サッカー日本代表の勝因をシステム科学で読み解く

 ワールドカップでサッカー日本代表チームが強豪のスペインとドイツを破って、一次リーグをトップで通過した。どちらか一方を破るかもしれないと予想した人は少なくないかもしれないが、両方のチームを負かして予選リーグをトップで通過すると予想した日本人は少なかっただろう。ましてや、世界のサッカー界を牽引するスペインとドイツを敗戦に追い込むと予想した両国のサッカーファンは皆無に違いない。言わば奇跡とも言えるような番狂わせを演じた日本の強さは、どうして生まれたのかをシステム科学で分析したいと思う。

 サッカー日本代表チームはサムライブルーとも呼ばれている。サムライブルーが勝てたのは、世界でも活躍できる選手を招集することが出来たからだというのは間違いない。しかし、想像した以上に活躍できたのは、森保監督の采配の的確さと指導力の賜物だという人は多い。誰もが、森保監督の手腕を認めているであろう。その戦術は、的確であり効果的であったと思われる。特筆すべきは、森保監督の指導力(教育力)の素晴らしさであろう。科学的な根拠に裏付けされた指導力と選手の育て方は、世界でもトップクラスと言える。

 森保監督の指導と育て方は、心理学と教育学、さらには脳科学的にもエビデンスに伴ったものだと言えよう。故に、選手の個々の能力を発揮することが可能になったし、実力以上のものが引き出せたに違いない。最先端のシステム科学に基づいたような采配と指導を行えば、大きな成果を産みだすのは当然である。人間はひとつのシステムであるし、チームという組織もまたシステムである。このシステムの機能を最大限に発揮するには、システム科学の思考が必要である。そのシステム思考に基づく指導をしないとシステムは機能しない。

 森保監督の指導方法は、実に科学的でありシステム思考の哲学に則った選手の育て方をしたのである。だから、選手たちは実力以上の能力を発揮したのであるし、チームがまとまって結果を残したのである。システム思考に則った指導法とは、自己組織化と関係性を重視した育て方のことである。この指導を行えば、オートポイエーシス(自己産生・自己産出)が起きる。つまり、個々の選手が大きな成長をするし、チームが大きな結果を産みだすことになるのだ。まさしく、森保監督はこの科学的な手法を用いて結果を残したのである。

 スポーツの指導者はともすると、選手を成長させようとして、厳しく選手に接しがちである。規則やルールで縛ろうとするし、勝手に行動しないように制御しがちである。監督が思い描いたように、選手を動かそうとする。確かに、監督が描いた戦術通りに選手を動かしたくなるのは当然である。ところが、選手をコントロールしようとすればするほど、選手は動かなくなる。練習の時には上手く動いてくれるが、緊張したり興奮したりする場面や大事な試合になればなるほど、身体が動かなくなったりミスを犯したりするものなのだ。

 人間と言うのは、一方的に支配されて所有されたりすると、本来の機能を発揮できなくなる。または、強い干渉や介入を繰り返して、制御をし過ぎると、自己組織化の能力を発揮できなくなる。チームもやはり強すぎる干渉や制御により、自己組織化できなくなるしオートポイエーシスが働かなくなる。森保監督は、選手に対して干渉や介入を極力避けていたようであるし、選手個人の主体性や自主性、さらには責任性を尊重していたらしい。さらには、選手との関係性、またはチーム員どうしの和(関係性)を高める言動を心掛けていた。

 絆(関係性)が強ければ、個人や組織の自己組織化が高まる。個性豊かなサムライブルーだが、選手どうしと監督との関係性は、世界でもトップクラスの豊かさだと思う。その絆の強さは、監督の人柄と言動によるものだと思われる。指導力は高いし戦略性のある外国人監督だが、残念ながら言葉の違いもあるし日本人独特の文化・習慣に疎いので、関係性を高めることは出来なかったように思う。誰よりも優しく思いやりのある日本人らしい森保監督だからこそ、関係性が豊かになりシステムの機能が高まって、結果を残したのである。決勝トーナメントでも、今まで通りに選手を指導してくれることを期待したい。

牛肉を食べると地球温暖化が進む

 牛肉を食べると地球温暖化を招くと聞いても、ピンとこない人が多いかもしれない。牛肉と地球温暖化にどのような関連があるのか、不思議に思うことであろう。牛が呼吸をすることで二酸化炭素を増やすから、または飼料作成の段階で二酸化炭素を放出することにより、地球温暖化が進むと考えるのは、普通に考えられることだ。しかし、牛を育てると二酸化炭素だけでなく、地球温暖化の物質が大量に出るという事実があるのだ。その地球温暖化の元凶とはメタンガスである。牛はメタンガスを大量に出す生き物なのだ。

 牛には、胃が4つあるということは広く知られている。第一胃に入れた食物を、第二、第三、第四の胃へと反芻しながら移していく。牛は第一の胃に入れて、食物を消化する為に腐敗を起こさせる。この腐敗させる段階で、メタンガスが大量に作成されて、反芻の際にゲップをして外に放出されるのである。メタンガスは、二酸化炭素よりも遥に高い温室効果ガスになってしまうのである。二酸化炭素の28倍もの高い温室効果があると言われている。牛の反芻のゲップだけが、メタンガスの発生源ではないが、かなりの量が発生している。

 メタンガスの発生源は、牛の他に反芻をする羊もゲップをすることが知られているが、牛ほどのメタンは発生させていない。化石燃料を燃焼させる時にもメタンは発生するし、ゴミの集積所でも生じる。田んぼでもメタンの発生が確認されている。発生源のうち、牛の発生量はかなり多いらしい。牛だけを地球温暖化をさせている悪者にするつもりはないが、実際に東南アジア、アフリカ、南米でメタンガスが大量に増えている。これらの地域では、牛肉を食べる食習慣が増えていて、ここにきて牛の飼育が急増しているのも事実だ。

 SDGsを推進するために、牛の飼育頭数を減らす努力が求められる。温室効果ガスだけの問題だけでなく、省エネや健康増進の観点からも牛肉を大量に消費する食習慣を見直すべきではないだろうか。牛を飼育する為には、大量の穀物を食べさせる必要がある。先進国が牛を食することで、飼料である穀物を大量に消費してしまい、発展途上国で穀物が足りなくなって飢餓が起きているのである。日本でも牛肉を必要以上に消費するようになった。牛丼やハンバーガーが大量に消費されるようになったからだ。

 元々日本においては、牛肉を食する習慣はあまりなかった。明治維新の文明開化によって、牛鍋、すき焼き、焼き肉、ステーキの食文化が広まった。富国強兵策と肉食がリンクしたのであろう。戦後には欧米の食文化がさらに広まり、ハンバーガーが大量に消費されると共に、牛丼がファストフードとして定着し、大量の牛肉が消費されている。ハンバーガーや牛丼は廉価であるし、手軽にどこでもいつでも入手できることから、大量に食されるようになった。このようなファストフードの食習慣は、伝統的な和食文化を廃れさせている。

 牛乳を飲むという食習慣も、戦後に米国がパン食を日本に広めるための戦略が機能して、広まってしまった。牛乳が健康を増進するというプロバガンダが成功したのであろう。日本では、牛乳を飲むという食習慣はなかったが、学校給食において牛乳を飲ませることで、日本の子どもたちの食習慣を洋風に変えたのである。牛肉を食べることと牛乳を飲むという食習慣が日本に広まったことで、牛を飼育する農家が急激に増えたのである。さらに、牛肉の輸入自由化によって、安価な牛肉が米国や豪州から大量に輸入されるようになった。

 このまま牛肉を大量に食べ続ける食習慣と牛乳をたくさん飲む食生活を継続すると、世界で牛を大量に飼育することになり、SDGsを進めるうえで問題となる。地球温暖化に悪影響を与えるのは間違いない。だとすれば、完全に牛肉を食べないようにするとか、牛乳を飲まないようにするということは難しいが、大量消費だけは避けたいものである。ましてや、牛肉や牛乳を摂り過ぎると健康上の問題が起きると主張する専門家が多い。元々日本の伝統的な食文化においては、肉を食べるのはハレの日だけだった。日常的に大量の牛肉を食べる食習慣を見直して、地球温暖化を防ぎたいものである。

芸能人が心身のトラブルを抱える訳

 日本の芸能人だけでなく著名な世界のスターたちもまた、心身のトラブルを抱えているケースが少なくない。それも、身体と心の両方にトラブルを持っていることが多いのだ。日本の芸能人では、昔から心身のトラブルを抱えていても、あまりカミングアウトをすることがなかった。最近はあまり気にすることなく、心身のトラブルをカミングアウトして、療養のために休養する芸能人が増えた。世界的な大スターでも、レディーガガが線維筋痛症をカミングアウトしたし、ジャスティンビーバーがラムゼイ・ハント症候群という難病を公表した。

 ジャスティンビーバーは、この難病だけでなく鬱と薬物依存症だったと告白したし、レディーガガは摂食障害で苦しんだと伝えられている。日本の芸能人でも、線維筋痛症や原因不明の痛みやしびれを抱えている人も多いし、鬱や摂食障害、PTSDやパニック障害、薬物依存やアルコール依存で苦しんでいる例が多い。そして、それらの芸能人に共通しているのが親との関係に問題を抱えていて、中には毒親だったとカミングアウトするケースもあるということだ。自己肯定感が育ってなく、HSPを抱え不安や恐怖感を持つ芸能人が多い。

 どうして芸能人は心身のトラブルを抱えてしまうのかというと、根底に愛着障害を抱えているのではないかと思われる。親が才能ある子どもに大きな期待をして、過介入や過干渉を繰り返し、親の思うままに支配しコントロールをしているのであろう。勿論、親は意識してそんな毒親まがいの仕打ちをしている訳ではない。子どもが有名になり大スターになるように育てたいと強く思い過ぎるあまり、親はそんなふうに子どもを操ってしまうのだ。まるで自分の思いのままに踊るマリオネットのように子どもを扱うのだ。

 子ども時代に愛着障害になるように育てられた子どもは、大人になってもその障害を乗り越えることは難しい。強烈な生きづらさを抱えて生きるようになるし、不安や恐怖感から抜け出せない。このような芸能人は、おしなべて魅力的なのである。多くのファンを惹きつける芸やパフォーマンスを披露する。それは、天性の才能があるとも言えるからである。HSPという症状がそのような才能を開花させると考えられる。彼ら彼女らの何とも言えない素敵なパフォーマンスは、ファンの心の琴線を打ち震わせるのである。

 もしかすると、芸能人がたまたま愛着障害とHSPを抱えているのではなくて、愛着障害とHSPを根底に抱えているから芸能人として大成しているのではなかろうか。だから、多くの芸能人が心身のトラブルを抱えているのかもしれない。愛着障害とHSPを抱えるが故に、そのパフォーマンスが人々を惹きつけたとしても、彼らの心身のトラブルが深刻になってしまい、自死を選んでしまうことは避けてほしいものである。自らの命を縮めてしまった芸能人が何人もいるが、苦しい胸の裡を誰かに打ち明けていたら防げたと思うと残念だ。

 愛着障害を抱えて心身のトラブルを抱えた人が、その障害を癒せて心身のトラブルを乗り越える方法はないかというと、まったくない訳ではない。親が深く反省して、生まれ変わったように母性愛(無条件の愛)を注ぎ続けて、安全基地の役割を果たすことが出来たら、愛着障害は癒える。しかし、そこまで変われる親は皆無である。自分が我が子を愛着障害にしてしまったという認識がないからである。心身のトラブルに苦しむ当の本人も、愛着障害であるという認識がないのだから当然だ。もし、愛着障害であるという認識を持てたとしても、親が高齢になっていたら、乗り越えるのは極めて難しい。

 それでは親に期待できないとしたら、どんな癒しの方法が考えられるだろうか。親に代わって安全基地となれる存在がまず必要である。個人でも良いが、出来たらチームで安全基地になるのが好ましい。何故なら、個人だと依存され過ぎるし、異性だと転移が起きやすいからである。勿論、転移が起きても結婚できるなら良いが、なかなかそうは行かない。安定した愛着を持っている人なら安全基地になれるが、そういう人は極めて少ない。チャールズチャップリンが四度目の結婚をしたウーナ・オニールはそういう女性だった。それまでは私生活で不幸だったチャップリンは、彼女の献身的な愛により愛着障害を乗り越え、幸福な人生の幕開けを迎えられたのである。

※愛着障害とその二次的症状であるHSPやメンタル疾患、そして身体的な不調は、医療機関でも根治できないことが多いようです。何故なら、愛着障害が原因だと認識している医師やカウンセラーがいないからです。ひとつだけ愛着障害を癒せる方法があります。それは『オープンダイアローグ療法』というミラノ型の家族療法です。残念ながら、オープンダイアローグ療法を取り入れている医療機関は極めて少ないのです。イスキアの郷しらかわでは、オープンダイアローグ療法の方法をレクチャーしていますので、ご相談ください。

摂食障害を乗り越える方法

 摂食障害に苦しんでいる人たちは、想像以上に多いという事実を知らない人が多い。何故かと言うと、摂食障害だということを本人が隠しているケースが多いからである。摂食障害の子どもを抱えている親も、そのことを隠したがる傾向にあるし、医療機関の受診をさせない場合も多い。摂食障害を抱えている子ども自身も、医療機関に行きたがらないし、自分の苦しみを誰にも相談できないのである。一人で過食と嘔吐を繰り返す摂食障害の苦しみを抱え込むことが多い。中には、親にもひた隠しにしている子どもがいる。孤独感を抱えているのだ。

 たとえ、専門の医療機関を受診したとしても、治療が難しいこともあり、症状が改善することはまずない。そもそも摂食障害を起こしている子どもとその親は、摂食障害が深刻な病気であるという認識がないし、起きた原因を特定できていないのである。親たちも、子どもの摂食障害について相談したがらないし、相談されても適切な助言ができる相談機関も少ない。したがって、摂食障害の子どもと親は、この障害は治らないものだと諦めることが多い。子どもだけでなく、親も孤独感を抱えているのである。

 確かに、摂食障害は治りにくい。投薬治療も効果が見られないというか、そもそも投薬治療は適切ではない。カウンセリングやセラピーを受けたとしても、その効果は限定的である。障害を起こした本当の原因を特定できていないのだから、当然であろう。摂食障害の真の原因は、親子関係における問題にある。親子の愛着に問題を抱えているから、摂食障害が起きると言っても過言ではない。『愛着障害』こそが、摂食障害の本当の原因である。だから、摂食障害の子どもだけを治療しても改善しないのである。

 摂食障害が起きているのは、愛着障害に原因があるのだから、親子関係における歪んだ愛着を改善しなければ、摂食障害は治ることはないと言える。障害を起こした子どもの治療も必要だが、親に対する治療こそが求められる。愛着障害は、親の子どもに対する態度が根本的に変わらなければ、癒されない。したがって、親に対する適切なカウンセリングこそが必要なのである。ところが、摂食障害の原因が自分にあるのだということを、親は認識したがらない。ましてや、障害の原因が自分にあると言われたら、反発して聞く耳を持たない。

 摂食障害を起こしている子どもは、自分が愛着障害だということを知らないことが多い。そして、その親もまた子どもとの愛着に問題があるという認識がない。何故なら、愛情不足なんて絶対にないと思うくらいに、子どもに対して愛情を沢山注いできたという自信があるからである。愛情不足なんて絶対にないと思うほど、親たちが子どもに愛情をこれでもかという位に注ぎ続けているのは確かである。それは障害を起こしている親子に共通している事実である。しかし、親が子どもにかけている愛情こそが問題なのである。

 摂食障害を起こしている子どもに対して注がれてきた愛情は、父性愛的な愛情である。無条件の愛である母性愛は、絶対的に不足している。障害を起こしている子どもに注がれてきた愛情は、過介入や過干渉の愛である。それは、本当の愛ではない。偽りの愛情である。親が、無意識のうちに子どもを支配する為、かつ子どもをコントロールする為に注いでいる歪んだ愛である。本来は、親は子どもに対して『あるがままにまるごと愛する』という態度が必要である。そういう母性愛だけを3歳くらいまで注ぎ続けなければならない。それを怠ってきたから愛着障害が起きて、摂食障害という二次障害を起こしたのだ。

 何故、親はそんな間違った愛情を注いだのかというと、実は親もまた愛着障害だからである。だからこそ、親に対する治療が必要なのである。唯一、摂食障害を癒す治療法がある。その治療法とは、『オープンダイアローグ』である。ミラノ型の家族療法であるこのオープンダイアローグは、愛着障害を根本的に治すことが出来る。この療法は歪んでしまった愛着を、本来の豊かな愛着に変えてくれる。しかし残念ながら、このオープンダイアローグ療法を取り入れている医療機関は極めて少ない。精神科の医師やカウンセラーは、是非ともこのオープンダイアローグを学んで実践して、多くの摂食障害者を救ってほしいものである。

オカルト宗教にはまった人を救うには

 安倍晋三元総理の銃撃事件から、にわかに旧統一教会に関わる政治家への糾弾が激しくなった。いまさらと思うが、マスコ・SNS上でも、それらの政治家批判が広がっている。それにも増して、旧統一教会の悪質な資金集めが注目を浴びると共に、えげつない会員勧誘の実態が明らかになり、教会員になった当人だけでなく、その家族の悲惨な状況が報道され始めている。一度旧統一教会のようなオカルト宗教に入信してしまうと、あまりにも巧妙な脱退引き止め工作もあるが、当人が洗脳されているので脱会が困難となる。

 入信してしまった当人の家族は、何とか脱会させようと説得を試みるのであるが、家族の話に聞く耳を持たない。オーム真理教の時もそうだったが、一度信じてしまうと頑なに脱会への説得に反抗する。自分が正しくて、入信しない人たちが騙されていると思い込んでいるのだ。逆に家族を説得しようとする始末で、手に負えない状況になっていることが多い。多額の寄付をさせられたり、高額な壺や教本、または書画などを買わされたりして、破産することも少なくない。信者二世は、貧困に喘ぐことになる。実に可哀そうなのである。

 オーム真理教事件の際にも、大きな社会問題になったのであるが、信者たちは巧妙に洗脳されてしまっているという事実である。強力なマインドコントロールを受けているから、どんなに説得しようとしても、効果がまったくないのである。まさしく、旧統一教会を初めとしたオカルト宗教は、強力なマインドコントロールを実施しているのである。心理学や脳科学に精通した科学者たちが助言しているのであろうが、実に巧妙な洗脳策なのである。一度マインドコントロールをされてしまうと、その制御から覚めることは、まずないのである。

 それでは、一度マインドコントロールをされると、絶対に覚醒することはないのかというと、そうではない。心から信頼をしている支援者から、適切できめ細やかなサポートを受ければ、洗脳から目覚めることが可能になる。しかし、その適切な支援方法を知っている人は少ないし、その技量を持ち合わせている人は極めて少ない。ましてや、その方法を知っていたとしても、長くて苦しいマインドコントロールからの脱却を支援するのは、並大抵の苦労ではない。自分自身も心身ともに疲弊するし、自分の生活を犠牲にする覚悟も必要だ。

 オカルト宗教にはまった人を助け出す方法を論じる前に、何故オカルト宗教にはまってしまうのかを明らかにしたい。オカルト宗教だけでなく、殆どの宗教において信者にする為に、今のままだと不幸から抜けきれないし、これからも不幸が続くと脅す。人々の持っている不安感を煽るのである。普通の感覚や感性を持っている人ならば、そんな言葉に騙されない。ところが、愛着障害を抱えていてHSP(ハイリィセンシティブパーソン)の人は、不安感や恐怖感を持っているので、簡単に引っかかってしまう。HSPは神経学的過敏と心理社会的過敏を持っているので、強烈な生きづらさを抱えているし、愛情に飢えている。

 そんな愛着障害とHSPを抱えているが故に、オカルト宗教に簡単に騙されて、マインドコントロールされてしまうのである。こうなってしまうと、どれ程「あなたは騙されているし洗脳されている」と説いても、聞く耳を持てないし反発するのである。歪んだメンタルモデルが一旦作られてしまうと、どんな言葉も受け入れない。宗教関係者の声にしか耳を傾けないのである。このような状況になってしまった人には、ナラティブアプローチかオープンダイアローグしか効果がない。出来れば、ナラティブアプローチの手法を用いたオープンダイアローグが必要である。

 ナラティブアプローチは、対象者をけっして否定しない。まずは、共感をするし傾聴するだけである。どんなに間違った価値観や哲学を持っていたとしても、それを批判したり否定したりしないのである。何度も何度も同じ話を聞いて、否定せず共感するのである。そうすると、セラピストを信頼するし安心するのである。そして、本人にいろんな質問をして行くうちに、自らの間違いに気付き始めるのである。オープンダイアローグ療法にて、家族と一緒に複数のセラピストと共にナラティブアプローチを活用した質問をして行き、時折適切なリフレクティングを活用していくと、より効果が高くなる。そうすれば、マインドコントロールから抜け出せるに違いない。

腹七分目がアンチエイジングを実現

 昔から日本で言われ続けてきた健康の秘訣に、『腹八分目』というものがある。おそらく、いつも満腹まで食べ続けて飽食人生を歩んできた人は、不健康になり長生きも出来なかったに違いない。一方、敢えて八割程度の食事量で我慢した食生活を続けた人は、健康で長生きしたのではなかろうか。そのような人々の生き方から、腹八分目という言葉が生まれたのであろう。飽食を続ければ、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病になりやすいし、肥満になって下半身に負担がかかって腰痛や膝痛で悩む人も多かったであろう。

 最新の科学的な検証によって、この腹八分目が正しいということが証明されたのである。この食事制限というのは、普通の食事カロリーの25%~30%なので、正確に言えば腹八分目ではなくて腹七分目というべきかもしれない。何故、カロリー制限をするとアンチエイジングが実現するかというと、それはサバイバルシステムが起動するからである。そのサバイバルシステムに重要な働きをするのが、サーチュイン遺伝子である。サーチュイン遺伝子は、適度なストレスをかけられると、危機的状況を感知してサバイバルシステムのスイッチをONにするのだ。

 このサバイバルシステムというのは、どのような意味なのかと言うと、こういうことらしい。食事カロリーが制限されて生きて行く上でギリギリのエネルギー状態に置かれると、種の保存が脅かされる危機感を持つらしい。つまり、身体が危機的な状況に追い込まれたと感知するのだ。そうすると、どのような方法を使っても、種を保存しなくてはならないと、身体のシステムが勝手に働くのである。老化をさせないようにして、後々まで生殖能力を残そうとするのである。そのために、老化した細胞を再活性化させて若返りを図るのである。

 米国ウィンスコン大学の研究チームがアカゲザルを研究対象にして実験した結果、食事を70%に減らしたグループの方が、制限しなかったアカゲザルのグループよりも三倍も病気と老化にならない確率が高かったという。30%の食事制限したグループのアカゲザルは、肌がつやつやして皺も少なく、毛並みも明らかに良かったらしい。ただし、他の研究グループでの実験結果では、あまり効果がなかったという報告もあったという。そこから解ったのは、やせているサルは食事制限の効果が少なく、少し肥満気味のサルに効果があるということだ。

 アカゲザルにカロリー制限の食事を提供することにより、アンチエイジングの効果があるという実験結果が現れたものの、人間ではまだ実証実験がされていない。人間が30%の食事制限よって、老化が抑制されるということは、理論的には証明されている。腹八分目は医者いらずという諺は、実体験からできたものであろう。断食をすると、健康になるというのも広く知られている。そして、激やせの人間は食事制限してもサーチュイン遺伝子は活性化せず、少し肥満気味の人間の方がカロリー制限の効果が出るのかもしれない。

 適度なダイエットによってサバイバルシステムのスイッチがONになると、サーチュイン遺伝子が働き始めて、オートファジーが活性化されて活性酸素が消去され始める。心筋の保護機能も働くし、脳の神経変性疾患も抑制され、認知症も予防される。体の中に産生された活性酸素が消去されれば、癌の発生も抑制されることだろう。それだけではない。ストレス改善や疲労改善にも効果がある。シミや皺も改善されるし、ミトコンドリアの活性化が起きる。老化した細胞に働きかけて、DNAを修復するのである。

 この飽食の時代に、30%削減した食事を摂り続けるというのは、難しいかもしれない。美味しい食事が目の前に並んでいれば、ついつい食べてしまうだろう。それで、プチ断食がお勧めかもしれない。最近、16時間ダイエットという手法がもてはやされている。夕食後、16時間は食べ物を口に入れないというダイエット法である。つまり、朝食を完全に抜くという方法である。サーチュイン遺伝子を活性化させるサバイバルシステムを働かせるのだろう。毎日ではなくても、16時間のプチ断食が効果的かもしれない。いずれにしても、飽食を止めなければ老化が進むということを認識しなければならない。

依存させる子育ては駄目なのか

 子どもを育てる際にどの親も願うのは、自立した子どもに育ってほしいということだろう。それは、経済的に自立できる大人になるということであるが、それ以上に願うのは、親も含めて誰にも依存しない生き方をしてほしいという意味である。誰にも依存せず、しっかりと自分の足で大地に立ち、主体性を持って自主独立の道を歩むことを、親は心から願っている。そのために、親たちは我が子が甘えようとしても甘えさせず、依存をさせないようにと自分でやりなさいと突き放すことが多い。依存性を持たないようにという親心である。

 確かに、子どもに依存性を持たせないようにすることは必要である。小さい頃から依存させないような子育てをしたいと思うのは、親にしてみたら当然であろう。しかし、あまりにも小さい頃から、自立させようとして我が子に厳しく接するのは、逆効果になってしまうことを知らない親が多い。特に、三歳になる頃までは、依存させて構わないのである。三子の魂百までもという諺があるが、三歳になるまでが子育てでは大切なのは言うまでもない。三歳まではどんなに甘えさせても、過保護であっても良いのである。

 逆に、三歳の頃までに過保護にしなくて、甘えさせることなく、依存させずに育てると、自立できなくなってしまうのである。そんな馬鹿なことがあるかと思うかもしれないが、幼子とはそういうものなのである。乳幼児期の子どもには、まずはたっぷりと母性愛を注ぐことが肝心なのである。無条件の愛である母性愛を注ぎ続けて、『あるがままにまるごと愛する』ことが必要だ。あまりにも小さい頃(3歳未満)に、時に親から厳しくされて、ある時は突き放されて、自分は嫌われているんじゃないかと不安感を持つと、自立できなくなる。

 子どもは、『親にどんなに甘えてもいいんだ、自分はどんなことがあっても守られているんだ、いかなることがあっても自分は見離されることがないんだ』という安心感を持つことが必要なのである。その為には、いかなる時もどんなことが起きようとも、親は我が子を見捨てることはないのだと、常に言い続けることが必要だし、安心させる行動が求められるのだ。だからこそ、乳幼児期まではどんなに過保護でもいいし、甘えさせていいのである。中途半端な過保護や依存は逆効果になる。一貫して、依存させていいのだ。

 子どもを十分に甘えさせ、依存させ続けて3歳に到達すると、子どもは不安感や恐怖感がなくなる。子どもに絶対的な自己肯定感が確立されるのである。そうすると、ひとりでに自立心が芽生える。このように絶対的な自己肯定感が確立されれば、どんなに厳しく辛い境遇も受け入れ乗り越えられるし、困難を極めるチャレンジにも挑める。あるがままにまるごと愛され続けてから、条件付きの愛である父性愛(しつけ)をされるなら、自立できる。自我を乗り越えて自己を統合できる。真の自立が実現するだけでなく、自己を確立できるのだ。

 三歳頃までに、あるがままにまるごと愛され続けると、オキシトシン・ホルモンが十分に分泌される。オキシトシン・ホルモンは、幸福ホルモンとか愛情ホルモン、または安心ホルモンとも呼ばれる、生きる上で大切なホルモンである。母性愛が注がれず、このホルモンが不足すると、いつも不安で恐怖感を持ち続けるし、常に愛情に飢えているので、強烈な生きづらさを抱えることになる。HSP(ハイリーセンシティブパーソン)と呼ばれる、神経学的過敏と心理社会学的過敏になってしまう。そして、深刻な愛着障害を抱えることになる。

 愛着障害を抱えると、精神的な自立が出来ないばかりか、不安や恐怖感がいつも心を支配する。睡眠障害を抱えることも多いし、メンタル疾患にもなりやすい。深刻な摂食障害を起こしたり、パニック障害で苦しんだり、PTSDで長い期間に渡り悩んだりする。それも、三歳頃までに自立させたいと、甘えさせずに依存させずに、過介入や過干渉を繰り返したせいである。幼児期にたっぷりと依存させることは必要なのである。小さい頃には我が子を過保護と思われるほど愛し続けることが必要だ。そうすれば、成長すると共にしっかりと自立できるし、自己組織化もするし、幸福な人生を送れるのである。

15歳少女は何故刺傷事件を起こしたのか

 東京渋谷で15歳少女が見知らぬ親子を刃物で刺したという事件には、驚いた方も多かったと思われる。逮捕者が15歳というまだ幼い中学生であり、しかも少女だったという点で、今までにない衝撃を世間に与えたのではないだろうか。ましてや、彼女が本当は自分のお母さんと弟を殺したかったものの、その勇気がなくて、トレーニングとして他人を刺してしまったという供述をしているのは驚きである。どこの中学校かというのは、本人が特定されてしまう危険から伏せられているが、不登校だったとも伝えられている。

 このような少年事件が起きると、マスコミは内情を知りたがるし、その本当の動機を暴きたくなる。不思議なもので、マスコミの記者とは言え、自分とその子どもとは違った人物だと思いたいという気持ちなのか、普通の人とはいかに違った特別な子どもだったと決めつける傾向にある。だから、インタビューしていてもいかに変わった人物だったかということを印象付けたい質問をしたがる。答える側でも、同じように普通の子どもとは違っていたとのレッテルを張りたがるのである。それ故に、実像とはまったく違う人格の人間に創り上げられるのだ。

 マスコミだけが悪い訳ではないが、凶悪事件を起こす少年少女は特別な存在だったとすることで、政府関係者も、そして学校関係者も自分たちに責任はなかったのだと思いたがるのかも知れない。勿論、それは不登校やひきこもりの子どもたちにも、同じような分析をしたがる傾向にある。しかし、同じ人間であるし、その本質はそんなに変わらないのである。いろんな凶悪事件の犯人をプロファイリングすると、一般人とそんなに違っていなくて、ただ育てられ方や育児環境が少し違っていただけだということである。

 つまり、凶悪事件を起こすような犯人と普通の人間とは、共通する部分は多くあるが、少しだけ違っているだけなのだということを認識すべきであろう。だからこそ、育てられ方や親の関わり方が大切であり、ほんのちょっとした愛情の掛け違いによって、子どもの人生は大きく変わってしまうのである。おそらく、今回の渋谷親子刺傷事件を起こした15歳の女の子も、ごく普通のおとなしい女子生徒であり、こんなだいそれた大事件を起こすと誰が想像したであろう。家庭教育や学校教育が根本的に間違っているから、今回の事件は起きたのだ。

 まだまだ15歳少女のプロフィールは明らかになっていないが、警察関係者がマスコミに少しずつ供述内容を伝え始めているので、その証言に基づいて考察してみよう。まずは、少女が母親と弟を殺したかったと言っている点から考えると、家族を憎んでいたということが解る。また、刺してしまった人が母親に似ていたという供述からも、余程の恨みが母親に対してあったのだろう。弟も殺したかったというのは、母親は弟だけを可愛がったのかもしれないし、弟と仲が悪かったのかもしれない。家族関係が最悪だったと思われる。

 また、凶悪犯罪を起こせば死刑になるだろうと言っているらしく、死刑にしてほしかったのでこの事件を起こしたとも供述しているとのこと。これらの供述から言えるのは、親との愛着に相当な問題があったというのは間違いない。親との愛着がしっかりと形成されていれば、親が安全基地となって子どもは安心して親に頼れる。いかなる時と場合でも、親が守ってくれるという信頼と安心があれば、けっして不登校にはならない。何故、殺したいくらいに親を憎んでいたかというと、親がまるごとあるがままに愛してくれなかったからだ。

 愛と憎しみというのは、裏表の関係にある。愛してほしいのに、愛されないと、その愛は憎しみに変化する。愛されたいのに愛されていないという思いが強ければ強いほど、憎しみは強大になる。叶えられない愛をずっと求め続けていたのであろう。その思いを親が気付いてくれなかったのではなかろうか。もしかすると、親は15歳の娘に、たくさん愛情を注いでいたのかもしれない。しかし、その愛は母性愛のような無条件の愛ではなく、過干渉や過介入の父性愛のようなものだったかもしれない。その愛の掛け違いによって、深刻な愛着障害を起こしてしまったのであろう。やったことは許せないが、育った環境が実に気の毒だったと思われる。

※15歳の少女がしたことは許せませんし、その罪を粛々と償わなければなりませんが、この女子生徒にすべての責任がある訳ではないと思われます。しかし、その親にすべての責任がある訳でもないのです。彼女の親を責めないでほしいのです。何故かというと、彼女の親も、その親から過干渉と過介入の育児をされて育ったから、同じように育ててしまったからです。そして、その親も同じように育てられたと推測されます。愛着障害は、世代間連鎖するのです。だからこそ、どこかの世代でその間違いに気付いて、愛着障害の連鎖を断ち切ってほしいのです。

LGBTが増えた原因

 LGBTの正しい認識がされてきて、偏見がなくなりつつあり、社会に適応しやすくなってきたのは喜ばしいことである。とは言いながら、LGBTが増えることで社会の生産性が低下してしまうと、本音では受け入れることが出来ない人たちが存在する。特に、政権与党の中でも特に保守的なグループでは、LGBTを社会が受け入れてしまうと、社会秩序が壊れてしまうと本気で思っているようだ。だから、時々本音での発言を思わずしてしまうのかもしれない。LGBTは生産性がないなどと言ってしまうのであろう。

 LGBTの方々の生きづらさや苦しみを思うと、そんな人権を否定するような発言をするべきではない。苦しんでいる人たちの気持ちに共感できないというのは、政治家として失格であろう。社会的弱者や障がい者が生きやすい社会にするのが政治家の務めである筈だ。このような保守的な政治家は、男女の性差に関するジェンダーにも、こだわるケースが多い。自分たちの主張に迎合する科学者を招いて研修会を開催して、LGBTの原因を追究して、イレギュラーとしての存在だと主張したがる。批判的な分析は避けてほしいものだ。

 けっしてLGBTを否定したり批判したりするつもりはないが、LGBTが起きる原因についての考察をすることは必要だと思う。原因を科学的に分析した論文を発表すると、盲目的にバッシングする人たちがいる。確かに、LGBTをあまりにも病的なもの、社会の歪みだとして扱うのは良くないと思う。あくまでも科学的に原因を洞察することは、彼らが自分のことを正しく理解する為にも有効であろう。ただし、彼らが不幸だという前提とした科学的分析は避けねばならない。彼らが抱く生きづらさを少しでも和らげる手助けにしたい。

 LGBTになってしまう原因は、遺伝子の異常によるものだというのが定説である。確かに、DNAが何らかの影響を与えてしまい、LGBTになってしまうことは考えられる。だとしても、すべての原因が遺伝子異常だというのは言い過ぎのような気がする。ただひとつ言えるのは、LGBTの方々は強烈な生きづらさを抱えて生きてきたということだ。勿論、社会が理解してくれないし受け入れてくれないから当然であるが、それだけが生きづらさの原因ではなさそうだ。小さい頃から自分の人生を生きてないという実感があったと思われる。

 そして、LGBTの方たちの多くは自己肯定感が低いという特徴を有していると考えられる。さらに、何をするにしても不安や恐怖感を覚えることが多くて、神経学的過敏の症状を持っているような気がする。特定の音や匂いなどに拒否反応を起こしやすい。さらには、心理社会的過敏も加わり、メンタルを病んでしまい不登校やひきこもりにもなりやすい。そうなってしまうのは、根底に愛着障害を抱えているからではないかとみられる。虐待やネグレクトを受けてそうなっただけでなく、過介入や過干渉を受けて愛着障害になった例もあろう。

 LGBTの方たちのすべてに、愛着障害が根底にあるとは言えないが、乳幼児期の子育てに問題があったのではないかと推測している医療の専門家が多い。LGBTの方たちとその親との関係性が、あまり良くないケースが多いような気がする。親が我が子をあるがままに、まるごと愛するような態度で接して育てていれば、子どもの自己肯定感が育つ筈である。自己肯定感があまり育っていないというのは、やはり愛着に問題があると考えられる。日本の子育てにおいて、良好な愛着が形成されていない為、LGBTが増えている気がする。

 日本の家庭教育において、愛着障害を起こしてしまう子育てがこれからも続くとすれば、LGBTが益々増えてくるに違いない。ましてや、愛着障害を強化してしまう日本の学校教育であるから、LGBTは増え続けるであろうし、不登校やひきこもりも益々増え続けることだろう。日本の家庭教育にしても学校教育にしても、自己否定感を高めてしまう教育をしている。その誤った教育システムが愛着障害を生み出し強化させている。そのことによりLGBTを増やしているのであるから、日本の教育を正しいあり方に正さないといけない。

代理ミュンヒハウゼン症候群の原因

 代理ミュンヒハウゼン症候群という病気が、社会的にも認知されるようになってきた。小さな子どもが犠牲になってしまうことも多いので、センセーショナルに報道されることもあり、広く知られるようになった。とは言いながら、まだ知らない人も多く、子どもを診断した医師が代理ミュンヒハウゼン症候群だと診断できずに、尊い命が失われてしまったケースもある。担任教師、または行政や福祉の支援者が早く気付いてくれたなら、助かった子どもがいたのにという例もある。この病気に対して、適切な対応と支援が求められている。

 代理ミュンヒハウゼン症候群について、簡単に紹介しておきたい。ミュンヒハウゼン症候群という精神疾患があり、関心や同情を惹くために自分で病気を装ったり、ケガを負ったりする疾病である。酷くなると、身体に悪いものを敢えて摂取したり毒を飲んだりする。ミュンヒハウゼン症候群は自分を病気にしたりわざとケガを負ったりするが、代理ミュンヒハウゼン症候群は、自分以外の誰かを犠牲にする。大抵のケースは、母親が我が子を病気にさせたりケガを負わせたりする。重症化させ過ぎてしまい、我が子の命を奪う例もみられる。

 ミュンヒハウゼン症候群にしても、代理ミュンヒハウゼン症候群であっても、周りの人々の関心や同情を得たいというのは、心理学的に考察すると、自己肯定感が非常に低いということが考えられる。そして、愛情不足も深刻なレベルだと言える。満たされない思いを抱えているのであろう。そして、強烈な生きづらさを抱えているのは間違いない。孤独感が強くて、見離されることに対する不安感、見捨てられるのではという恐怖が強いのではなかろうか。だから常に周りから注目されたいし、愛されたいと思うのであろう。

 代理ミュンヒハウゼン症候群を抱えている人は、強い不安感や恐怖感を抱えていることが多い。何故かというと、乳幼児期に無条件の愛である母性愛を充分に与えられなかったからだと思われる。したがって、代理ミュンヒハウゼン症候群の人は、『愛着障害』だと言える。そのうち特に重症の方は、小さい頃に親から虐待やネグレクトを受けたり見捨てられたりした体験をしていることが多い。故に、強い愛着障害を抱えてしまったのであろう。愛着障害だからこそ、愛に飢えていて孤独感にさいなまれているのである。

 代理ミュンヒハウゼン症候群は、治療が困難だと言われている。投薬治療、カウンセリングやセラピーを受けても、症状が改善しにくい。児童福祉施設職員が、代理ミュンヒハウゼン症候群の保護者に対して、様々な支援や指導をしたとしても改善する見込みは殆どない。何故なら、深刻な愛着障害を抱えている人は、その愛着障害が癒えることが期待できないからである。それだけ深刻な愛着障害は、治りにくいものなのである。愛着障害が根底にあるから、代理ミュンヒハウゼン症候群が治ることが期待できないのである。

 とは言いながら、難治性の代理ミュンヒハウゼン症候群が絶対に治らないのかと言うと、そうではない。治りにくいのは、根底に愛着障害があるということを当人と治療者が共通の認識を持っていないからである。疾病を抱えた当人が、病識とその原因が愛着障害にあるんだということを深く認識しなければならない。そして、この病気に陥ってしまった責任は、自分にはまったくないのだということを認識させることから始まる。当人に対して代理ミュンヒハウゼン症候群であると告知しても、なかなか受け入れてもらえないかもしれない。

 治療者と要支援者の強い信頼関係が必要だと思われる。そして、根気強く要支援者に対して、適切な愛着アプローチを実施することが肝要である。乳幼児期に受けた不適切な育てられ方により負ってしまった愛着障害は、粘り強く愛情を込めて愛着アプローチをしなければ、寛解には向かわない。要支援者は見離されるのではないかという疑心暗鬼から、これでもかという『試し行動』を何度も試みる。それでも支援者はけっして揺るがない愛を注がなければならない。そうすれば、時間は掛かるけれど愛着障害は癒され、代理ミュンヒハウゼン症候群の症状も和らぐことだろう。