内外の政界ではポピュリズムの嵐が吹き荒れている。ポピュリズムというのは、実際には民衆を焚きつけて政権を得るための巧妙なツールでしかない。過去の歴史においても、ポピュリズムの代表的なものはナチズムであるし、ポピュリストの代表者はアドルフヒットラーその人である。フィリピンのドゥテルテ大統領もしかり、現在の米国大統領のトランプ氏もポピュリズムを巧妙に利用している政治家だ。エリート層や外国人に対する敵対心を煽り、自国民ファーストを掲げる政治家は、自分たちこそが民衆の味方だと思い込ませるのだ。
これは他国で起きていることであり、我が国日本では過去にもなかったし、現在もポピュリズムなんて起きていないと国民は思っているに違いない。ところが、太平洋戦争時代に日本は一部の軍国主義者に毒されてきた。それはポピュリズムであるし、現代日本でも自国民第一主義を掲げて支持を伸ばしている政党があるし、つい先日の都議選でも都民ファーストが勝利したのだが、あれがポピュリズムに扇動された結果である。外国人を敵とみなして、外国からの移民や労働者を受け入れようとしないのは、トランプと同じ手法である。
日本ではポピュリズム政党に、一般国民が騙される筈がないと信頼していたが、見事に裏切られた格好だ。日本人ファーストというのが選挙におけるスローガンになっている政党がある。外国人に対して我が国の政府は、自国民以上の過度の行政サービスをしているというフェイクニュースを流している。日本人よりも外国人をいろんな面で優遇しているから、我々日本人は貧しい生活を強いられているのだと主張している。全くのフェイクニュースなのであるが、SNSやYouTubeを利用してこれらの偽情報を拡散している。
外国人が働くうえで優遇されていて、外国人労働者がどんどん増えてしまい、我々日本人の多くが失業してしまっていると主張している政党がある。まったくのフェイクニュースである。日本人が嫌がっていて、労働者不足で困っている職種に外国人労働者を雇っている。中には高い技術を持つ外国人のエリートもいるが、ごく少数でしかない。彼ら外国人のお陰で、経済が回っているし収益を上げさせてもらっている。外国人労働者によって日本の経済が支えられているというのが実情であり、外国人なくしては日本経済はもはや成り立たない。
都民ファーストを謳う政党がある。都民に対してのみ厚く行政サービスや利益を与えるべきであり、他県民や他県にある企業の為に都税からの支出をすべきではないと主張する。東京に本社がある企業によって、田舎の工場から多くの利益が吸い上げられている。原発だって地方にあるが、恩恵を受けるのは都民だ。現在、東京に住んでいる都民の多くが他県で育てられた。地域で育てられた都民が、都内で働いて収益を上げているのである。都税から地域に多少の恩恵があったとしても、お釣りがあるくらいに東京都の為に地域が貢献しているという事実を見逃している。
ポピュリズムというのは、極端に言えば自利・利己主義である。利他精神の正反対である。こんな恥ずかしい日本人ファーストなんてスローガンを掲げる政党に同調する国民がいるなんて、信じられない。日本人は、古来より利他の心を大事にして生きてきた。縄文人は、自分たちの利益や幸福を求めてはいなかった。全体最適を目指して生活していた。だからこそ、13000年もの長期間に渡り平和で争いのない幸福な生活を続けられたのである。自分たちの集落だけの豊かさや幸福を求めることは、けっしてしなかったのである。
日本人ファーストという考え方は、外国人と日本人の分断を生みかねない。外国人に対する差別的で排他的な考え方を増長させてしまい、日本人さえ幸福になれば、外国人はどうなってもいいという利己主義的な国民を作り上げてしまう怖れがある。外国で育てられた方々が日本に来て日本人の為に安い報酬で働いてくれているのだから感謝すべきだと思うし、働きやすい環境を提供するのは政府の責務である。それを批判するなんて、なんと思いやりのない国民であろうか。ポピュリズムを利用して選挙に勝利しようとする卑劣な政党や政治家を認めることは出来ない。自分にとって損か得かという価値観で政党を選んではならない。
