HSP(ハイリーセンシティブパーソン)を生きる

最近、HSP(ハイリーセンシティブパーソン)という語句が、ツィッターやSNSで盛んに用いられている。これは、心理学、もしくは精神医学の一部の専門家の間で使われている気質的特性・神経学的特性を持った人の総称である。勿論、その特性には強弱があるものの、約5人に1人がHSPだとされている。20%の人がHSPで、それ故に生きづらさを抱えているというのである。その割合の多さも驚きであるが、生きづらさの原因がHSPにあったとするなら、原因が解ることで少しは安心するのではなかろうか。

HSPとは、以前はまったく注目されることもなく、そんな特性を持った人間が存在することさえ認識されていなかった。1996年にエレイン・N・アーロン博士が主張した生得的特性である。HSPは強くて眩しい光、刺激的で不快な匂い、大きな音や意味のない雑音などに過剰反応して、強い不安や恐怖感を持つ。また、他人の微妙な言動に対して、過剰な反応をしてしまうことが多い。特に、自分に対して相手が悪意を持っているのではないかとか、攻撃をしてくるのではないかと不安になることが多い。つまり感受性が強過ぎるというか、あまりにも敏感な感覚を持つ人がHSPの特徴だと言われている。

こんなふうに記すと、マイナスのイメージしかないが、感受性が強いと言うのは繊細な心を持つので、芸術面や文芸における才能が突出するという側面もある。素晴らしい才能を発揮して、凡人には残せないような足跡を残すことも少なくない。とは言いながら、HSPは他人の言動に感じやすいことから、強い生きづらさを抱えることが多い。学校では教師や学友の発する悪意を敏感に感じてしまうし、いじめやパワハラなどが自分に向ってされたものでなくても、不安感や恐怖感がマックスに達して、不登校になることもしばしばである。社会における人間関係に不安を感じてひきこもりになるケースも多々ある。

また、HSPは発達障害と誤認識されることもしばしば起きるし、自閉症スペクトラムと混同されることも少なくない。さらに付け加えると、HSPであるが故に、大人になることへの無意識の拒否反応から、アダルトチルドレンになってしまう傾向もあると言われる。いずれにしても、HSPは感受性が強過ぎるというその生得的特性がある故に、強烈な生きづらさを抱えて生きているのは確かである。そして、そのHSPの特性を周りの人々に理解してもらえなくて、辛い日々を過ごすことが多い。

HSPは感受性が強いが故に、他とのコミュニケーションが苦手な傾向にある。どうしても、自分よりも相手の感情を優先してしまうので、相手の気持ちを慮ってしまい言葉が発せられなくなるのであろう。気兼ねのない人間関係を築き上げることが難しく、親しい友達が出来にくい。SNSなどで何気ない言葉に傷付いてしまうことがあるので、ブログやツィートすることに臆病な傾向がある。他人と接することが極めて苦手なので、人が多い雑踏や満員電車などに不安感を覚えてしまい、対人恐怖症的な症状を呈することもある。

HSPの原因は、生まれつきの遺伝子的な特質によるものだと推測されている。それが真実ならば、このHSPを克服したり乗り越えたりすることが極めて難しいということになる。そうなると、このHSPの特性と一生付き合って生きることになり、生きづらさを克服するのが困難だということだ。それは当事者に取っては、とても辛い現実である。これはあくまでも私見だと断った上で、HSPの原因はDNAの他にもあると提起したい。生まれつきの特性はあったとしても、養育環境によってHSPの特性が強化されたのではないかという推測が出来る。そのキーワードはオキシトシンという神経伝達物質である。オキシトシンという安心ホルモンが不足するような子育てにより、HSPが強化されたのではないかと思うのである。

オキシトシンという脳内ホルモンは、不安や恐怖感を和らげる神経伝達物質である。その効用と分泌作用はまだ不明の部分が多いものの、乳幼児期の不適切な養育によって不足気味になることが多いと言われている。まさしくHSPの症状は、このオキシトシンというホルモンが不足しているから起きるのではなかろうか。このオキシトシンは、愛情たっぷりのスキンシップや触れ合いによって分泌量が増えると言われている。また、このオキシトシンは他人の幸福を実現させる無償の行動をして感謝された時にも分泌量が増える。つまりボランティアや社会貢献活動をすると増えるのである。実際に、HSPの方が社会貢献活動に熱心に取り組んで乗り越えたケースが少なくない。HSPはオキシトシンやセロトニンの分泌量を増やす行動を重ねることで、乗り越えることが出来ると思われる。

 

※ひきこもり、不登校、メンタル休職者は、HSPが根底にあるケースが多いように感じます。HSPやアダルトチルドレンを乗り越えるための研修を、「イスキアの郷しらかわ」は実施しています。問い合わせのフォームからご相談ください。

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