日本の医療制度は世界に誇る国民皆保険制度で、他のどの国よりも恵まれていると思っている人が多いことであろう。しかし、現実はまったく違う。日本の医療制度は、医療を提供する側と薬品会社や医療器械の企業に有利になるように仕組まれている、世界でも最悪の医療制度だと言えよう。そんなことはない、望むならすべての国民が平等に医療を受けることが出来るし、医療保険が適応され少ない自己負担で済むから、とても恵まれていると主張することであろう。医療技術のレベルも高いし、薬品開発や医療器械の高度化も進んでいるから、日本の医療は素晴らしいと思い込まされている人が殆どである。
確かに日本の医療は、診断技術や外科的治療のレベルでは、世界最高の評価を受けているのは間違いない。しかしながら、内科的慢性疾患や精神疾患で、完治した人で再発しない患者がどれだけいるであろうか。日本の医療による恩恵で、病気から完全に離脱できて二度と再発しないという人がいたならお目にかかりたいものである。勿論、ごく一部の例外はある。外科的治療や統合医療などで疾病を完治させた人がいない訳ではない。しかし、多くの患者は症状を抑えるだけの対症療法に追い込まれ、慢性的に薬漬けにされている。
日本の医療費は年々高騰し続けている。高齢者が増えているし、高度な医療や高額な医薬品が開発進化しているから当然だと多くの人が思い込ませられているが、そんなことはまったくのウソである。素晴らしい医薬品が開発されているのだから、疾病は完治される筈なのに、患者数は少なくなっていない。逆に増加しているのである。人口は減少しているのに、罹患率と投薬されている医薬品の金額が年々増加しているという不思議な現象が起きているのである。
ひとつの極端な例をあげてみたい。うつ病を劇的に治すと言われて、多くの患者に処方されているSSRIとSNRIという薬がある。この医薬品は、うつ病に効くし副作用がないという触れ込みで精神科以外の一般内科医でも処方されることが多い。それだけ効き目のある医薬品なのだから、うつ病患者は、相当減少すると思われていた。ところが減るどころか、2倍から3倍に患者数に急増したのである。そして、うつ病患者は増加し続けている。この抗うつ剤だけでなく他の薬剤も、一度飲み始めたら一生飲み続けなければならなくなることが多い。皮肉なことに、精神科の治療によって薬物依存になっているのである。
メンタル不調になる時に最初に起きる症状は、睡眠障害であることが多い。こういう症状を患者が訴えると、ほとんどの医師は睡眠導入剤や睡眠薬、または精神安定剤を投与する。そして、この睡眠導入剤や睡眠薬を減薬・断薬することを薦める医師はいない。やがて、効かないという訴えに対して、益々強い睡眠薬に変更する。そして精神安定剤から抗うつ剤や向精神薬へと進んでいくケースが多い。睡眠障害を訴えてきた患者に、適切な精神療法や心理療法で改善してあげたら、精神疾患にならずに済んだであろう。
生活習慣病などの慢性疾患や精神疾患を治療する医療機関において、減薬・断薬を薦める医師はどれだけいることだろう。かなりの少数であることは間違いない。何故ならば、そんな指導をすれば医療経営が成り立たなくなるからである。日本の医療保険制度は出来高払いになっている。投与した薬剤、施術した治療はすべて保険者と本人に無条件で請求できる。普通の営利企業なら、製品やサービスを購入して代金を支払ってもらい収益を得る。その効果や成果がないと苦情になるし二度と購入してもらえない。医療だって、完全な効果や成果をあげて、その対価を支払うべきなのである。完治させたら報酬を得る制度にすればよいのに、どういう訳か日本の医療保険制度は症状を悪化させても慢性化させてしまっても報酬を得るのだ。
日本の医療制度は、実に不思議である。症状を完全に抑えて断薬をして、完治させたら多額の報酬を支払う制度にすればよいのに、その真逆になっている。患者を治さずに、長い期間に渡り薬漬けにしたほうが多額の報酬を得る制度なのである。そんな保険制度にしてしまった厚労省が愚かなのである。元々、医療は民間の営利企業が行うべきではない。できれば、国が医療を担うべきである。何故なら、営利を目的にすれば、患者本位の医療にならないからである。患者ファーストを謳うのであれば、まずは減薬・断薬をするべきだ。完治することを目標にして、慢性化しないように医師は努力しなければならない。それが本来の患者ファーストの医療なのである。