派閥の政治資金パーティを開催して、パーティ券売り上げの一部を議員にキックバックして裏金にしていたという、前近代的な金権政治の権化のような事件が発覚した。自民党安倍派の議員を中心に実施していたと伝えられるが、どうしてこんなにも破廉恥な行為をしていたのか、不思議に思う人も多いことであろう。誰がどのようにしてこんな金集めと裏金の捻出を企てたのか、いずれ検察によって明らかにされると思われる。国民は何故こんなにも裏金が必要とされるのか知りたいであろうし、そうさせた張本人も知りたいに違いない。
様々な関係者の証言や政治アナリストの分析、そして政治記者の取材によって裏金の使い道が判明してきた。政治家のすべてが裏金を必要としている訳ではないが、その裏金の殆どが選挙の為に使われるらしい。その選挙というのは国政選挙のことであり、票集めの資金に使われるという。国会議員の選挙区には、選挙で選ばれた県会議員がいるので、その県会議員に票集めを依頼するらしい。保守系の議員は、押しなべて票集めの資金を必要としているという。地方議員の選挙資金にも必要なので、国会議員の裏金に頼るのではなかろうか。
国会議員は公設秘書2名を雇う費用を税金によって賄える。しかし、国会議員の中にはそれだけでは選挙区の選挙対策を全う出来ないので、保守系の議員は公設秘書以外に4名~6名の私設秘書を雇わなければならないという。そして、その私設秘書を雇う資金は、国会議員が負担しなければならないので、裏金を必要とするのではないかと見られている。それにしても、私設秘書の選挙対策というのはどういうことであろうか。そのために、こんなにも多くの人数の私設秘書を必要とするのは何故であろうか。
政治評論家や政治記者の情報によると、広い選挙区を持つ地方の国会議員は選挙区の有力者の住居や会社をこまめに個別訪問することが求められるという。ところが議員一人では回り切れないので、私設秘書がその役目を代わって行うらしい。また、選挙区における道路や公共交通施設の充実をしてほしいとの陳情を受けるのも私設秘書の役目だという。公共施設の新築や改築の陳情も受けるという。新規工場誘致や巨大レジャー施設の誘致の陳情を受けるのも私設秘書の貴重な役目だ。優秀な私設秘書を持てば、選挙に有利になるのだ。
国会議員に対する陳情は、これだけではないという。有力者の子息の就職斡旋や行政職受験の際の口利きまで依頼されるらしい。それは今の時代は非常に難しいと思われるが、正職員の採用までは難しいものの臨時職員や関係機関の職員採用には有効だと、密かに囁かれている。地方の小さな町村役場の臨時職員からいつの間にか正職員になったケースもあると聞く。国会議員は、地方の町村首長や議員に大きな影響力を持つのである。その為に、彼らの選挙時には『陣中見舞い』と称して多額の裏金が使われるのは、言わずもがなであろう。
裏金は国会議員どうしの間でも飛び交うと言われている。自民党の党首選挙は、首相を選ぶ選挙でもある。多数派工作は、足の付かない現金が使用されるのは当然だ。自分が所属する派閥の領袖が党首選挙に立候補したなら、派閥所属議員は他派議員への多数派工作に真剣に取り組むことになろう。超高級料亭に招待して、現金を渡して投票を依頼する構図は誰でも想像できる。大臣や副大臣になれたのも、裏金のお陰とも言える。保守系の政治評論家や政治記者も高級料亭や銀座の一流クラブに国会議員から招かれて、議員に有利な評論や記事を依頼されると言われている。これも裏金の一部だ。
このように裏金の用途を見てきたが、国民や社会の為には一切使われることはないのである。日本の首相や大臣、国会議員は裏金の恩恵で選ばれていると言っても過言ではない。こんな金権政治のシステムを作り上げた責任は国民にあると言えよう。裏金による金権政治を招いた張本人は、我々国民なのである。自分の利益誘導の為に国会議員や地方議員を利用する企業役員や国民がいる限り、裏金を生み出すシステムがなくなることはないのだ。こんな私利私欲に塗れた議員たちを選んだのは我々国民である。国民が私利私欲に走るから、私利私欲の議員が選ばれるのだ。我々国民自身が公利公益を追求する姿勢に変わらない限り、私利私欲の金権政治がなくならないのだ。