月経がある女性の約7割から8割にPMS(月経前症候群)の症状があるという。また、PMSの症状により仕事や家事に何らかの影響を及ぼしていると答えた女性は、5割にも上ることが解った。そんなにも深刻な症状を起こすPMSであるが、PMSという病気があることを知らない女性が多いらしい。そして、PMSという病気があるということを知っている男性は、専門医など医療職を除外すると、殆どいないと言う。結婚した女性のうち、PMSの症状が強い人ほど、夫婦喧嘩をしやすいというから深刻である。
PMSの症状があるのは、月経がある女性の約8割にもなるというのは衝撃的であるが、そのうちの何割かの女性は、より重症のPMDD(月経前不快気分障害)で苦しんでいるという。イライラ、気分の落ち込み、不安、怒りっぽくなる等の深刻な症状が起きるのがPMDDである。これらの精神的な症状によって、仕事が手につかなくなったり、子育てや家事が出なくなったりする。さらには、人間関係を損なったり、仕事を辞めざるを得なくなったりもする。なにしろ、あまりにも不安感が強いからひきこもりたくなってしまうのである。
こんなにも深刻な影響を与えるPMSとPMDDを何とかしないと、人生が破綻しかねなくなってしまう。それぐらいPMDDというのは、当人にとって深刻なのだ。医療機関で受診して、PMDDを治療しようと思ったとしても、快癒することはあまり期待できない。なにしろ、PMDDという疾病を理解しているドクターが少ないし、ましてやPMSとPMDDの専門医がごく僅かしかいないのである。せめてうつ症状に対する抗うつ剤の投与かピル剤を処方するしか方法がない。そもそも、本当の原因さえ知らないのである。
PMSやPMDDは、概ね月経の14日前から症状が起き始めて、生理開始後3日目くらいまで続くことが多い。ということは、半月くらい症状が続くと言うことである。つまり、月経が始まって閉経するまでの約40年以上、人生の約半分という長い期間を憂鬱な気分で過ごすということになる。そういう辛さを知っている男性は皆無であろう。最新の医学研究によると、単なるホルモンによる心身の異常ではなくて、脳や神経系統の異常があるということも解ってきている。そして、どうやら迷走神経も関係しているらしいのである。
PMDDの症状であるうつ気分や希死念慮、そして強烈な不安と自己否定感ということを考慮すると、女性ホルモンの影響によるものだけとは考えにくい。脳の機能異常や神経系統の異常もあるということは、根底に愛着障害があって、その影響で背側迷走神経が活性化してしまい、自律神経の破綻が起きているとしか思えない。つまり、背側迷走神経が暴走を起こしてしまい、シャットダウン化が起きていると見るべきであろう。したがって、治療が難しいし、完治することが期待できないと思われる。
という発症プロセスだということが解れば、PMSやPMDDの症状を癒すことも可能だということになる。愛着障害を和らげて、背側迷走神経の活性化であるシャットダウンを解いてあげれば、PMSやPMDDの症状も和らぐであろう。そして、月経前の不快気分もなくなるに違いないし、身体症状も和らいで行くに違いない。そうすれば、ライフスタイルも大きく変化するだろうし、今まではできなかったことにもチャレンジできるだろう。今までの白黒フィルムのような世界から、総天然色のような世界に飛び込む気分になるだろう。
愛着障害は、優秀なカウンセラーやセラピストに適切な愛着アプローチを受けることが出来たなら、徐々に愛着障害を癒すことが可能だ。そして、背側迷走神経の活性化によるシャットダウンを停止させて、腹側迷走神経活性化させるには、適切なエクササイズが有効である。基本エクササイズとサラマンダーエクササイズを組み合わせて実施すると、自律神経の誤作動が正常になり、シャットダウンが解けてくる。さらには、緊張した筋肉に対する神経筋膜リリースも組み合わせると、もっと効果が高くなる。この三つを組み合わせて根気よく実施することで、PMSやPMDDが治るに違いない。