繰り返すことになる。益々、発達障害グレーゾーンは強化されてしまい、不安型愛着スタイルを抱えることになる。育てにくさが益々増大してしまうのである。

※次回のブログでは、育てにくい子をどのように育てればいいのかをお伝えします。

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