ストレスからトラウマの時代へ

 ストレスを感じながらも、それでも何とか生きている人は少なくない。ストレスはどうしたって誰にもあるから、仕方ないと思っているだろうし、ストレスに負けては生きて行けないと必要以上に頑張っている人も多いだろう。確かに、ある程度のストレスは自己成長に欠かせないものだし、ストレスを乗り越えることで自信を深めていけるという効果もある。しかし、自分ではストレスだから何とかなると思って居たら、それが深刻なトラウマだったというケースがある。トラウマは、簡単には乗り越えられないし、より深刻化しやすい。

 

 複雑化した現代社会は、とても生きづらいと思っている人が多い。それはストレス社会だからというが、実はそれはストレスだけではなくて、より深刻なトラウマを抱えているからではないだろうか。つまり、我々が生きるこの時代は、ストレスからトラウマの時代になっているということではないかと思えるのである。だから、こんなにもメンタルを病んでいる人が多いし、なかなか回復できない人が多いのであろう。不登校やひきこもりで苦しんでいる方々も、実はストレスによるものではなく、トラウマの影響だと考えられる。

 

 どうしてこんなにもトラウマを抱えた人が多くなったのであろうか。ひとつは、現代人のメンタルが非常に傷つきやすくなっているという要因が挙げられよう。現代の青少年たちは、精神的にひ弱で打たれ弱いと言われている。新入社員が厳しく指導されると、すぐに辞めてしまうと嘆いている先輩社員も多そうだ。そして、職場で厳しくされて離職した体験を何度か繰り返すと、社会に出ていけなくなりひきこもりになるケースも少なくない。現代の若者たちは、おしなべて深刻な生きづらさとひ弱なメンタルを抱えていると言えよう。

 

 現代の若者たちが何故に深刻な生きづらさとひ弱なメンタルを抱えているかと言うと、それは絶対的な自己肯定感が育っていないからである。自分のことが嫌いな若者が多いのだ。絶対的な自己肯定感があれば、いじめやパワハラ・モラハラに遭ったとしても、不登校やひきこもりまで追い込まれることは少ない。失敗や挫折の体験をしたとしても、乗り越えることが出来るのだ。勿論、自己肯定感だけで乗り越えられる訳ではなく、誰かが支えてくれたり深い絆を実感したりする必要がある。自己肯定感がないうえに、絆がないからトラウマを抱えるのだ。

 

 若者たちの自己否定感があまりにも強いのは、育てられ方に問題があるのだと思われる。 1歳から3歳の幼児期において、ありのままの自分を丸ごと愛されることにより、絶対的な自己肯定感が育まれる。つまり、豊かな無条件の愛(母性愛)に包まれて育てられた子どもだけが絶対的な自己肯定感を持つことが可能になる。ところが、無条件の愛が不足しているところに、こういう行動をしなければ愛さないよという条件付きの愛で縛られるのだから、自己肯定感が生まれる訳はない。さらには、ダブルバインドのコミュニケーションでがんじがらめにされて、傷ついた愛着を抱えてしまう。

 

 こうして傷ついた愛着や不安定な愛着を抱えていると、深刻なトラウマを起こしやすい。しかも、愛着障害であるとHSP(ハイリーセンシティブパーソン)になりやすいから、普通の人よりも敏感な感覚によって、余計に傷つきやすいのである。それでなくてもトラウマを抱えやすいのに、身体的な不調までも起こしやすい。女性は、PMSやPMDDになりやすいし、線維筋痛症や神経性疼痛を発症しやすい。こうして、トラウマは深刻化するし固定化してしまうことが多いのだ。トラウマが長期化するし、ひきこもりが長く続くことになる。

 

 ストレスからトラウマの時代になっているというのは、明治維新以降から近代教育を取り入れ、さらには戦後の子育ての誤謬により、自己肯定感を育てることが出来なかったせいであろう。これからの時代は、トラウマを抱えて生きる人が益々増えるだろう。最近になり「誉める教育」というものが注目されているが、付け焼刃のような誉め方では、あまり効果が得られないだろう。もっと根本的な育て方、あるがままにまるごと愛するという幼児教育がなされないと、自己肯定感は育まれずトラウマを抱えて生きる人が増えるに違いない。由々しき大問題である。

愛着障害という病名はないが

 精神科の医師に、「私は愛着障害なのではありませんか?」と聞いてみてほしい。精神科の医師はこう言うことだろう。「愛着障害という病名はありません」ときっぱりと言い切るに違いない。そして、愛着障害という精神疾患はないのだから、愛着障害を治す薬もないし、治療法もありませんと続けることだろう。確かに、医学界では愛着障害を精神疾患として取り扱っていないし、治療する医師は殆どいない。しかし、実際に愛着障害で苦しんでいる人は非常に多いし、愛着障害による二次的症状で辛い思いをしている人は想像以上に多い。

 

 ひきこもりの状態にいる人は、日本の中で少なくても115万人いると言われている。このひきこもりになっている本当の原因は、単なるメンタル疾患や精神障害ではなくて、愛着障害だと言っても過言ではないだろう。また、発達障害と診断されている中の多くは、愛着障害の二次的症状として現れているだけであろう。発達障害があることで虐めに遭いひきこもりになっているケースでは、元々愛着障害があると思われる。双極性障害やうつ病などの気分障害においては、愛着障害が根底にあることが少なくないのではないかとみられる。

 

 不登校やひきこもり、そして発達障害や気分障害を起こしている根底に愛着障害があるのではないかと思われる。勿論、すべての対象者が愛着障害だとは言い切れないが、かなりの割合で愛着障害を抱えているのは確かであろう。愛着障害とは精神疾患(病気)ではないが、多くの精神疾患の元になっている可能性は非常に高い。そして、精神疾患だけでなくて生活習慣病を始めとする多くの身体疾患に罹患する要因にもなっている気がする。さらには、パーソナリティ障害(人格障害)を抱えている人にも、不安定な愛着を持つケースが多い。

 

 こんなにも深刻な二次的な症状を起こす愛着障害であるが、どういう訳か精神医学界ではあまり注目しない。愛着障害が根底にあっての二次的症状だとすれば、投薬治療では完治させられないし、いくら優秀なカウンセラーやセラピストであっても根本治療は不可能である。現代の精神医療において、医学の発達がこれだけ進んでいるのに治療効果が上がらないのは、根本的な疾病の原因を探り当ててないからと言えないだろうか。愛着障害を克服しなければ、精神疾患を完治させられないし、これからも様々な疾患が増え続けるだろう。

 

 殆どの精神疾患と身体疾患の根本原因が愛着障害にあるのではないかと唯一提唱している精神科医が存在する。それは、岡田尊司先生である。岡田先生は、元々はパーソナリティ障害を専門に研究されていた。パーソナリティ障害を抱えて苦しんでいる青少年を、献身的に治療されていらしたのである。パーソナリティ障害に関する著書や研究論文も多数ある。青少年犯罪を起こすパーソナリティ障害の子どもたちを診療していたら、強烈な愛着障害を抱えていることに気付かれたのであろう。それから愛着障害を癒す治療に専念されてきた。

 

 岡田先生の著書に、『死に至る病~あなたを蝕む愛着障害の教委』(光文社新書)というものがある。現代人は何故幸福になれないのか?どうして生きづらさを抱えているのか?何故、こんなにも精神疾患や精神障害を抱えている人々がいるのか?と問われ、それは根底に愛着障害があるからだとこの著書の中で岡田先生は主張されている。そして、驚くことに自分はごく普通の家庭で育ち、両親からたっぷりの愛情を注がれてきたと思っている人でも、愛着障害を抱えているケースが結構多いことにも着目している。こういう人は、原因が解らない強烈な生きづらさを抱えていて、社会への不適応を起こしている。

 

 愛着障害を抱えている人たちは、殆ど漏れなくHSP(ハイリーセンシティブパーソン)を抱えている。神経学的過敏症、並びに心理社会学的過敏症を起こしてしまっている。故に、強烈な生きづらさと適応障害を抱えているのである。また、愛着障害の女性はPMSやPMDDを抱えているケースが非常に多い。そして、過緊張を抱えているが故に、身体のあらゆる場所に疼痛を起こしていることが多い。線維筋痛症を発症することも少なくない。原因の解らない身体の不調やメンタル疾患を抱えていたら、愛着障害があるのではないかと疑ってみたらどうだろうか。愛着障害を癒せたら、心身の不調は見事に解決できるだろう。

自傷行為(リストカット)をする子どもたち

 日本の中高生のうち、10%の子どもたちが自傷行為を経験しているという。この数字を少ないと思う人はいないに違いない。こんなにも多くの子どもたちが自傷行為をしているということに驚く人が殆どであろう。そして、さらに驚くのは10%の子どもたちのうち、約半数は自傷行為を繰り返していると言うのだ。つまりは、常習的な自傷行為者なのである。子どもたちは、どうして自らの身体を傷つけてしまうのであろうか。そして、その自傷行為を何故繰り返すのであろうか。繰り返すということは、誰も気付いていないということだ。

 

 自傷行為(リストカット)をする子どもたちは、孤独感を抱えているのだという。自分の辛い気持ちを解ってくれる人は誰もいないというか、誰にも話せないらしい。そして、強烈な生きづらさを抱えているし、満たされない思いを抱いているという。孤独だというのなら、自分の傷ついた心を話せる家族や親族もいないのだろうし、友達もいないということだろう。友達が居たとしても、悩みを打ち明けられるような親友はいないということだ。つまりは、家族がいたとしても、天涯孤独という気持ちなんだろうと思われる。

 

 自傷行為をする子どもたちは、親との良好な関係性を築けていないと思われる。つまりは、親との愛着が不安定というのか、傷ついた愛着なんだろうと思われる。そういう意味では、attachment disorder(愛着障害)と言える。愛着障害というと、親から虐待やネグレクトを受けて育った子どもがなるのだと思われているが、けっしてそんな子どもだけがなる訳ではない。ごく普通に愛情たっぷりに育てられた子どもだって愛着障害になるのである。ただし、その愛情のかけ方に問題があるから、愛着障害になってしまうのだ。

 

 勿論、虐待やネグレクトを受けて育った殆どの子どもは愛着障害になる。それだけでなくて、親から過干渉や過介入をされて育った子どもも愛着障害の症状を呈する。または、いろんな事情によって、子育ての途中で養育者が変更になってしまった時にも愛着障害になりやすい。例えば、母親が病気になったり他界してしまったりしたケースである。または離婚や両親夫婦の不仲で、母親が家を出て行ったり、家庭崩壊したりするケースも同様である。両親が四六時中に渡り喧嘩していても、子どもは愛着障害になる。

 

 最近多いのは、父親が発達障害であり、母親がそのせいでカサンドラ症候群になってしまったケースである。こういう母親に育てられたら、殆どの子どもは愛着障害を起こしてしまう。さらには、母親が愛着障害であれば、子どもは同じように愛着障害を抱えることが極めて多い。このように自傷行為をしてしまう子どもは、根底に愛着障害を抱えていることが多いのである。愛着障害はメンタルの不調だけでなく、身体の不調も起こすし、学習意欲も低下することが多いから、不登校やひきこもりになることが少なくない。

 

 愛着障害が根底にあって自傷行為を繰り返す子どもは、どのようにして救えば良いのだろうか。自分の悩みを誰にも話せないのだから、誰も気付かない。学校の先生も気付かないし、養護教員でも気付けないことが多い。例え生徒が自傷行為をしていると気付いても、学校カウンセラーであっても、救うことが極めて難しいだろう。愛着障害は、専門家であっても傷ついた愛着を癒すことは困難だ。何故なら、愛着障害は子どもだけの問題ではなくて、親と子の関係にこそ問題があるのだから、親を癒せないと愛着障害を乗り越えることが難しい。

 

 自傷行為を起こす本当の原因が愛着障害にあるとすれば、愛着障害を癒すことが出来る専門家はいないのかというと、けっしてそうではない。児童精神科医の岡田尊司先生は、愛着障害に精通されていて、治療効果を上げていらっしゃる。岡田尊司先生の研究成果を取り入れて、愛着障害の治療をする専門家も増えつつある。勿論、我が子が自傷行為をしていることを認識できなければ、治療はできない。まずは、自分の子どもが自傷行為をしていないかどうかを発見できる感受性が親に必要だ。もしかすると我が子が愛着障害ではないかと心当たりがある親は、子どもの話を傾聴し共感することから始めよう。

ネバーランドから出ておいで

 ネバーランドという国をご存知だろうか。勿論、実際に存在する島国ではなくて、架空の世界にある島国のことである。ピーターパンの戯曲に出てくる国のことだ。ピーターパンと同じように、ネバーランドに住む子どもたちは年をとらない。永遠の子どもなのである。と言うか、大人になりたくない子どもたちである。ピーターパン症候群というパーソナリティ障害があるが、ネバーランドに住む子どもたちは、ある意味ピーターパン症候群だとも言えよう。日本でも、ネバーランドから抜け出せない大人が沢山いることに驚く。

 

 ピーターパン症候群は、男性に多いと言われてきた。しかし、女性にも同じように大人になり切れず、子どものままの精神状態に置かれたままになっている人がいる。アダルトチルドレンと同じようなパーソナリティ症状を呈する傾向がある。ひきこもりの状態に追い込まれてしまっている人も、ネバーランドの住人だと言えなくもない。ネバーランドの住人達は、その精神が極めて強い幼児性を示す。回避性、または逃避性のパーソナリティを持つ。さらには、強い依存性のパーソナリティも示す。そして、ネバーランドから出て来ようとしない。

 

 ネバーランドの住人たちは、子どものようにプラモデルが大好きだったり、アニメやゲームに引き込まれていたりする。中には、大人になってもキティちゃんが大好きだったり、アニメに登場するフィギュアの収集癖もあったりする。心が子どものままだから、純粋なあまり潔癖症でもあり、完璧主義にも陥りやすい。付き合う相手にも純潔や母性・父性を求める傾向が強いから、恋愛が成就することはあまりない。どうして、ピーターシンドロームになってしまうのかというと、乳幼児期の育てられ方に問題があったせいではないかと思われる。

 

 今でもネバーランドに住んで、大人の社会に出て来られない人は、愛着障害だと思われる。つまり、乳幼児期に何らかの問題があって、十分な母性愛を与えられなかったのであろうと思われる。または、愛情が与えられたとしても条件付きの愛だったし、あまりにも介入や干渉をされ過ぎた愛だったのだと思われる。それ故に親との良好な愛着が構築されなかったので、甘え体質と依存体質を卒業できなかったのだと思われる。あるがままでまるごと無条件の愛をたっぷりと注がれないと、自己肯定感や自尊心が育たず愛着障害になるのだ。

 

 ネバーランドの住人たちは、自分がピーターシンドロームだという自覚がないし、愛着障害だとは思ってもいない。あまりにもネバーランドの居心地が良いものだから、ピーターパンのようにそこから抜け出ようとしない。当事者の自覚がなければ、いくらネバーランドから支援者が彼らを救い出そうとしても、徒労に終わってしまう。なにしろ、ネバーランドの住人は頑固であり拘りが強い。素直に聞き入れることが出来ない。中には、謙虚な気持ちで受け入れてくれる女性はいるが、殆どの男性は頑固であり、聞く耳を持たない。

 

 ネバーランドの住人がそこから抜け出すことは難しいが、ひとつだけネバーランドから出られる可能性がある。男性であるならば、母性愛豊かなウェンディのような女性に出会うことである。ネバーランドに住むのが女性ならば、ウェンディのような母性愛を注げる包容力の豊かな男性に出会うことである。まるごとあるがままに愛してくれる異性に出会い、支えてもらえたならネバーランドから抜け出せるかもしれない。しかし、残念なことにそういう人は稀有な存在であるし、ネバーランドの住人は恋愛下手なのである。

 

 ネバーランドの住人は、精神的に幼稚であるから気ままな性格だし、気分が不安定なので突然怒りを爆発させたり落ち込んだりする。自尊心や自己肯定感が低いから、自分に自信が持てない。対人恐怖症や対面恐怖症があるし、醜形恐怖症が伴いやすい。異性とコンタクトを取るのがそもそも苦手なのである。これでは、恋愛に発展しにくいのは当然である。そんな気難しいネバーランドの住人であっても、そっと支えてくれる異性が現われてくれたなら、勇気を振り絞って甘えてほしいのである。ネバーランドから抜け出せるのは、これしかないのである。さあ、ネバーランドから出ておいで、ピーターパンさん。

一歩を踏み出す勇気が出ない

メンタルが傷ついたり弱まったりしてしまい、一旦不登校やひきこもりの状態になってしまうと、社会復帰が非常に難しくなる。そして、よしんば不登校やひきこもり状態を上手く乗り越えたとしても、再度ひきこもりに陥ってしまうことになりやすい。自分では何とか社会に出たいと思い、勇気を振り絞って一歩を踏み出したいと思うのであるが、なんとも言えない不安が心一杯に広がり立ち止まってしまう。一歩踏み出す勇気がどうしても湧き出ないのである。どうして勇気がないのだろうかと悩みの日々を過ごすことになる。

 

不登校になったり休職・退職をしたりしてしまうのは、心に不安や恐怖を抱えているからである。その不安も特定の何かではなくて、得体の知れない不安であることが多い。何となく将来に対する不安を覚えてしまうことが多い。今まで、いじめや不適切指導を受けた経験を重ねたこともあるし、失敗や挫折を味わったことも影響しているかもしれない。ストレスがトラウマ化している影響もあろう。周りからいくら安心だよと言われたとしても、どんなにサポート体制を取ると言われたとしても、一歩が踏み出せないのである。

 

どうして、不安や恐怖を払拭できないのかというと、HSP(ハイリィセンシティブパーソン)という気質があるからだ。このHSPというのが、非常に厄介な症状を引き起こす。HSPは疾患名ではない。神経学的な過敏症に始まり、それが社会心理学的過敏も引き起こす。神経学的過敏は、聴覚過敏、嗅覚過敏、視覚過敏、味覚過敏、触覚過敏を引き起こす。強い光、大きな音や声、特定の臭い、強い味、触れられることなどに強い嫌悪感を示す。全部の過敏もあれば、一部の感覚だけに過敏を示すケースもある。非常に複雑である。

 

これらの神経学的過敏の症状が、やがて社会心理学的過敏をも引き起こすことになる。例えば大きい声や怒鳴り声に過敏を示す場合、騒々しい場所や多くの人の話し声が聞こえるような場所が苦手になる。騒々しい学校や職場が苦手な場所になるし、電車や飛行機など騒音を発する場所にも行けなくなる。スピーカーから聞こえる音に拒否反応を示すこともある。やがて、あまりにも神経が過敏であるが故に、相手の気持ちが手に取るように分ってしまうことがある。それも、相手の批判的気持ちや悪意に反応するのである。

 

HSPは対面恐怖症や対人恐怖症に発展しやすい傾向がある。なにしろ、人と会うことが怖いのである。しかも不思議なことに、親しくなればなるほど恐怖になるケースもある。相手との距離感が縮まってしまうと、自分の内面を覗かれてしまうような気がするのである。自分の心の裡にある、醜い心や汚い心が知られてしまう恐怖なのかもしれない。このような神経学的過敏と社会心理学的過敏が相まって、一歩を踏み出せなくなるのではないかと思われる。怖いと思う心だけでなく、身体が恐怖で動かなくなってしまうのである。

 

それでは、どうしてこのようなHSPという症状を引き起こして、不安や恐怖を感じてしまうのだろうか。それは、根底に愛着障害(傷ついた愛着・不安定な愛着)があるからだ。そして、何故に愛着障害になるのかというと、安全と絆を保証してくれる『安全基地』がないからである。人は安全と絆が保証されていないと、いつも不安や恐怖を抱えて生きることになる。乳幼児期からいつも不安や恐怖を感じさせられながら育てられると、大人になってからも安心できなくなる。得体の知れない不安にいつも押し流されそうになるのだ。

 

いつも不安になる愛着障害があるうえに、さらにHSPがあるから、一歩が踏み出せず臆病になってしまうのである。それでは、愛着障害を抱えるといつまでも一歩が踏み出せなくなってしまうのかというと、けっしてそうではない。愛着障害を癒すことができてしまえばHSPも和らげることが可能になる。愛着障害を乗り越えてしまえば、一歩を踏み出す勇気が出てくるに違いない。愛着障害を乗り越えるには、臨時的なものであったとしても安全基地が必要不可欠である。安全と絆さえ保証され続けたら、不安や恐怖を乗り越えることができるし、一歩を踏み出す勇気が出てくる。

芸能人の自殺連鎖が止まらない

昨日の未明に女優の竹内結子さんが自殺したというニュースが流れた。自宅の寝室クローゼットで首を吊っての自殺だという。卓越した演技力のあった女優さんに、何があったのだろうか。それにしても、三浦春馬さんの自殺に始まり、その後に芦名星さんが後を追うように自殺して、今度は竹内結子さんということで、自殺連鎖が止まらない。不思議なことだが、自殺は連鎖するのである。おそらく、無意識に刷り込まれてしまい、発作的に自殺するのであろう。心配なのは、芸能人が亡くなる度に、一般の方の後追い自殺が増えることだ。

 

3人に共通している生活習慣がある。それはお酒である。三浦春馬さんは、かなり問題があるような飲み方をしていたと伝えられている。芦名星さんも、かなりの酒豪だったらしい。竹内結子さんも豪快な飲み方だったらしいが、キッチンドリンカーだったとも言われている。コロナ禍によって外飲みが制限されてしまい、宅飲みを強いられたことで、ストレスを上手く処理出来なかったのかもしれない。大酒飲みがすべて自殺をしてしまう訳ではない。しかし、3人がアルコール依存症のような飲み方をしていたように思える。

 

アルコール依存症の人がすべて自殺しやすい訳ではない気がする。どちらかというと、重症のアルコール依存症になった人は自殺しにくいように思えて仕方がない。完全なアルコール依存症になり切れず、中途半端にアルコールに依存していて、何とか日常生活に支障をきたさないような程度にお酒を飲む人が危ないように思える。そして、まさしく三浦春馬さん、芦名星さん、竹内結子さんがそのような飲み方をしていたのではあるまいか。軽い依存症のようなアルコール摂取こそが、危険なような気がする。

 

いずれにしても、軽度だとはいえお酒に依存するというのは、心に問題を抱えている証拠である。単純に、お酒が好きだということだけではない。心の中にぽっかりと穴が空いたように感じて、強烈な生きづらさを抱えるが故に、それを紛らわせるためにお酒にのめり込むのではないだろうか。アルコール依存症が重症化してしまう人は、お酒に強いと言われている。重症化したアルコール依存症の人は、自分自身を見失っているケースが多い。だから、どうしようもない自分を消し去りたいとは思わないのかもしれない。

 

よく自殺した人のことに、原因はこうだったに違いないという報道やSNSの書き込みが増える。その中で、守るべき存在や悲しむ人があるのにどうして、ということを言う人がいる。それは、一度も死にたいと思ったことがない人なんだろうと思う。人は、守っていかなければならない人や自分の死を悲しむ人がいたとしても、希死念慮を消し去ることは出来ない。どんな状況だろうと身を挺してでも自分を守ってくれる存在、深い絆で結ばれた愛し愛される関係の人がいれば、自殺をしようとは思わないのである。

 

お酒に生きづらさの解消を求める人、またはお酒でしか自分の悲しみや寂しさを埋められない人は、『安全と絆』がないのだろうと思う。安全と絆というのは、自分のことをあるがままにまるごと愛してくれる存在である。そして、どんなことがあっても自分を守ってくれる存在であり、けっして見捨てることをしない信頼できる人である。それを心理学用語で、セーフティベース(安全基地)と呼んでいる。自殺をしようとする人は、自分にとっての安全と絆である『安全基地』がないのだと思われる。

 

著名な芸能人が自殺をすると、一般の方々が自殺連鎖を起こすことが多い。もし、自殺を考えている人がいたら、自分の安全基地になってと、誰かに求めてほしい。それは、臨時的な安全基地「いのちの電話」のような電話相談でもいい。安全と絆を一時的にでも確保してもらいたい。そして、いずれはリアルの世界で安全基地を作り上げてほしい。自分の住まいに安全基地がないのであれば、違う環境にしばらく身を置くのもよいだろう。自然が豊かな所に心を癒す旅に行くのもいいだろうし、農家民宿のような処で土と触れ合う旅もいい。きっと、そこで安全基地が見つかるに違いない。

自殺が回復期に起きるのは何故か

 本日10日から16日までを自殺予防週間として、厚労省がその啓発のために設定している。日本において、ここ数年間自殺は減少しているらしい。それでも、まだ毎年2万人もの方々が自らの命を絶っている。厚労省を始めとして各県や各市町村行政も自殺予防の啓発を勧めている。とは言いながら、自殺防止の有効な手立てはないに等しい。何故なら、事前に相談してくれるなら手を打てるが、自殺者の殆どが誰にも相談しないからだ。そして、うつ病などの気分障害の回復期に自殺が起きる。ほっと安心した瞬間こそ危険なのだ。

 自殺者は、何らかのメンタル疾患を持つケースが多い。特に多いのがうつ病などの気分障害。またはアルコール依存症、パニック障害、PTSDで苦しむ人も少なくない。そして、人間関係に悩む人も多い。間違いなく言えるのは、強烈な生きづらさを抱えているということ。不思議なことに、これらのメンタル疾患が回復してきて、気分も少し良くなってきた時期に自殺してしまうことが多い。心の病が回復してきて、さあこれから社会復帰できるのではないかと、夢と希望が湧いてきた時期なのである。家族や友人だって、ほっと一安心するに違いない。

 うつ症状のどん底にいる時は、心も身体も思うように動かなくなる。ところが、少し回復してくると、意欲も出てきて身体も少し動くようになる。職場復帰に向けて動き出したり、ひきこもりから抜け出したりしそうになる。そんな時に、ちょっとした言動で傷つき、自分を消してしまいたくなるらしい。精神医学界では、医師もカウンセラーも回復期における自殺行動をそんなふうに分析している。果たして、本当にそうなのであろうか。もっと違う何か特別な心身の動きがあるのではなかろうか。

 ひとつの仮説ではあるが、ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)がその原因を説明できる。ポリヴェーガル理論によると、人間が八方塞がりの状況に追い込まれてしまうと、心身のシャツトダウン(遮断)が起きてしまう。それは、自分の身体と精神の破綻を守るために、古い迷走神経が敢えて働いてしまうのである。つまり、精神が壊れるとか自らの命を絶ってしまわないように、自己救済の為に古い型の迷走神経(背側迷走神経)が働き、心身を遮断してしまい余計な動きを止めてしまうのである。医学的なアプローチ(投薬)などにより、中途半端にその遮断を解くと、心が動き出して自殺をしてしまうと考えられる。

 ポリヴェーガル理論をもう少し詳しく述べたい。自律神経には交感神経と副交感神経がある。今までの医学界では、それだけだと思われていた。ところが、副交感神経(迷走神経)は、二つ以上あることが判明したのである。ひとつは旧来の副交感神経である、免疫を高めたりリラックスをさせたりする腹側迷走神経。もうひとつは、心身の危険を感じて闘争や逃走が出来なくなった際に働く背側迷走神経である。職場・学校・家庭などにおいて、トラウマ化するような苦難困難・危機が迫り、闘うこともできず逃げることも適わない事態になると、人間は背側迷走神経により遮断・フリーズ状態に陥るのである。

 この遮断(フリーズ)状態に陥ると、重症うつ病のようにまったく身動きが取れず、ひきこもりのようになってしまうことが多い。医学的アプローチやカウンセリングなどにより、少しずつ遮断が解けてきた時にこそ、危険な状況になる。身動きできなかった身体が動き始め、心も動くようになる。自己否定さえ考えないようにして自殺を止めていたのに、自殺念慮が動き出してしまうのである。遮断によって、自殺しないように止めてあったのに、その歯止めが取れてしまったのである。だから、中途半端に遮断を解いてしまうと、悲惨なことになってしまうのだ。

 それでは回復しつつあっても、自殺をしないようにするにはどうしたらよいのだろうか。遮断を安全に解く方法はないのだろうか。ヒントは、『安全基地』の確保である。そもそも何故背側迷走神経が働いて遮断が起きるのかというと、安全基地が存在しないからである。安全と絆を提供する安全基地がなくて、誰も助けてくれず守ってくれないから、八方塞がりに追い込まれて、遮断・フリーズが起きるのである。遮断に追い込まれた人に、寄り添い支えて、あるがままにまるごと受容してくれる存在がいれば、遮断から安全に抜け出すことが可能になる。そうすれば回復期に自殺する人はいなくなる。

※心身が完全にシャットダウンしてひきこもりや不登校になっている時は、自殺する人は意外と少ないのですが、少し回復してきた時にこそ自殺のリスクが現われます。ポリヴェーガル理論における遮断・シャットダウンを緩やかに解いて、危険を回避させる方法(プロセス)をお伝えしています。問い合わせ・申し込みのフォームからご相談ください。

    ストレス耐性が低い訳

    世の中には、ストレスに滅法強い人がいるかと思えば、めっきりストレスに弱い人もいる。ストレスに強い人は、ストレス耐性が強いと言うし、弱い人は低いと言う。ストレス耐性が低い人は、どうしてそうなるのだろうか。地位が高くて実績もあり世間から立派だと思われていて、ばりばり活躍している人がいる。そういう人は、強い精神力を持ち発言力も強い。周りの人から観たら、ストレスなんて殆どないか、ストレスに負けない強い気持ちを持っているとしか思えない。しかし、そういう人でもストレス耐性が極めて低いということがある。

     

    そんなことはないだろうと思う人は、多いに違いない。しかし、実際に安倍総理が多大なストレスに負けて潰瘍性大腸炎を悪化させ、政権を投げ出した。あれほど多くの疑惑を持たれながらも、強弁を用いて逃れてきたのだからストレス耐性が高いと思われてきた。だが、意外とストレス耐性が低い人だったのかもしれない。本人がストレスに弱いことを知っていたからこそ攻撃的な態度を取り続け、反撃を抑え込んできたのかもしれない。著名な政治家だけでなく、企業経営者なんかも、実はストレス耐性が低いという人が意外と多い。

     

    世の中には、このようにストレス耐性が低いけれど、そんなことを微塵にも見せず、豪放磊落な態度を取る人は多い。逆に言えば、ストレス耐性が低いからこそ、地位とか名誉を高める努力をして、攻撃されないようにしたいのかもしれない。または、ストレスに弱いと言う評判が立てば、地位や名誉は手に入らない。当然、ストレス耐性が高いように見せつけなければ、人々からの信任は得られない。だから、気持ちの弱さを一切見せず、その弱さを隠して強く振舞っているのかもしれない。弱い犬ほど吠えるのと同じである。

     

    それでは、どうしてストレス耐性が高い人と低い人がいるのだろうか。ストレス耐性が強ければ、どんなに悲しいことや辛いことがあっても気持ちはめげないし、一旦落ち込んでもすぐに立ち直ることが出来る。ストレス耐性が高い人は、メンタルの病気になりにくいし、いろんな病気だって寄せ付けない。ストレス耐性が高ければ、幸福な人生を歩めるに違いない。うつ病、双極性障害、パニック障害、PTSDにだってストレス耐性が高ければならないし、生活習慣病や悪性腫瘍にもならないに違いない。

     

    ストレス耐性が高ければ、職場で休職や退職にも追い込まれないし、不登校やひきこもりにもならないであろう。とすれば、ストレス耐性を高めることが出来れば、仕事への復帰が可能になるし、不登校やひきこもりだって乗り越えられるに違いない。ストレス耐性が異常に低い人はどういう人かというと、自尊感情が極めて低い人、自己肯定感がない人である。だから大きなストレスに抗うことが出来ないし、ストレスがトラウマ化してしまうのである。いつも不安や恐怖感を抱えて生きているので、気持ちがめげてしまうことが多い。

     

    自尊感情が育っていなくて、いつも自己否定感を強く持ってしまう人というのは、『安全と絆』がない人である。つまり、自分の心の中に『安全基地』を持たない人である。自分の中に信じられない自分がいるということでもある。何故にそうなったかというと、小さい頃の育てられ方に原因がある。親との良好で豊かな愛着が結ばれていないことに原因がある。愛着障害と言ってもよい。2歳から4歳の頃に、『あるがままの自分をまるごと愛されない』という経験をすると、自尊感情が育たない。言い換えると母性愛が不足するのである。

     

    いや、私は十分に親から愛されていたから、愛情不足はないと思う人いるかもしれない。確かに十分な愛情を注がれたとしても、それは支配愛でありコントロールされた愛である。干渉され過ぎた愛は、子どもに強烈な自己否定感をもたらし、愛着障害にさせてしまう。または、ダブルバインドで育てられたケースも同じである。さらには、母親の病気や仕事などの事情で、途中で養育者が変わったというケースでも愛着障害が起きてしまう。三つ子の魂百までも言われているが、まさしく幼児期の育てられ方が大人になっても強烈な自己否定感をもたらし、ストレス耐性を極めて低くさせてしまうのである。

     

    ※ストレス耐性が異常に低くて、各種依存症、摂食障害、PTSD、パニック障害、うつ病、ひきこもり、不登校などで悩んでいらっしゃる方は、もしかすると愛着障害かもしれません。愛着障害を乗り越える方法を「イスキアの郷しらかわ」はお伝えしています。または愛着障害を克服するお手伝いをしています。問い合わせフォームからご相談ください。

      アダルトチルドレンの原因とその克服

      アダルトチルドレン(AC)という言葉が盛んに言われ始めたのは、今から15年以上前のことだ。ところが、最近またACという言葉がネット上で話題になることが多い。自らがACだとカミングアウトしている人が増えたのである。ACという言葉が最初に日本で言われた時は、自分のことをACだと言われるのは恥だと思う人が殆どであった。しかし今は、時代が変わったのであろうか、自らACだと認め受け容れたほうが、周りの人々も理解を示すし、生きづらさの原因がACだからと認識することで、気が楽になるのかもしれない。

       

      ACというのは、正式な精神疾患名ではない。あくまでもパーソナリティの偏りのことをいう。ACによる二次的症状によりメンタル疾患があれば、医学的治療の対象となる。ACだけでは治療が受けられない。しかし、強烈な生きづらさを抱えるが故に、自殺やひきこもりになってしまうケースも多い。ACの原因は、養育者からの虐待や育児放棄、毒親による子育て、機能不全家庭、アルコール依存症を初めとする依存症の親、本人の遺伝的体質などと言われている。確かに、そういった要因があるものの、本当の原因は愛着障害にありそうだ。

       

      ACの方々に共通しているのは、親との関係性が少し歪んでいるという点である。当事者と親たちは、良好な関係だと思っているケースであったとしても、安定した良好な愛着が形成されていないことが多い。つまり、親との愛着が傷ついていたり不安定化したりしているケースが殆どである。そして、親の虐待、依存症の親、機能不全家族、毒親でなかったとしても、子どもがACになってしまうことが起きている。そして、HSP(ハイリィセンシティブパーソン)の症状を抱えていることが多いのも特徴である。

       

      ACを克服するのは、非常に難しいと言われている。ACは病気ではなくてパーソナリティ障害の症状を呈しているのだから、医学的なアプローチや治療が功を奏しないのは当たり前である。勿論、愛着障害も癒すことが困難である。どちらにしてもACを完治させるということが難しい。しかし、愛着障害を和ましたり癒したりすれば、ACの症状も軽くなると思われる。ACになる要因や愛着障害を起こす原因が親との関係性にあるのだから、親に対するアプローチや支援が不可能であるなら、ACを癒すことが出来なくなる。

       

      確かに、親へのアプローチが可能ならば、愛着障害を癒してACを乗り越えることも可能であろう。しかし、我が子に愛着障害を起こしてしまっている母親に愛着アプローチをするのは、非常に難しい。悪気があってそうしている訳ではなくて、一所懸命に子育てしての結果なのだから、自ら気づき変わることをしたがらない。支援者が、母親に原因があると主張すればするほど、自分自身を守るために頑なになるのは当然だ。ましてや、その母親が高齢になっていたら、益々アプローチの困難度を増してしまう。

       

      ACの当事者が自らの愛着障害を癒して、ACを乗り越えるしかないのであろうか。それは不可能ではないし、実際にACを自分の努力だけで克服した人も居ない訳ではない。さらには、素晴らしい伴侶に恵まれて、ACが癒される人も存在する。しかし、そんなケースは本当に稀なことでしかない。不思議なことに、ACを抱えている人は、ACの伴侶を選んでしまうことが多い。それ故に、機能不全家族となってしまうことも少なくない。愛着障害が世代間連鎖するのと同じように、ACも世代間で引き継がれてしてしまう。

       

      ACを克服するには、やはり誰かのサポートや援助が必要だと思われる。それも、けっして支援する姿勢を変えずに、一定の支援と見守りをする必要があるし、けっして見捨てないという態度も求められる。つまり、安全基地としての機能を発揮し続ける人物が必要なのである。それは、医師、カウンセラー、セラピスト、でもいいし、親族や友人でもかまわない。ACの当事者は支援者を疑ってかかり、試し行動を何度もするので注意が必要だ。しかも、支配と制御などの介入を嫌がるので、けっして干渉をしないで共感的メンタライジングを発揮できる支援者でなければならない。そうした熟練した支援者なら、ACを乗り越えられる。

       

      ※自分が明らかにアダルトチルドレンだと認識していて、生きづらさを抱えている方は、イスキアの郷しらかわにご相談ください。または、イスキアの郷しらかわで数日お過ごしされることをお勧めします。ACになってしまった本当の原因を知り、ACをどのようにしたら乗り越えることが解ると、気持ちが楽になり前向きになります。お問い合わせフォームからお申込みください。

      睡眠障害を克服する方法

      日本人の5人に1人は睡眠障害を抱えていると言われている。実際は、それ以上の人々が何らかの睡眠に対する問題を抱えていて、おそらくは日本人3分の1は良好な睡眠が取れていないのではないかと見られる。そして、睡眠障害がより深刻化していくと、やがては重篤なメンタル不調になってしまう可能性はかなり高いと思われる。特にうつ病などの気分障害と睡眠障害の関連性は非常に高く、メンタル疾患を抱える殆どの患者さんは睡眠薬を処方されている現実がある。メンタル不調は睡眠障害から始まると言われている所以である。

      不眠は、心配事や悩み事を抱えて起きると言われている。つまり、何らかのストレスが引き金になって起きることが多い。それも、単独のストレスだけでなく、職場と家庭の両方にストレスを抱えてしまった時や、家庭内だけでも複数のストレスを受けた時に、睡眠障害が起きやすい。人間の脳は、ある程度のストレスには対応できるのだが、自分の力ではどうしようもない状況に追い込まれ、八方塞がりの状況になってしまうと、睡眠障害を起こしてしまうようだ。一旦そうなってしまうと、睡眠障害からは容易に抜け出せない。

      不眠を治そうとして、市販の睡眠導入剤や睡眠薬を飲んでみるのだが、ストレスによる不眠にはあまり効果がないことが多い。医療機関を受診して薬を処方されても、同様の結果であることが多い。多少の睡眠は取れたとしても、熟睡感は得られにくい。脳を無理やり薬によって麻痺させているだけだから、十分に眠ったという感覚が持てないのは当然である。医師は眠れないと訴える患者に、どんどん強い薬を処方する。でも、ストレスを解消しないで単に対症療法をするだけだから、不眠が解消されることはないであろう。

      それじゃ、睡眠障害は治らないのかというと、そうではない。適切な処置や対応をすれば、睡眠障害を克服できる可能性が高い。まずは不眠の元になっているストレスの解消である。これは、自分の努力で解決できるものもあれば、どうにもならないストレスもある。不眠の原因になっているストレスは、自分がいくら努力しても解決が難しいものである。だからこそ、不眠になってしまうのだ。それも、多重ストレスであって、トラウマ化しつつあることが多い。だから、脳が対処仕切れなくて、異常興奮になり不眠が起きているのである。

      例えば、こんなケースが考えられる。発達障害(自閉症スペクトラム=ASD)を抱えている夫と暮らしている妻がいたとしよう。妻には、子どもがいる。一家の収入の大半は夫に依存している。夫とコミュニケーションがうまく取れないばかりか、夫は言葉や態度のDVで妻を日常的に苦しめる。夫婦仲は最悪で、子どもは父親を嫌っている。別れたいと思うのだが、経済的な困窮が予想され、子どもを抱えてシングルマザーとして生きていくことに不安があり、離婚に踏み切れない。夫のDVが恐怖であり、将来の不安もあり不眠になっている。

      このような八方塞がりの状況になってしまうと、ストレスはトラウマ化してしまい、身体と心は過緊張になる。こうなると背側迷走神経の暴走が起きて、身体はフリーズ状態になってしまう。自律神経はアンバランスを起こし、コルチゾールやアドレナリンが放出される。筋肉は過緊張から拘縮を起こしてしまい、血流障害などの循環障害を起こして、血管内に乳酸などの老廃物が溜まる。身体のいたるところでしびれや痛みを発症し、眠れなくなってしまうのである。この状況になると、投薬治療やカウンセリングだけでは不眠症を根治できなくなる。

      何故、睡眠障害が根治出来なくなるかというと、背側迷走神経の暴走が起きてしまい、身体がフリーズを起こしているからである。一旦、人間はこのフリーズ状態に陥ると、自分の力ではどうしようもない。誰かの支援が必要になる。第三者が安全と絆である「安全基地」を提供してあげると同時に、身体の筋肉緊張を緩めるボディーワークが必要である。そして、トラウマ化してしまったストレスを解消するカウンセリングを同時に行うとさらに効果が高まる。睡眠障害を根治させるには、自然体験や農業体験も効果あるし、適切な運動療法も必要だ。これらの根治療法を複合的に組み合わせることで、睡眠障害を克服できる。

      ※イスキアの郷しらかわでは、睡眠障害を克服する方法をレクチャーしています。身体を緩めるボディーワーク、カウンセリング、運動療法、音楽療法、その他の根治療法の仕方をお教えしています。また、自然体験や農業体験も提供・指導しています。問い合わせフォームから相談・申し込みをしてください。

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