育てにくい子を育て直す

 育てにくい子は発達障害グレーゾーンと不安型愛着スタイルがあるということを、まずは親が認識する必要がある。そして、お母さんだけに子育てを任せないで、父親や祖父母にも育児・教育の役割分担をしてもらうことが肝要である。特に、父親には正しい父性愛を注いでもらう必要がある。何故なら、母親が母性愛に専念できないからだ。母親が母性愛と父性愛を同時進行的に注いでしまうと、育てにくさは解消できない。もし、父親が子育てに非協力的であれば、何度も誠意を持って説得すべきだ。それでも駄目なら、別居をするしかない。

 世の中の父親の多くは、ともすると子どもに嫌われたくないと、子どもにおもねるような態度を取りがちだ。だから、子どもの味方のふりをする傾向がある。自分自身も発達障害グレーゾーンである父親は、精神的に幼稚で自分が嫌われたくなくて、面倒なことを避けたがる。子どもと正面から対峙して、例え自分が嫌われても正論を子どもに伝えなくてはならない。それを父親がしてくれるから、母親は安心して子どもをあるがままにまるごと愛することが出来る。母性愛だけをたっぷりと注ぐ子育てが、すべての出発点である。

 育てにくい子どもは発達障害グレーゾーンであり、当人も生きづらさを抱えている。そして、いつも不安や恐怖感を抱えている。自分が嫌われてひとりぼっちになってしまうのではないか、大切な人から見捨てられるのではないか、という不安を抱えている。だから、無意識下で自分が嫌われたり叱られたりすることを敢えて実行して、相手を試すのである。これがいわゆる試し行動である。だから、保護者はそのことを理解して、どんなことがあってもけっして揺るがない愛情を注ぐ必要があるのだ。試し行動に惑わされないことだ。

 育てにくい子を持つお母さんは、心身共に疲れ切ってしまい心が折れてしまっている。そんな状況に子どもが試し行動を、これでもかこれでもかと何度も起こしてくる。夫やその他の家族の子育て協力がないケースでは、相談する相手もなくて、孤軍奮闘をしがちである。ついつい試し行動を感情的に叱ってしまう。これでは逆効果になってしまう。なにしろ、育てにくい子どもは、不安型愛着スタイルをも抱えているから、安全で安心な居場所がないのである。安全と絆を提供してくれる『安全基地』がないので、いつも不安を抱えているのだ。

 育てにくい子どもを育て直すのは、並大抵のことではない。育てにくい子どもというのは、実は人間本来の生き方を実践しているからである。自由な生き方を望んでいるのだ。どういうことかというと、人間は元々自己組織化する働きがあり、オートポイエーシス(自己産生)という機能を生まれつき保持している。そしてこの自己組織化とオートポイエーシスの機能は、周りの人間から強く干渉や介入をされてしまうと、低下するばかりか無くなってしまうのである。そして、家族との愛着関係が希薄化してしまうと、益々自己組織化とオートポイエーシスの機能が働かなくなるのだ。

 育て直しにおいて、同じ轍を踏んではならない。育てにくい子というのは、愛着関係が薄くなり干渉を受け過ぎて、自己組織化とオートポイエーシスの機能が低下している。社会常識や親にとっての常識を、子どもに無理に押し付けてはならない。育てにくい子は、誰にも束縛されず自由気ままに生きたいのである。まずは、育てにくい子というのが特別なギフトを与えられた素晴らしい存在なのだということを、両親は認識しなくてはならない。そのうえで、子どもの尊厳を認め受け容れ、あるがままにまるごと愛することから始めなければならない。

 育てにくい子が生まれてくる本当の理由は、親に深い気付きや学びを授けたいからである。その学びというのは、人間とは本来あるがまま自由に自分らしく生きる存在だということである。お母さん自身が、有形無形の過干渉をされてしまいあまりにも良い子で育ち、自分らしく生きることが制限されてしまい、生きづらい生き方をさせられてしまったのだ。そのことを、育てにくい子を育て直しすることで、深く学ぶことが出来て、自分が人間本来の生き方に変わるチャンスをもらっているのである。育てにくい我が子をぎゅっと抱きしめて「お母さんにギフトをくれてありがとう」という言葉を何度もかけてあげれば、子は変わる。親が変われば、子は必ず変わる。

※育てにくい子を持つお母さんにこそ、安全と絆を提供してくれる『安全基地』が必要です。イスキアの郷しらかわでは、個別支援はしないと方針変換をしましたが、メールによる簡易な相談には応じます。安全基地にはなれませんが、困った時の相談相手にはなりますので、問い合わせフォームからご相談ください。

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