子どもの幸福度調査結果が発表され、日本の子どもの幸福度が異常に低いというが解った。日本の子どもよりも低い国はあるが、先進国の中では断トツに低いというのは、ショックなことである。精神的幸福度だけをみると、なんと37位という。今の生活に対する満足度や自殺率などを勘案して決めるらしいが、日本の子どもが不幸な気持ちで生活しているということに驚く人は多いだろう。一方ダントツで一位なのがオランダである。どういう訳でオランダがトップなのかを分析すれば、日本の低い幸福度の原因も解るに違いない。
オランダの子どもの幸福度が高いのは、その教育制度にあると言っても過言ではない。自由度が高いと言うか、どのような教育カリキュラムにするのか、選択権が本人と保護者に委ねられているという点である。飛び級制度は今やどの国にもあり、オランダでも採択されている。他国と違うのは、留年するかどうかを本人が選択できるという所だ。理解度に不安があれば、もう一年その学年の教育を受けられる。そして、留年による不利益や同級生からのいじめが皆無だという。国民全体が留年を認識して容認しているからである。
オランダの義務教育のカリキュラムは、主要教科だけが決められていて、その他の芸術科目などは選択制らしい。日本のように画一的に決められている訳ではなくて、好きなことを自分で選べて学べるという。つまり、子どもたちに大人がすべての学びを押し付けるのでなくて、子ども自身が主体性を持って選ぶのだ。そして驚くことに、システム思考を小学生に教えているという。小学生時にシステム論を教えるというのにはびっくりする。自己組織化を子どものうちから学んで身に付けるというだから素晴らしいことだ。
オランダの家庭における親子の絆と触れ合いも濃密で良好らしい。親子で共に過ごす時間を何よりも大切にしているし、アウトドアでの遊びやバカンスを親子で楽しむことを最優先にしている。子どもを持つ親たちは、会社で残業をしないし、勤務後の飲み会や付き合いもない。家庭サービスの為にと、有休消化率も高い。常に親子で一緒の活動を心がけているから、親子の絆が深いしお互いの信頼関係も強固なものとなっている。当然、お互いが支え合い寄り添っているから安心感がある。故に、子どもは不安感がないからチャレンジ精神も旺盛だ。
オランダは国家全体で教育に対する考え方を確立していて、子育てや家庭での時間を多く持てるようにと政治と経済を動かしている。ワークシェアリングを実践している。同一労働同一賃金を徹底していて、正社員でもパート・アルバイトでも同じ時給で仕事をする。何時間働くかも比較的自由で、夫婦のどちらかが短時間労働を選択して、子育てや家事を主に担う。残業手当に対する課税を強化して、残業をさせないような労働政策を取っている。当然、労働時間が短くなるので、集中して働くから労働生産性が高い。
企業における働き方も、オランダには驚くような商慣習があるという。日本の企業経営における顧客に対する責任の中で、重要視しているのは納期である。日本ではどんなことがあっても必ず納期を守る。ところがオランダにおいては、納期を必ず守らせるという商慣習がないらしい。例えば、残業までしても納期を守るというのは、日本では常識である。オランダでは、社員に残業までさせて納期を守ることはない。そもそも、オランダでは納期が数日ずれ込むというのは最初から織り込み済みであり、違約金やペナルティを課すということないという。納期に対するしばりは働き方に影響するから、厳しくないというのは好ましい。
このように政治も経済面でも、オランダでは人間中心主義を貫いている。人間としての幸福や心の豊かさを重視していて、経済や金融面での成長は二の次である。経済界全体もそれを後押ししているし、政治も家庭・人間を大切にしている。そして何よりも人間どうしの関係性を大事にしているし、全体最適を重んじている。そのために、すべての国民が主体性・自発性・自主性を持てるように子どもの時から丁寧な教育をしているのである。システム思考という価値観を国民全体が持てるように教育しているのだ。だからオランダでは子どもが幸福なのであり、日本ではシステム思考と真逆の教育をして、システム思考を無視した政治や経済運営をしているから日本の子どもは不幸なのである。