虐待を完全に解決する方法

千葉県で親が自分の娘を日常的に虐待していて、死に至らしめたという実に可哀想な事件が起きた。この父親は、児童相談所や教育委員会、さらには学校の管理者までも恫喝して、我が子を無理やり家庭に引き戻していたと報じられている。行政側の職員たちのあまりにも杜撰な対応が、この子を守り切れない結果を招いたとバッシングを受けている。しかし、児相の職員にしても、教育関係者にしても、このような問題のある扱いにくい保護者を、指導できる力量を持っている職員なんているのだろうかという疑問を持つ。

千葉の虐待死事件が明るみになってから、全国各地で同様の子ども虐待死事件がニュースになっている。不幸にも子どもが虐待によって亡くなるというあまりにも悲惨な事件が増え続けている。さらには、虐待だと児相に報告を受ける件数が年々、まさにうなぎ昇りに増えている実態がある。それでなくてもマンパワーが不足している児相が、対応しきれないのは当然であろう。児相職員の対応が不備だったという批判、児相の職員を増やせというマスメディアの指摘は的外れでないが、それだけで虐待が解決できるとは思えない。

確かに緊急避難的に児相が虐待されている子どもを保護して、虐待している親から引き離すことは必要である。しかし、一時的に虐待する親から引き離して、子どものケアをすると共に親の指導を同時並行的に進めたとしても、なかなかその効果は上がっていないのが現状である。「私が愚かでした。子どもに対する虐待をするなんて、とんでもないことをしてしまった。これからはこの子の親として、子どもを愛し慈しみ、いかなる場合も子どもを守り育てることを誓います」と心から悔い改める親なんて、そうはいないのである。

児相で保護した子どもたちが、虐待した親の元に戻り、平和で穏やかな暮らしを取り戻したという実例は、非常に少ない。何故なら、虐待していた親が自らの行動を心から反省し改心して、二度と虐待することなく子どもに豊かな愛情を注いで育てるように導くような指導力を発揮できる児相の指導員が殆どいないからである。ましてや、問題のある父親を改心させられる圧倒的な説得力があるはずがない。中には、説得力もあって圧倒的な指導力を持つ職員もいるだろうが、ごく少数であろう。

説得や指導に素直に応じるような親なら、虐待なんてしないだろう。頑固で、こだわりが強くて、低劣な価値観に縛られているであろうし、短気で攻撃性の高い性格だと思われる。子どもだけでなく、職場や行政の職員に対しても怒声を浴びせ恫喝さえもするだろう。そんな怖い男性に、毅然とした態度で平然と指導を行える職員なんていないに違いない。ましてや、問題ある父親の心を開かせて、穏やかに話を聞かせることは、同年代の40代未満の職員には至難の業であろう。かといって、経験豊かな中高年職員は体力的にも気力的にも無理だと思われる。

虐待事案を完全に解決したいが、問題のある親を改心させられる指導員がいないのなら、それを実現させるのは非常に難しいということになる。しかし、ひとつだけ虐待を解決する方法がある。民間企業において人材教育を長年経験した人物で、それも問題のある社員を指導して実績をあげてきた人材を活用する方法である。勿論、既に第一線をリタイアした人材で、残りの人生を社会貢献に捧げたいという志の高い人を嘱託職員で採用してはどうだろうか。そういう人材なら、虐待を繰り返すような問題ある親の話を傾聴し共感して、心の闇をそっと解きほぐすことが出来るのではないかと考える。

虐待をする親は、自分自身も幼い頃に虐待や育児放棄をされて、深い心の傷を負っていることが多い。または、親からの愛情が不足していたり、過干渉や過度の支配を受けたりしていたケースが多い。つまり、自分自身が育てられた環境に大きな問題があり、それが人格に大きな歪みを抱える要因になっていると考えられる。とすれば、虐待をする親を糾弾して矯正しようとするだけでなく、彼らを救う手立てを考えなければならない。それも、家族カウンセリングやオープンダイアローグ療法を駆使して、虐待する親を否定することなく、自分の間違った価値観に自らが気付くアプローチが求められる。人材育成のプロが、最新の心理療法や精神療法の研修を積めば、十分に虐待の親を指導することが可能になる。これが、虐待を根本から解決する最善の方法であると思われる。

※我が子をどういう訳か虐待してまっていて、悩み苦しんでいらっしゃる保護者の方の相談を「イスキアの郷しらかわ」では常時受けています。さらに、虐待をしてしまう理由の解明、虐待を解決するためのサポートをさせてもらいます。心ならずも虐待をしてしまう保護者は、ご自分自身をとても責めていらっしゃると思います。そのあまりにも大きな悲しみと苦しみを一人で抱え込まずに、ご相談ください。けっしてご本人を否定したり非難したりすることはしません。どう解決すればよいか、ご一緒に考えてみましょう。

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