広場恐怖症の原因と寛解の方法

 広場恐怖症と呼ばれる精神疾患が注目されている。女子プロゴルファーである菅沼菜々さんがツアーで初優勝して、自分が公共交通機関を利用できない広場恐怖症であることを優勝コメントで発したことでニュースになったからであろう。同じ広場恐怖症で苦しんでいる人々を勇気付けたいと思っているという。広場恐怖症とは、パニック障害のひとつとして捉えられることが多い。広場だけでなく、多くの人々が集まる場所やシチュエーションが苦手で、バス、電車、飛行機、船、エレベーターにも乗れなくなる人もいる。

 元々は普通に交通機関に乗れていたのに、ある時に特定の場所でパニック発作が起きてしまい、また同じ発作が起きるのではないかという恐怖が心を支配するらしい。初優勝した菅沼菜々さんは、公共交通機関に乗れないので、全国各地に父親が運転する車で転戦しているという。したがって、飛行機や船でしか行けないような沖縄や北海道でのツアーには参加できない。この広場恐怖症は、一旦発症してしまうと日時生活に支障を来してしまうし、通勤できないので会社勤めも出来なくなるケースが多い。

 この広場恐怖症が発症する原因は、遺伝的要因が大きいと言われていて、養育環境やストレスによって強化されてしまい発症するのではないかと推測されている。自律神経が何らかのショックによって暴走状態に陥ってしまうのではないかと見る医学研究者が多い。元々強烈な不安を感じやすい気質があり、衝撃的な事件・事故で副交感神経が働かなくなり、交感神経が暴走してしまい、それが固定化しているのではないかと推測されている。今までの医学的常識からすると、こんな診断をしてしまうだろうが、どうも納得できない。

 広場恐怖症が一旦発症してしまうと、予後は良くない。SSRIという抗うつ剤を投与したり、暴露療法や認知行動療法をしたりして、治療をするが効果が出にくい。何年にも渡り治療を受けても、効果が出にくいので社会復帰が遅れてしまうことが多い。それだけこの広場恐怖症という精神疾患が、難治性の疾病だと言えるが、原因や発症システムを見誤っているせいではないだろうか。自律神経のアンバランスや暴走だという見立ては、間違っていないと思われるが、交感神経の暴走というのは少し違うように感じている。

 何故かと言うと、副交感神経が抑えられて交感神経が暴走状態になったと仮定したとして、その暴走が長期化してしまうというのは考えにくい。通常交感神経が優位になってしまい、ずっと暴走のような状態が続いたとしても、交感ホルモンがずっと放出され続けることは考えにくい。なによりも、広場恐怖症は心と身体の遮断やブロックを起こすのである。交感神経とは、真逆の働きをするのである。とすれば、副交感神経である迷走神経のうち、背側迷走神経が暴走してしまい、シャットダウン化が起きたと考えるのが妥当だ。

 広場恐怖症を発症する人は、元々不安や恐怖を感じやすい。ということは、不安神経症的な気質を持ち合わせている。そして、HSPと呼ばれる神経学的過敏と心理社会学的過敏の気質を持つことが多い。さらに、何事にも完璧を求める傾向があるし、人の目を気にし過ぎる傾向があり、誰に聞いても『良い人』だという答えが返ってくるほど、優等生であることが多い。こういう気質こそが、広場恐怖症を発症させてしまう下地となっていると言えよう。そこに過大なストレスがあり、逃避や戦闘も出来ない状況で、想像を絶するような不安・恐怖を感じてしまうと、背側迷走神経が暴走し発症する。

 背側迷走神経が暴走した状況になりシャットダウン化が起きると、身体と心が動かなくなり、まったく行動できなくなってしまうのである。こうなってしまうと、また同じような事が起きてしまうのではないかと不安になり、同じシチュエーションに身を置くことが不可能になる。この背側迷走神経のシャットダウン化を解くためには、カウンセリングや適切なセラピーが有効である。または認知行動療法やオープンダイアローグ療法も効果がある。一番は、『安全基地』となる存在である。安全基地となる存在が、けっして否定せず傾聴と共感を繰り返し、ボディセラピーを実施して身体の緊張を解きほぐし、音楽療法などを併用することで寛解を迎えることが出来よう。時間がかかるが、治るのは不可能ではない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA