社会問題化している孤立と孤独死

 3組に1組の夫婦が離婚するような時代を迎えて、高齢者の孤独死が急増していて社会問題化しているという。離婚している高齢者だけではなく、死別して一人で生活している老人も多くて、やはり孤独死を迎えている。元々子どもが居ない、または同居しないということを選択する子どもが多くなっている影響もあろう。そして、親しくしている友だちもないし、ご近所との付き合いもないことから、孤独死が誰にも知られず放置されているケースも少なくない。人生の最期を一人で迎えるなんて、不幸極まりないことである。

 結婚をしたがらない若者が多いし、結婚しても子どもを持たない若夫婦も増えている。このままで推移していくと、孤立と孤独死がこれから益々増えて行くのは間違いない。なんと世知辛い世の中であろうか。自分で孤独を選択したのだから仕方ないと言えるが、結婚したがらない若者や子どもを産まない夫婦が、老後の未来をしっかりと見据えての判断とは思えないのである。今が良ければいいじゃないかと思うのかもしれないが、これからは長生きが普通の時代だからこそ、老後の長い生活のことも考えてライフプランを立てるべきだ。

 老後のライフプランは、経済的に余裕があるから心配ないと豪語する人もいる。有料老人ホームや介護付きのリゾートマンションの為の貯蓄もしているから、まったく心配していないという人もいるだろう。確かに、ある程度の豊かな暮らしは出来るし、入居者どうしや介護を担う職員との触れ合いもあろう。その関係性があれば、寂しい思いなんてすることもないと考えるのも至極当然である。しかし、老人ホームや介護施設での生活は、同じ境遇どうしの付き合いだから、同じ日常の繰り返しで退屈極まりなく、孤独感を拭えない。

 元々リアルな人づきあいが苦手で、SNSなどのネットワーク上の繋がり合いだけしかしたがらない人も増えてきている。現実の職場では必要最低限の付き合いに限定して、プライベートな付き合いを拒否している人も増えているという。何故に、現実社会での深い付き合いを避けているかと言うと、他人との付き合いが煩わしいとか関係性が捻じれた場合に困るからという理由が多いらしい。それは、元々不安や怖れが強い気質を持つからと思われる。HSP(ハイリィセンシティブパーソン)のせいかもしれない。

 HSPとは、神経学的過敏から心理社会的過敏までも持つ気質を持った人ということで、人一倍繊細な感受性を持つが故に、強烈な生きづらさを抱えた人である。HSPになるそもそもの原因は、幼少期の極端な育てられ方にあり、良好なアタッチメントが欠落しているケースが殆どである。安全基地(安全と絆)が確立されていなくて、心理的安全性が欠如していることが多いのも特徴である。だからこそ、他人がパーソナリティスペースに入り込むことに対して不安や怖れを感じるので、深い関係性を築くのが非常に苦手なのでる。

 そんな深い関係性なんて必要ないし、いつでもブロックできるネット上の友達で十分だと思ってしまっている人も少なくない。これでは、人間として進化や成長するうえで、大きなマイナス要素となってしまうことを認識してほしい。人が本当の自分や自分の本質を認識する為には、他人との深い関わり合いが必要である。何故なら、人間とは他人との違いを認めてこそ、自分と言うものが初めて理解できるし、他人の心も解ることが出来るのだ。人間が人間として、深く気付き学ぶためには、人との関わり合いが必要不可欠なのである。だから、人は多様性を持つのだ。己を知らずして他人の理解なんて不可能だ。

 人間という生き物は、単独では生きて行けない。助け合わないと生きることが出来ないのである。ましてや、人間と言う生物(あらゆる生物も含めて)は、自己組織化する。主体性と自発性・成長性と進化性・責任性と自己犠牲性・連帯性という自己組織化能力は、人間どうしのネットワークが根底に無いと育まれない。人間が進化成長してきた歴史においては、ネットワーク化(組織化)が必要不可欠だったのである。つまり、人間と言う生物が完全なる人間という存在であり続けるには、『関係性』が何よりも大切だということなのだ。人間は孤立させてはならないし、孤独を求めてはならない所以がここにある。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA