身体を動かさないと死へと向かう

 人間の寿命は『骨』で決まると言うと、びっくりする人が多いかもしれない。そして、身体を動かすかどうかで、長生きするかどうかが決まると聞いたら、そんなことがあるのかと驚く人も多いであろう。人間の身体が老化を迎えるかどうかは骨が決めていて、身体を動かすと骨が作られ、動かさないと骨は滅んで行く。ということは、身体をよく動かす人は老化しないで長生きするし、身体を動かさない人は早く老化してしまい、滅んでしまうということになる。それは身体だけではなく、脳の機能も滅ぶというから恐ろしい。

 人間の老化を促進させてしまうシステムは、骨に関連するホルモン(神経伝達物質)によって働いているという。そのホルモンとは、スクレロスチン、オステオカルシン、オステオポンチンという三つの神経伝達物質である。スクレロスチンは骨芽細胞を減らしてしまう。スクレロスチンが多く分泌されると破骨細胞を増やして骨芽細胞を減らし、逆に少ないと骨芽細胞が増加するのだ。そして、その骨芽細胞から人間の老化させるかどうかに関係するオステオカルシンとオステオポンチンというホルモンが作られているのである。

 骨芽細胞から産出されたオステオカルシンが、血液によって脳の海馬まで運ばれて、海馬を刺激する。そうすると海馬の働きが活性化するだけでなく、海馬の細胞も増加して大きくなる。反対に骨芽細胞が少なくてオステオカルシンが分泌されないと、海馬の働きは衰え、海馬の体積も縮小するという。極端に海馬が委縮すると、記憶力が極端に低下してしまい、認知症にもなりやすい。つまり、骨芽細胞の多い少ないが、脳の老化を進めるかどうかを決めているというのである。オステオカルシンが脳の機能を決めているのだ。

 それだけではない、オステオカルシンが筋肉組織に届くと、筋肉組織の細胞を増加させて、筋力アップにも寄与するらしい。さらに驚くのは、オステオカルシンが精巣に届くと、なんとテストステロンというホルモンを活性化させ、精子の生産力を向上させるというのである。また、骨細胞から分泌されるオステオポンチンというホルモンが、人体の各組織に送られて、免疫力を高めるのに役立っているというのだ。オステオポンチンが不足すると免疫力が低下して、ガンや生活習慣病、または重篤な感染症を引き起こすのである。

 どうして骨が人体の老化を決めているのかというと、骨の状況によって寿命を延ばすかどうかを決定するのではないかと推測される。どういうことかというと、骨の密度が低下してスカスカの状況になってくると、もう無理して長生きさせる必要がないと記憶力や免疫力を下げるものと思われる。さらには、筋力も低下させるし精力も必要ないと判断するとみられる。骨の状態を人体ネットワークが分析して、老化をさせて死に至らせる作用が働くのではないだろうか。ある意味、老人にとっては残酷なシステムとも言える。

 その際、オステオカルシンやオステオポンチンという若返りホルモンを分泌させる骨芽細胞を増やすかどうかをコントロールするのが、スクレロスチンというホルモンだ。このスクレロスチンが骨芽細胞を増やすかどうかを決めているのだ。運動をするとスクレロスチンが減少し、身体を動かさないとスクレロスチンが増える。スクレロスチンが多いと、骨をスカスカにさせて身を滅ぼすのである。その運動も、骨に対してショックを与えるような運動こそ効果が高いということが解った。つまり、ただ歩くだけでは駄目で、走る、ジャンプする等、骨に対して負荷をかけることで、スクレロスチンが少なくさせることが判明したのである。

 骨に強い衝撃を与える運動が老化と死を防止して、健康で長生きさせるのである。ということは、骨にあまりショックを与えない運動は、老化を止められないということだ。例えば、スイミングやサイクリングは筋肉に負荷をかけるが、骨にはあまりショックを与えないから、老化は進むということである。それじゃ、どんな運動がいいかというと、バスケット、バレー、テニス、野球、ジョギング等が良い。しかし、高齢者には過酷である。高齢者でも出来る老化を防ぐスポーツは何かというと、登山、ゴルフは骨に衝撃を与えるのでピッタリだ。特に登山は、下山する時にドンドンと踵にショックを与えるから、骨芽細胞を増やす。新型コロナも防ぐ。健康で長生きしたいなら、登山をすることをお勧めする。

PMDDやPMSを癒すには

 月経がある女性の約7割から8割にPMS(月経前症候群)の症状があるという。また、PMSの症状により仕事や家事に何らかの影響を及ぼしていると答えた女性は、5割にも上ることが解った。そんなにも深刻な症状を起こすPMSであるが、PMSという病気があることを知らない女性が多いらしい。そして、PMSという病気があるということを知っている男性は、専門医など医療職を除外すると、殆どいないと言う。結婚した女性のうち、PMSの症状が強い人ほど、夫婦喧嘩をしやすいというから深刻である。

 PMSの症状があるのは、月経がある女性の約8割にもなるというのは衝撃的であるが、そのうちの何割かの女性は、より重症のPMDD(月経前不快気分障害)で苦しんでいるという。イライラ、気分の落ち込み、不安、怒りっぽくなる等の深刻な症状が起きるのがPMDDである。これらの精神的な症状によって、仕事が手につかなくなったり、子育てや家事が出なくなったりする。さらには、人間関係を損なったり、仕事を辞めざるを得なくなったりもする。なにしろ、あまりにも不安感が強いからひきこもりたくなってしまうのである。

 こんなにも深刻な影響を与えるPMSとPMDDを何とかしないと、人生が破綻しかねなくなってしまう。それぐらいPMDDというのは、当人にとって深刻なのだ。医療機関で受診して、PMDDを治療しようと思ったとしても、快癒することはあまり期待できない。なにしろ、PMDDという疾病を理解しているドクターが少ないし、ましてやPMSとPMDDの専門医がごく僅かしかいないのである。せめてうつ症状に対する抗うつ剤の投与かピル剤を処方するしか方法がない。そもそも、本当の原因さえ知らないのである。

 PMSやPMDDは、概ね月経の14日前から症状が起き始めて、生理開始後3日目くらいまで続くことが多い。ということは、半月くらい症状が続くと言うことである。つまり、月経が始まって閉経するまでの約40年以上、人生の約半分という長い期間を憂鬱な気分で過ごすということになる。そういう辛さを知っている男性は皆無であろう。最新の医学研究によると、単なるホルモンによる心身の異常ではなくて、脳や神経系統の異常があるということも解ってきている。そして、どうやら迷走神経も関係しているらしいのである。

 PMDDの症状であるうつ気分や希死念慮、そして強烈な不安と自己否定感ということを考慮すると、女性ホルモンの影響によるものだけとは考えにくい。脳の機能異常や神経系統の異常もあるということは、根底に愛着障害があって、その影響で背側迷走神経が活性化してしまい、自律神経の破綻が起きているとしか思えない。つまり、背側迷走神経が暴走を起こしてしまい、シャットダウン化が起きていると見るべきであろう。したがって、治療が難しいし、完治することが期待できないと思われる。

 という発症プロセスだということが解れば、PMSやPMDDの症状を癒すことも可能だということになる。愛着障害を和らげて、背側迷走神経の活性化であるシャットダウンを解いてあげれば、PMSやPMDDの症状も和らぐであろう。そして、月経前の不快気分もなくなるに違いないし、身体症状も和らいで行くに違いない。そうすれば、ライフスタイルも大きく変化するだろうし、今まではできなかったことにもチャレンジできるだろう。今までの白黒フィルムのような世界から、総天然色のような世界に飛び込む気分になるだろう。

 愛着障害は、優秀なカウンセラーやセラピストに適切な愛着アプローチを受けることが出来たなら、徐々に愛着障害を癒すことが可能だ。そして、背側迷走神経の活性化によるシャットダウンを停止させて、腹側迷走神経活性化させるには、適切なエクササイズが有効である。基本エクササイズとサラマンダーエクササイズを組み合わせて実施すると、自律神経の誤作動が正常になり、シャットダウンが解けてくる。さらには、緊張した筋肉に対する神経筋膜リリースも組み合わせると、もっと効果が高くなる。この三つを組み合わせて根気よく実施することで、PMSやPMDDが治るに違いない。

新型コロナ感染症の後遺症が癒えるには

 新型コロナ感染症の第5派は、どういう訳か解らないが収まりつつある。今後、第6派が起きるのではないかと予想されている。ワクチン接種が進んだお陰なのか、感染者が激減しているし、重症化する人が著しく少なくなっている。もしかすると、このまま新型コロナ感染症は収束するのではないかと、楽観的な見方をしている人も少なくない。その一方で、新型コロナ感染症の後遺症で苦しんでいる人が大勢いるという。なかなか治らなくて、長期間の休職、または退職をせざるを得ない人も少なくないと言われている。

 新型コロナ感染症は風邪のようなもので、そんなに恐れることはないと嘯く人は少なくない。また、インフルエンザよりも怖くないし死亡率も変わらないと主張する人も多いらしい。さらには、ワクチンを打つと逆に感染が収まらないし、変異株ウィルスがどんどん生まれてきて、より深刻になるから接種しないほうが良いと信じ込み、SNSで発信している人も少なくない。しかし、それは新型コロナ感染症の患者を受け入れている病院の実態を知らないからである。後遺症で苦しんでいる人の辛さを知らないから、無責任に言えるのである。

 新型コロナ感染症の入院患者を受け入れる病院で働いている医師や看護師は、その悲惨な症状を見ているからその恐ろしさを実感している。特に、重症患者を治療している看護師や医師は、どうやっても治癒することなく目の前で亡くなっている患者を見て、今までの感染症とはまったく違う恐ろしさを味わっている。だから、新型コロナ感染症が風邪と同じだとSNSで発信している人間の軽薄さと無責任さを許せないに違いない。ましてや、新型コロナ感染症の後遺症を治療している医師は、この感染症の恐ろしさを誰よりも知っている。

 新型コロナ感染症の後遺症を専門的に治療しているクリニックは、数多くないということもあるが、来年の4月まで予約が詰まっているという。後遺症で苦しむ患者さんがそれだけ多くいるという証しでもある。風邪でこんな深刻な後遺症を起こす人がいるであろうか。インフルエンザの後遺症で半年から1年も苦しむ人がいるとは思えない。深刻な後遺症により、仕事が出来る状況まで戻れない人も少なくない。息苦しさ、倦怠感、不定愁訴、頭痛、身体の痛み、無気力、不安感、凍り付き、ひきこもり等の後遺症で悩んでいる人が多い。

 新型コロナの感染症は、背側迷走神経の暴走によって起きるというブログ記事を以前書いている。後遺症は感染者すべてに起きる訳ではない。安全と絆である「安全基地」を持たない人、または愛着障害を抱えている人が、新型コロナ感染症に罹患した後に後遺症を起こしやすい。それは、不安感や恐怖感を持ちやすいことから、背側迷走神経が暴走しやすいのだと思われる。それでは、新型コロナ感染症の後遺症を、どうしたら治せるのであろう。抗不安薬を投与するとか、地道にリハビリをするしか方法がないのであろうか。

 新型コロナ感染症の後遺症に苦しんでいる人に朗報がある。背側迷走神経が活性化してしまい、自律神経が異常を起こしているケースに対して、有効な方法が見つかったのである。それも実に簡単な方法で、しかもセルフケアーなので繰り返し何度も出来るのだ。背側迷走神経の活性化は、一度だけでなく何度も繰り返すことも少なくない。一度良くなっても、ぶり返すことも多い。したがって、何時でも繰り返せるケアーが必要なのだ。そして、そのケアーを何度でも繰り返せるという安心感が、背側迷走神経の活性化を鎮めて、腹側迷走神経が活性化させてコロナの後遺症が良くなるに違いない。

 背側迷走神経の活性化を抑えて、社会的交流を実現する腹側迷走神経が働き、新型コロナ感染症の後遺症を克服するには、ソマティック(身体的)セラピーが有効である。この方法を開発したのは、スタンレー・ローゼンバーグというボディ・セラピストである。ポージェス博士が提唱したポリヴェーガル理論を活用したソマティツクセラピーを開発したのである。セルフケアーとしての基本的エクササイズとそれを発展させたサラマンダー・エクササイズを利用する方法である。さらに、神経筋膜リリース・テクニックも利用すると、もっと効果がある。詳しく知りたい方には「からだのためのポリヴェーガル理論」春秋社刊を読むことを勧めたい。

PTSDは心身のシャットダウン化

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)というメンタルの病気は、非常に治療が難しいし予後が良くないと言われている。その中でもとりわけ完全治癒が難しいのが、複雑性のPTSDであるというのが、精神科医の共通した見解であろう。眞子内親王殿下が、マスコミやネットからの度重なる批判的な言動を受けて、複雑性PTSDの症状になっておられるという宮内庁からの発表があった。戦争や大震災、大事故などの強烈な体験によって起こすのが単純性PTSDと定義されている。それよりも予後が悪いのが複雑性PTSDだと言われる。

 このPTSDというメンタル疾患は、心的外傷(トラウマ)によって起きるのであるが、どうしてこんな症状が出てしまうのかは、あまり解明されていない。特に、心が麻痺をしてしまったり解離症状を起こしたりするケースでは、どうしてそんな症状を呈してしまうのか不思議だと思われている。ましてや、複雑性PTSDのように何度も同じようなストレスを受け続けることで、どうして心の解離や遮断、または凍り付きが起きるのか、その機序が不明であることから、治療が困難なのだと思われる。精神科医泣かせの症状であろう。

 そして、PTSDによる症状は精神面だけでなく、身体症状も起きるから深刻である。例えば、聴覚や視覚、嗅覚、さらには味覚の異常も起きることもある。特定の強い光を見ると恐怖感が起きたり、地響きのような重低音を聞くと身体が硬直を起こしたりする。また、顔面神経麻痺や顎関節症を併発することもあるし、PMDDやPMSの症状が起きることもある。深刻な肩こりや片頭痛が起きることも少なくないし、線維筋痛症を発症することも多い。何故にそんな心身の症状が起きるのかというと、迷走神経の暴走によるものだからだ。

 自律神経は、交感神経と副交感神経の二つのバランスで成り立っていると考えられていた。ところが最新の医学理論であるポリヴェーガル理論が、自律神経の常識を変えたのである。副交感神経の殆どが迷走神経であるが、迷走神経には二種類あることが判明したのである。ひとつは、従来の副交感神経である休息や社会交流を生み出す腹側迷走神経と、もうひとつは闘争も出来ず逃走も不能な状態に追い込まれた時に働く背側迷走神経である。だから、闘争や逃走時に働く交感神経と、二つの迷走神経と、全部で三つの自律神経が存在するのだ。

 腹側迷走神経と背側迷走神経の働きは、同じ迷走神経でありながら、真逆の働きをする。腹側迷走神経は、休息、安定、安心、社会交流をサポートしてくれている。一方、背側迷走神経とは、逃げることも出来ず闘うことも適わない状況に追い込まれてしまった時に、スイッチが入ってしまう自律神経である。この背側迷走神経が働いてしまうと、心身のシャットダウン化が起きるのである。自分が意図していないのに、身体が勝手に反応するのだから厄介である。何故、そんな迷惑な働きをしてしまうのかというと、自分自身の心身を守る為に、やむを得ず心身のシャットダウン化が起きるのだ。

 どういうことなのかというと、闘争も逃走も出来ない状況に追い込まれた人間は、心身の破綻や倒壊を起こしたり、または自分の命を自分で絶ってしまったりしかねない。それを防ぐ為に、自己防衛反応として遮断や凍り付きを起こすのである。嫌な記憶を思い出したり考えたりしたくない為に、感情を塞いでしまうこともある。つまり、心も身体も完全に閉じてしまい、人形さんのように不動の状態になってしまうことも少なくない。不登校やひきこもりは、まさしく心身のシャットダウン化を起こしているから起きると言えよう。

 やっかいなことに、一旦背側迷走神経が活性化してしまうと、シャットダウン化からは容易に抜け出せなくなる。投薬治療を続けても、そしてどんなにカウンセリングやセラピーを受けたとしても、なかなか背側迷走神経の暴走は止めにくい。何故なら、メンタルだけの問題だけでなく、迷走神経は身体の変化をもたらしているので、ソマティツク(身体的)ケアーも必要だからだ。最新のポリヴェーガル理論の研究により、自分で出来る身体エクササイズと神経筋膜リリースを併用することで、背側迷走神経の活性化から腹側迷走神経の活性化に戻ることが可能になることが判明した。この方法を駆使すると、パニック障害や自己免疫疾患などの難病さえも、症状も軽くなると言われている。難病に苦しんでいる人には朗報だ。

何故いじめるのか(いじめの心理)

 学校でのいじめ事件はとても増えているという報告がある。何故かと言うと、今まで学校サイドではいじめだと認識していなかった事案でも、文科省からのいじめに対する対応基準が変更になったこともあり、いじめだと認識する件数が増えたからである。それでも、都道府県によっていじめに対する対応のばらつきがあり、いまだにいじめだとカウントしたがらない都道府県があるのも事実である。一方では、実際にいじめが増えていると主張する教育の専門家や支援者がいる。いじめが実際に増えているのも事実であろう。

 いじめが減少しないのは、学校の対応が稚拙であり後手に回っているからに他ならない。いじめに対する学校側の対応で大切なのは、まずは被害者救済だというのは言うまでもない。だとしても、加害者に対する指導も大事だ。加害者が心から反省して二度といじめをしないと誓わなければいじめは少なくならないし、完全に無くすことは出来ない。日本の教育現場でのいじめ対応は、被害者へのケアーが中心で、加害者対応は後回しである。西欧においては、加害者への対応にも力を注いでいる。何故かというと、いじめをする子どもの心も荒んでいるし、救いが必要だと認識しているからである。

 いじめをする子どもの精神が病んでいるという観点に立つ教育者は、日本では極めて少ない。いじめをする子は精神的に強い子だと思われているが、実はいじめをする子ほどある意味では精神的にひ弱なのである。いじめをする子どもは、自己否定感が強いということを知っている人は殆どいない。自己肯定感が高い子どもは、いじめなんて絶対にしないのである。自分の中に強烈な自己否定感が存在している。だから、いじめをしてしまうのである。そして、いじめをする子どもの心は、不安定であり酷く傷ついているのである。

 いじめをする子どもは、意識していじめをしたいと思っている訳ではない。自分でも何故いじめをするのか解っていない。どういう訳か、いじめの対象者に出会ってしまうと、いじめられないでいられないのである。何故、いじめをしてしまうのかというと、いじめの対象者に、自分の中に存在するマイナスの自己と同じものを発見するからである。勿論、自分自身もそのことに気付いていない。自分の中に存在するマイナスの自己は、自分にはないことにしてしまっているし、無意識でそのマイナスの自己をひたすら隠しているのである。

 そのマイナスの自己というのは、自分の弱さや醜さであり、恥ずかしくて人様には絶対に見せられないから隠し通している性格や人格である。ところが、その弱さや醜さをいじめの対象者の中に発見してしまうと、自分自身を見ているようで許せなくなってしまうのである。そのために、これでもかこれでもかといじめの対象者を攻撃するのである。いじめの対象者は、ある意味不器用でマイナスの自己を隠すのが下手なのかもしれない。そんないじめの対象者が許せなくなってしまい、無意識でいじめてしまうのだと思われる。

 いじめをする子どもというのは、人一倍自己否定感が強い。自分の弱さや醜さを受け容れることが出来ない。だからこそ、自分の弱さや醜さを隠し通しているし、ないことにしてしまっているのである。おそらく、親からダブルバインドのコミュニケーションによって育てられて、抵抗型/両価型の愛着障害を抱えているのであろう。つまり、親からの愛情不足によって、満たされない思いをしているし、強烈な生きづらさを抱えていると思われる。さらに、いじめをする子どもは強烈な不安や恐怖を抱えていて、それを隠しているのである。

 このように生きづらさや不安と恐怖を心の奥底に抱えた抵抗型/両価型の愛着障害の子どもは、同じ心の痛みを抱えた子どもたちと徒党を組んで、いじめ行動をするのであろう。そして、いじめを放任している教師もまた抵抗型/両価型の愛着障害であり、無意識でいじめをする子どもに共感してしまっているのである。いじめがなくならず、逆に増えているのは、学校にはこういう深刻な図式が隠れているからであろう。いじめのような問題行動を起こすのは、もっと愛してほしい、助けてほしいというSOSのサインでもあるのだ。いじめをする子どもと放任する教師を支援することが、いじめをなくすのに一番効果があるのではないだろうか。

誉めて育てると言うけれど

 子どもは誉めて育てろと良く言われる。また、社員も誉めて伸ばせというのは社員教育の極意として広く伝わっている。確かに適確に誉めれば、社員と子どもは伸びる。しかし、誉めることが出来ない親や上司がいるし、誉め方が実に稚拙な親や上司がいる。誉めればいいというものではない。誉め方は難しいし、間違った誉め方をすることにより、成長させないばかりか、やる気を削いでしまうことも少なくない。ましてや、自分が誉められた経験がない人間は、誉めることが出来ないのが常である。誉められないのは当然だ。

 ある有名なビジネス雑誌で、誉めることに対するアンケートを実施したことがある。誉められる人というのは、自分でもよく誉める人だということが解ったのである。ということは、誉めることが出来ない人は、誰からも誉められないということになる。親子関係で言うのなら、自分が親に誉められなかった人は、我が子を誉めないということだ。ビジネスの場面でも、誉めない人は誉められる経験をしていないということになる。確かに、いつもガミガミと怒っている上司は、滅多に誉めることをしないし、誉め方も稚拙である。誉められてもちっとも嬉しくない。

 誉めることが出来ない人は、周りの人々を観察していない。よく観察していないと、上手く誉めることが出来ないからだ。自分のことしか考えていないし、周りの人々にあまり興味がないのかもしれない。誉める為には、コミュニケーション能力が高くなければならないし、自己肯定感を持たなければならない。自分のことを心から愛することができなければ、人を認めて正しく評価して誉めることが出来ないのである。自己否定感が強い人というのは、自分のことが嫌いなのだから、他人のことも認めることが出来ないのである。

 大人になって社会に出てから、仕事で評価されて認められていくら誉められても、自己肯定感が生まれることがない。三つ子の魂百までもというが、1歳から3歳までに自己肯定感が生まれるかどうかが決まるのだ。三歳頃までに、母親からありのままの自分をたっぷりと愛される経験をしないと、自己肯定感は生まれないと言われている。母親でなくても良いのだが、豊かな母性愛を注いでくれる存在が必要なのである。三歳までに、たっぷりと愛されて誉められ続けられれば、自己肯定感が生まれて他人を誉められるのである。

しかし、誉めればよいという訳ではない。誉める際に気を付けたいのは、けっして結果や成果だけを誉めてはならないと言うことだ。出来れば、行動や姿勢、結果に至るプロセスを誉めることが求められる。何故なら、結果や成果だけを誉めると、子どもや部下は楽をして結果を追求してしまうし、周りの人々との協力をせず、周りの人々を蹴落としてでも自分の成果を上げようとするからだ。努力をせずに、結果を求めてしまうような大人や職業人になってしまうリスクがある。努力をしたプロセスを誉めてあげたいのである。

 子育てにおいて、親は立派な子どもに育てたいと思ってしまうものである。そして、親が望むような子どもに育てようとしてしまうのである。そうなると、子どもを育てる際に、他の子どもと比較してしまうし、結果や成果を求めてしまう傾向になってしまう。他の子どもよりも優秀な成績を収めたことを誉めてしまうのだ。知らず知らずのうちに、親は子どもをコントロールしてしまうし、支配してしまうことになる。子どもは、親の期待に応えようと必死になり、親の目を気にして生きるようになる。親が気に入るようなことだけをしてしまうことになる。親の操り人形のような生き方をしてしまうのである。

 親の誉め方が間違うと、とんでもない子どもに育ってしまうことはよくある。アスペルガー症候群のように、特定の部分だけに興味を持ってしまうことになる。だからこそ、結果や成果だけを誉めることは避けなければならない。日頃の行動の中で、懸命に努力をし続けたり、挑戦を諦めなかったりする態度を誉めなければならない。また、誰かのために優しさを発揮したり思いやりの行動をしたりした時こそ誉めるべきなのだ。例えば、玄関に脱ぎ散らかした他の人の靴を、そっと揃えてあげるようなことをした時にこそ、誉めてあげたいものである。そうすれば、人の為世の為に貢献できる立派な人材に育つことであろう。

ひきこもりは迷走神経によって起きる

 ひきこもりになる原因は、学校や職場におけるいじめや不適切指導だと思っている人が殆どではなかろうか。それはまったくの間違いであり、確かにそれらはきっかけではあるが、本当の原因ではない。ひきこもりにならざるを得ない真の原因は、迷走神経にあるのだ。だから、一旦ひきこもりに追い込まれてしまうと容易に回復できないし、何度も挫折を繰り返してしまうのである。そして、ひきこもりは自分の努力だけでは解決できないし、例え手助けがあったとしても、ひきこもりから引き出すのは容易でないのである。

 迷走神経が本当の原因であると言われても、ピンとくる人は極めて少ないであろう。なにしろ、現代の医学理論においては、迷走神経の研究がまだまだ進んでいないからである。ましてや、最新の医学理論であるポリヴェーガル理論を知っている医師や研究者が少ないのだから当然である。正しくて斬新な医学理論であればある程、多くの臨床医は自分の自説を曲げずに、新しい医学理論を受け入れたがらないのだ。優秀で実績をあげている臨床医ほど、自分の経験や知識が正しいのだと思いがちなのである。

 ポリヴェーガル理論というのは、今までの自律神経理論を覆す極めて重要な医学理論である。免疫学分野において、新しく獲得した免疫システムが、重症感染症に罹患することによって、古い免疫システムに切り替わってしまうという不思議な現象が起きることは知られている。免疫学の大家である安保徹先生は、そのことを理解されていたが、その切り替わりが迷走神経によるものだということはご存じなかったようである。自律神経のうち、副交感神経の免疫システムには二つあるというのは認識されていたようだ。

 従来の自律神経システムは、交感神経と副交感神経の二つの自律神経がバランスを取って、人間の活動と休息を支えていたと思われていた。社会交流や免疫を支援する副交感神経と、闘争または逃走かの状況に陥った時に働く交感神経の二つだけだと認識していたのである。副交感神経のうち約8割は迷走神経から出来ている。実はその副交感神経は一つだけでなく、2つの迷走神経があるということを、米国のポージェス博士が発見して学会に発表した。それは1994年のことであったが、日本で氏の著作が出版されたのは2015年である。

 副交感神経を司る迷走神経には、背側迷走神経と腹側迷走神経がある。だから複数の迷走神経の理論ということで、ポリヴェーガル理論と呼ばれている。腹側迷走神経というのは、従来の平穏でストレスフリーの状態で、休息や社会交流を促進する迷走神経である。それがストレスにさらされ危険な状態が差し迫ると、脊髄交感神経が働き闘争するか逃走するかの選択をする。ところが、闘うことも適わず逃げることも出来ない極限状態に陥ると、背側迷走神経のスイッチが入り、遮断や失神を起こすのである。

 背側迷走神経が一旦働いてしまうと、遮断(シャットダウン)や不動化、または心身の閉塞状況に追い込まれてしまう。社会交流が出来なくなり閉じこもり、いわゆるひきこもりの状態になるのである。何故、そんなことになってしまうかというと、人間の防衛反応なのである。闘争も逃走も出来ないような極限状況に人間が追い込まれてしまうと、精神の解離や崩壊を起こすとか、または自殺を起こしかねない。そういう状況にならないように、自分自身を守るためにシャットダウンや失神、閉じこもりを起こすのである。

 何故、闘うことも出来なく逃げることも出来ないと判断してしまうのかというと、根底に愛着障害があるからだ。安全と絆を提供してくれる「安全基地」が存在しない為に愛着障害になってしまうと、HSPになり背側迷走神経のスイッチが入りやすくなるのである。背側迷走神経のスイッチが入りシャットダウンが起き、ひきこもりに追い込まれてしまうのである。言い換えると、自分自身の防衛反応として敢えてひきこもりをするのである。意識的にひきこもりになるのではなく、無意識的になってしまうのだ。ひきこもりを解決するには、背側迷走神経のスイッチを切って、腹側迷走神経に切り替えることが必要なのである。

怒りを自制しない人は我が身を滅ぼす

『憤りの心は燎原の火の如し』という格言がある。どういう意味かと言うと、怒りの心を持ち続けていると、火が燃え広がった原っぱにいる自分が焼き死ぬのと同じに、怒りの炎が自分自身をも焼き尽くすという意味である。燎原というのは、枯れた草の原っぱという意味であり、そこに一旦火が付くとすべてが燃え尽きるまで火を消せない。怒りの心というのは枯れた原っぱに火が付いたのと同じで、周りの人々だけでなく自分をも焼き尽くすという意味である。

 だから、憤り(怒り)はどんな理由があったとしても、持ってはならないし、怒りが起きたらすぐに消し去らなければならない。最近、アンガーマネジメントという言葉がもてはやされているが、まさしく怒りを収める心の働きが求められるのである。会社や組織の中には、ことあるごとに怒りを爆発させる上司がいる。感情的に怒りをぶちまけられる部下はたまったものではないが、怒りを爆発させている当人の心身もボロボロになってしまうことを認識している人は極めて少ない。怒りをぶつけ続けていると、やがて組織の中で信頼を失い孤独なってしまう。

 怒りをぶつけ続けていると心身共にボロボロになるというのは、次のような理由からである。怒りが高まってくると、アドレナリンとコルチゾールという副腎皮質ホルモンが放出される。このホルモンによって、一時的に一時的にストレスを解消させてくれる働きがもたされる。ところが、怒りを持ち続けていると、アドレナリンとコルチゾールは過剰に分泌される。そうなると、血圧や血糖値が上がり続けてしまうだけでなく高脂血症にもなり、生活習慣病になりやすくなる。また、脂肪を溜めやすく肥満にもなるし、心筋梗塞や脳梗塞になる危険性も高まる。

 身体の不調はそれだけでは終わらない。コルチゾールが分泌され続けると免疫力が下がるから、感染症を起こしやすい。コルチゾールは脳の偏桃体を刺激するから、偏桃体が肥大化する。偏桃体が肥大化すると、記憶力を発揮させる海馬が委縮する。怒りやすい人は、記憶障害を起こしやすいし、認知症になる危険性が高まる。また、コルチゾールは前頭前野脳まで委縮させかねないから、正常な判断能力まで阻害され、仕事でミスも増える。人の上に立つ者として致命的とも言える、朝令暮改を繰り返すことにもなる。こうなると周りからの信頼まで失う。

 徳川家康が「怒りは身を滅ぼす」と言ったのは、あまりにも有名な話である。徳川家康はアンガーマネジメントを上手に実施していたから、天下を取れて長生きしたのである。怒りを爆発させて生きている人は、織田信長のように恨みを買うし、長生きできないことが多い。毎日のように怒りを爆発させてしまっている人は、一刻も早くアンガーマネジメントをしないと大変なことになる。身を滅ぼしかねないからだ。身体と心がボロボロになってからでは遅い。とは言いながら、アンガーマネジメントをひとつのメンタルテクニックとして実施して、6秒ルールを真面目に実践しても、怒りを完全に消し去ることはできない。

 何故、アンガーマネジメントによって怒りを完全に消せないかというと、自分のメンタルや生きる価値感に偏りや拘りを抱えているから怒りが生まれるんだということを認識していないからである。自分の思想や哲学に問題があるから怒りをコントロールできないのだということを知らなければ、いくらアンガーマネジメントをしたとしても効果は上がらない。自分の間違った価値観を変革しなければ、怒りを昇華させることは難しいのだ。怒りを爆発させてしまうのは、部下たちが仕事を満足にできないとか、お粗末な仕事ぶりなのだから当然だと言えよう。とは言いながら、怒りに任せて部下たちを怒鳴りつけたとしても、部下たちは一向に成長しないであろう。

 部下たちを満足できるレベルまで成長させるには、上司としての人間哲学が必要なのである。ましてや、怒りを爆発させない為には、そもそも正しい価値観が必要なのである。その正しい価値観や哲学というのは、全体最適と関係性重視の価値観であり、自らの自己組織化とオートポイエーシスを生み出す哲学でもある。言い換えると、システム思考の哲学である。上に立つ者はシステム思考の哲学を持たないと、部下を成長させることは出来ないし、怒りを収めることは不可能だ。そして、自己マスタリーを実現することで怒りを昇華させることも可能になる。アンガーマネジメントは、システム思考の哲学と自己マスタリーの実現によってしか、成功しないのだということを認識すべきである。

いじめる子といじめられる子の根っこは同じ

 日本の学校でいじめ問題が起きると、いじめられている子どもを守るにはどうしたら良いかという点が重要視される。まずは、教師たちはいじめられている子どもを助けることに努力する。いじめている子どもを教師たちは注意するが、二度といじめ事件が起きないように徹底的に予防対策を取るようなことはしないものだ。酷い教師になると、いじめている子どもといじめられている子どもを対面させて、仲直りの握手をさせるというような青春ドラマの再現のような愚策を取るケースもある。まったく見当はずれの対応だ。

 いじめられている子どもは、けっしてそのことを親にも言えないし教師たちにも言えない。何故なら、いじめを告白してもいじめを解決してくれないことを知っているからである。いじめを告発したら、いじめは益々酷くなることが解っているのだ。それだけ、子どもは親を信頼していないし、教師たちのこともまったく信じていないのである。学校と言うのは、いじめを隠したがるし、いじめを解決する能力を持った教師がいない不幸な場所なのである。だから、いじめを積極的に探索しようともしないし、解決しようともしないのだ。

 日本の学校でいじめ事件が起きると、いじめを受けている子どもにカウンセラーを対応させる。しかし、いじめている子どもをカウンセリングするケースは殆どない。ところが欧米においては、いじめている子どもにもカウンセラーを充てることが少なくない。何故なら、いじめをしている子どもの心は、とてもひねくれているし傷ついていることが多いからである。日本の学校においては、いじめをする子どものメンタルに問題があるという観点を持つ関係者は皆無なのである。だから、日本の学校ではいじめがなくならないのである。

 日本の教師たちは、いじめを受けている子どもにも問題があると考えている。しかし、いじめをしている子どものメンタルに問題があると考えている教師は殆どいない。いじめをしている子どものメンタルは正常だと考えている。しかし、いじめられる子どもの心よりも、いじめている子どもの心は大きな問題を抱えていることが多い。いじめをしている子どもは、傷ついた愛着や不安定な愛着を抱えていることが多い。愛着障害と言っても過言ではない。深刻な自己否定感を抱えているし、愛情不足で苦しんでいることが多い。

 いじめをしている子どもの両親は、共に高学歴で裕福な暮らしをしているケースが多い。いじめをされて、不登校に追い込まれてしまっている家庭の両親も同じようなケースが目立つ。いじめられる子どもの愛着も傷ついているので、エネルギーが低下しているから、どうしてもいじめの対象者になることが多い。いじめをする子どもは、愛着が不安定であり自己否定感が強いから、自分の方が優れているという主張をするために、いじめをしてしまうのである。親から支配され制御されているばかりか、ダブルバインドの子育てをされている。

 いじめをする子どもの心は深刻な闇を抱えている。小さい頃からの育てられ方に問題があり、愛に飢えている。一見すると、ごく普通の親に育てられて、愛情もたっぷりと受けながら育てられているように見える。しかし、その愛情というのは、無条件の愛ではなくて、条件付きの愛である。つまり、親の思った通りに行動する子どもじゃないと、愛さないよという親のサインを受け続けて育ったために、本物の自己肯定感が育っていないのである。こういう子どもは、周りの子どもを否定することで、セルフイメージを高めようとしがちである。

 傷ついた愛着、または不安定な愛着を持った子どもは、いじめる側になるケースと、いじめられるケースになることがある。このような愛着障害の子どもは絶対的な自己肯定感を持たない為に、不安があり自分に自信がない。不安な為におどおどした態度を見せることが多く、いじめられる対象になることもある。一方では、自分の不安さを隠す為に、激しい攻撃性を見せて、自分と同じ不安を抱えている子どもを否定したくなりいじめるのである。自分と同じ不安定さを相手の子どもに発見した時に、自分にあるマイナスの自己を持つ相手を否定したくなり攻撃するのである。いじめることは悪いことで絶対に許せないが、こういう攻撃性を見せる子どもこそ、救ってあげないといじめはなくならない。

農業が心を癒す・アグリヒーリング実証実験

 JAと順天堂大学の共同研究で、農業体験がストレスを軽減してメンタルを癒すことが実証された。練馬区の体験型農園で男女40名に追肥や収穫体験をしてもらい、作業前後の唾液をELISAで解析を行い、比較検討してアグリヒーリングの効果があることが判明したという。農業体験や自然体験はストレスを解消してヒーリングの効果があると以前から言われていたが、それが科学的に証明された形である。このアグリヒーリングや自然体験による癒しの効果が実際にあると解れば、メンタル疾患の治療にも使えるということになる。

 ストレスで増加するホルモンであるコルチゾール、クロモグラニンAが農業体験後に減少し、幸福度をあらわすホルモンのオキシトシンは、増加していることが確認された。また、POMS2®による気分アンケートでは、怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張といったネガティブ因子がいずれも低下することが明らかになったという。農業体験をすることが一定のストレス軽減、幸福度のアップに寄与していることが判明した。何故、ストレスホルモンが減少するのか、幸福ホルモンのオキシトシンホルモンが増加するのか、完全には解明されていない。

 ストレスで増加するコルチゾールというホルモンは、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)の一種で、本来は有益なホルモンである。しかし、あまりにも大量に出てしまうと、いろんな副作用を起こす。不眠やうつ病の元凶とも言われている。また、このコルチゾールというホルモンは大量に放出され続けると、海馬を委縮させる働きがあることが解っている。認知障害や記憶障害になるリスクもあるということである。コルチゾールというのは、メンタルに対する悪影響だけでなく、活性酸素を増やすので身体にも悪影響を与える。

 幸福ホルモンと呼ばれるオキシトシンホルモンというものは、セロトニンの分泌にも影響を与えると言われている。セロトニンと相関関係があることが解っている。つまり、オキシトシンが分泌されるとセロトニンも分泌されるし、その逆の場合もあるということである。農業体験で何故にオキシトシンホルモンが出るのかと言うと、野外のフィールドで土をいじることが幸福感をもたらすことと、農産物の育成と収穫に寄与することが誰かの幸福に繋がってくるという実感がそうさせるのかもしれない。

 さらに、オキシトシンホルモンは周りの誰かとの絆や関わり(関係性)を強く実感すると放出されるということも言われている。そういう意味では、今回の実験で指導者から農業の手ほどきを受けながら、複数人で農業体験をしたことで、強い関係性を実感したのも影響したと思われる。ひとり農業はあまり幸福感を感じないが、家族や共同体での農作業はオキシトシンホルモンを多く出してくれる。また、ひとりでの自然体験でもストレス解消できるが、複数人での自然体験ではストレスを軽減し、コルチゾールの分泌を低下させることだろう。

 これらのことから、ストレスフルな生活をしている都会に住む人たちが、自然体験や農業体験をするために田舎に来て、ストレス解消しようとするのは科学的に正しいことが証明されたのである。何となくそれが効果あると解っていたし、実際に田舎で農業体験や自然体験をすることが幸福な気持ちにさせてくれるということを実感していたのだ。特に農家民宿で寝泊まりしながら、ホストに手ほどきを受けながら収穫体験するのは、ストレス解消に大きく寄与するのは間違いない。一緒にトレッキングしたり山遊び川遊びしたりするのも良い。

 不登校やひきこもりの青少年を、田舎の農家民宿に宿泊させて、農業体験や自然体験をしてもらうというのは、とても有効だということが言えるだろう。不登校やひきこもりの青少年は、愛着障害を根底に持つことが多い。ストレスがトラウマ化していて、コルチゾールが大量に出続けていて不眠の症状があり、昼夜逆転していることが多い。昼間に農業体験や自然体験をして、コルチゾールを減らして疲労感を感じることで熟睡できよう。農家民宿のホストや指導者・支援者との触れ合いや関わり合いがオキシトシンを出させるに違いない。不登校やひきこもりを乗り越えるきっかけにもなり得るだろう。