頑張り過ぎているお母さんへ

 不登校やひきこもり、または様々な障害を抱えた子どもの支援を長い期間やって来て、そのお母さん方の大変なご苦労を目の当たりにしてきた。一人で頑張り過ぎるくらい努力してきても、なかなか効果が見られず心が何度も折れそうになりながらも、懸命に子どもの為にと苦労されてきたお母さんたちをサポートしてきた。支援の力が足りなかったのか改善が見られず、自分の無力さに打ちひしがれることも経験した。まだまだ人間としての修行が足りなかったかもしれないし、お母さん方の頑張りに遅れを取ったことに悔やむばかりだ。

 問題を抱えているお子さんのお母さん方をサポートしてきて解ったことがある。それは、お母さんたちはおしなべて、とても頑張り過ぎているという事実である。世の中には、社会を賑わしているような毒母も確かに存在する。しかし、それはごく少数でしかない。多くのお母さんたちは、頑張り過ぎるくらい努力しているし、とても悩み苦しんでいるという事実がある。子どものことを何よりも優先して、自分を犠牲にして無理して我慢しているという姿がある。そして、不思議なことに1人で頑張っていることが多く、孤独感を抱えている。

 問題を抱えている子どもを抱えているお母さんに共通しているのは、孤立しているという事実である。勿論、お父さんもいるしお母さんの実父母や養父母がいたとしても、孤軍奮闘しているケースが多い。中にはお父さんも一緒に悩んでいる例もなくはないが、それでもどこか他人事にしか思えていないように感じるし、どちらかというと子どもの問題に対して腰が引けている。殆どのケースで、お父さんは蚊帳の外にいるか、もしくはお父さんが明らかに発達障害を抱えていて、お母さんがカサンドラ症候群になっている場合が多い。

 日本という国では、家庭における父親の存在が非常に希薄になっているケースが多い。そして、子育てにおける父としての責任を果たしていないのである。その割には、妻の子育てに対して父親は批判的な言動をするし、自分だけが子どもの理解者であるような振る舞いをするのである。厳格な父親を終始一貫演じて、厳しい躾をしてくれるなら有難い。しかし、妙に理解ある父親を演じたり、子どもに嫌われたくないと子どもの機嫌取りをしたりする。母親の苦労を台無しにしたり躾の邪魔をしたりするのだ。子どもにおもねる親は最低だ。

 すべての日本の父親が、こんな酷いお父さんだと言うつもりはない。問題を抱えている子どもの父親は、おしなべてこんな調子であるから、お母さんたちが余計に苦労しているし、頑張り過ぎてしまうのである。そして、誰にも旦那の悪口を言えず、子どもの困り事を一人で抱えて相談できずに悩み続けている。お茶をしたりランチしたりするママ友は沢山いるけど、子どもの深刻な問題を相談できない場合が多いし、ママ友たちも同じような悩みを抱えているのだから、適切なアドバイスがもらえる訳もないのである。

 問題ある子どもさんを抱えて頑張り過ぎているお母さんたちは、どちらかというと男性脳を持っていることが多い。極めて論理的思考をする傾向があり、客観的合理性の考え方をしやすい。だから、問題を分析するのが得意である。そして、批判的な思考をしやすいので、子どもが問題を抱えた原因は夫にあるとか、教師や学友などにあると結論付ける傾向がある。子どもの周りの環境に問題があると批判するだけに終始してしまうと、例えそれが事実だとしても何も変わらない。分析や批判するだけで子どもの問題は解決しないのである。

 頑張り過ぎているお母さんはまったくの孤立無援に置かれているし、心理的安全を保証してくれる存在はない。だからこそ、お母さんにそっと寄り添い心理的安全を保証してくれる第三者が必要なのである。安全と絆のアタッチメント形成をサポートする存在がいれば、お母さんは安心して自分自身を振り返り安定した心理を獲得して、お母さん自身が自ら変わり、問題ある子どもを安定させることが出来る。お母さんが不安を払拭し安定して、豊かな愛情を子どもに注ぎ続ければ、子どもの精神は見事に安定してくるのである。

※イスキアの郷しらかわは、問題を抱えている子どもを育てるのに頑張り過ぎているお母さんを、個人的にサポートするのは事情があり止めてしまいました。しかし、親身になってサポートしてくれる第三者を養成する活動をしています。子ども食堂や子どもの居場所を設置運営している方々の研修を受け入れています。これから、子どもの健全育成のための母親サポートをしている方々、またはこれからそういう活動をしたいと思っている方たちの研修を実施しています。

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