Awe体験が人間の正しい生き方を導く

 Awe体験(オウたいけん)とは、大自然や大宇宙の悠久さや広大さを体感することで、自分自身の存在意義や自らの小ささを感じる体験のこと。このAwe体験は、その人間が生きる上で、とても大切な智慧を授けてくれると言われている。アメリカのジョン・テンプルトン財団の研究によれば、Awe体験をしている人は、見破る力、騙されない思考力を持つようになるという。Awe体験をしていない人は、情熱のある人の話や面白い話には弱く、説得されやすくなる。ものすごく情熱的に話されると、詐欺師でも信じてしまう。

 それに対してAwe体験をしている人は、真実を見破る力があるらしい。インターネット上の嘘の情報やフェイクニュースにも騙されることもなく、陰謀論に嵌まってしまうこともないという。また、カルト宗教に入信してしまうこともないし、怪しい自己啓発セミナーに騙されることもなくなる。さらには、ナダ・トロント大学のステラー博士らの研究では、Awe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかっている。人間としてとても大事な、社会貢献性を持つということである。

 アメリカ・アリゾナ州立大学のシオタ博士は、Awe体験の効果として①マインドフルネスと同じように、何ごともありのままに受け取ることができる②心と身体をリラックスさせる③好奇心を引き出す④人と心のつながりを作る⑤利他の心を引き出す⑥心身を健康にする⑦創造性を引き出す⑧希望に満ちた状態になる⑨幸福感が高まる⑩嫉妬心など、ネガティブな感情が少なくなる。が起きるとしている。Awe体験によって、単に心が洗われるだとか、気分転換になるだけでなく、具体的に心身ともに良い影響があるとしている。

 中国・広州大学のリー博士らの研究は、Awe体験が「社会性行動」にどのような影響があるかを調べている。Awe体験で未来の時間の感覚を持てるようになり、社会性のある行動が取れるようになるという研究結果を出している。未来の時間感覚を持てるという意味は、自分が存在していない未来さえも、自分が生きている「いま」と同じような感覚で捉えるということである。つまり、自分が生きていない未来に対しても責任を負うということだ。100年後や500年後の未来に思いを馳せ、SDGsを大切にする生き方をするのである。

 カナダ・トロント大学ステラー博士らの研究ではAwe体験を頻繁にしている人は液性免疫を制御するサイトカインの一種であるインターロイキン6の濃度が低く保たれているという結果が出ている。インターロイキン6が長い期間に渡り過剰に産生されると、関節リウマチ等の自己免疫疾患を発症したり、慢性炎症性疾患を起こしたりする。また、癌細胞の増殖や癌転移の促進をしてしまうことも判明している。Awe体験を頻繁にしていると、病気にならないだけでなく、健康な身体を保って長生き出来るということである。

 日本では、古来より僧侶や修験者が山岳修行をしてきた。まさしくAwe体験によって高い人間性や社会性を獲得して、魂の浄化や進化が実現できると経験的に認識していたのであろう。それでは、登山をする人がすべて高い人間性を持ち社会貢献性を持ちうるのかというと、そうではない。単なる自然体験を沢山したからと言って、それがAwe体験になる訳ではない。大自然の雄大さと自分の小ささを実感もせず、傲慢な態度姿勢で、自然を愛でることもせず、山自慢するような登山をする人にとっては、Awe体験にはなり得ない。

 いくら自然体験を積んだとしても、雄大で偉大な自然や宇宙の営みを体感・実感して、それと比較していかにちっぽけな存在としての自分を自覚しなければ、Awe体験にはならない。さらには、広大な自然や宇宙の一部である自分を認識して、自然や宇宙と一体化した感覚を持ち、生かされている自分を自覚することが、Awe体験として必要なのである。その為には、自然の中に身を置いた際に、センスオブワンダー(驚きの感性)持つことが肝要である。そして、このセンスオブワンダーは、小さい頃の豊かな自然体験を通して、傍らの信頼する大人から導かれることが必要である。センスオブワンダーを持つ人間だけが、Awe体験を認識することが許されるのかもしれない。

 

※イスキアの郷しらかわでは、「Awe体験ツアー」をガイドしています。自然の雄大さや偉大さを体感するために、滝めぐりツアーやトレッキングをしながら、センスオブワンダーを持つために必要なことをレクチャーします。参加者の年齢・体力に合わせた自然体験ツアーを企画提案しますので、問い合わせフォームからお申込みください。

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