SNS上の投稿やコメントを見ていると、自称HSPだという人が極めて多い。あまりにも生きづらい人生だからと自己診断をすると、HSPの項目に該当しているから、自分はやはりHSPだと気付いて、何故か安心する人が多い。勿論、うつや双極性障害などの気分障害と診断された方々が、HSPの傾向があると正式に診断されるケースも増えてきている。確定診断や自己診断も含めると、HSPやHSCという方たちは異常に増加しているのは間違いない。勿論、近年になりHSPが認知されたという影響もあるが、この増え方は異常だ。
どうして、こんなにもHSPやHSCが増えたのであろうか。元々、HSPだったのにも関わらず、知らなかったから見逃していたという理由だけでもなさそうだ。明らかにHSPの人は増えているように感じる。そして、HSPの影響により生きづらさを抱えている人も増加しているし、その為に二次的に深刻な症状を起こす人も少なくない。このHSPになってしまう原因とそれを防ぐ手立てを考えないと、メンタルを病んだり深刻な精神障害を起こしたりする人が増えてしまい、不登校やひきこもりが益々増えそうである。
HSPになってしまう原因は、必要以上の不安や恐怖感を抱いてしまう乳幼児期を過ごしてしまうからである。絶対的な安心感を持ちながら育てられないと、HSCになってしまうのである。乳児や幼児というのは、親からの庇護を受けて育つ。つまり、絶対的な守護神がいざという時は自分を守ってくれるのだという安心感が必要なのである。まるごとありのままに愛され続けて、どんなことがあっても自分の味方になってくれるという安心感が、子どもの健全育成には必要なのである。そうすれば、絶対的な自己肯定感も確立される。
HSCになる脳のシステム異常は、安心ホルモンと呼ばれるオキシトシンホルモンの欠乏によって起きると考えられている。正確に言うと、オキシトシンレセプター(受容体)の欠乏が起きているのである。乳幼児期に十分なスキンシップや抱っこをされないと、十分なオキシトシンレセプターが増えない。また、どんなことがあっても自分を愛し続けてくれるという安心感を持てないと、オキシトシンレセプターは欠乏してしまうのである。オキシトシンレセプターが欠乏する状況になってしまうと、HSCになってしまうのである。
また、それだけではなくて不適切な養育によってもオキシトシンレセプターが作成されないという事象が起きる可能性がある。例えば、虐待、ネグレクト、不機嫌な態度、無感情無表情での養育などを続けると、オキシトシンレセプターは作成されにくい。さらに、過干渉や過介入、恐怖感を利用した支配やコントロールを繰り返すことも悪影響を与える。ダブルバインドのコミュニケーションもオキシトシンレセプターの形成を阻害する。母親が養育途中から仕事に熱中して子育てを離脱したり、養育者が変更されても同様である。
このように、十分なオキシトシンホルモンの取り込みが阻害されてしまうと、いつも不安や恐怖感に苛まれてしまい、HSCになってしまう。オキシトシン不足によりHSCやHSPになってしまうと、良好なアタッチメントが形成されず、不安型のアタッチメントを抱えてしまう。あまりにも酷いケースだと、愛着障害にもなってしまう。HSPによってASDの症状が出てしまうケースもあるし、気分障害、パニック障害、PTSD、双極性障害にもなるリスクが高くなる。つまり、HSPが根底にあっての二次的メンタル症状は深刻だ。
さて、このように増えてしまったHSCやHSPをどのようにすれば癒せるかというと、非常に難しいと言わざるを得ない。一番確実で効果がすぐに出るのは、このように育ててしまった親が心から悔いて劇的に変われば子どもは癒される。しかし、親は自分がそのようにしてしまったとは認めたがらないし、自分自身のメンタルや価値観も歪んでいるから、自ら変わろうとはしない。したがって、自分自身で自分を癒すしか方法がないのである。とは言っても、第三者の誰かが心理的安全性を担保して、傾聴し共感して寄り添ってくれたら、自己革新のチャンスが出てくる。つまり、自分自身で安全基地を作るまで、誰かが臨時の安全基地になってくれたら、安定的なアタッチメントが形成できてHSPが癒されよう。