和食の文化が世界遺産として登録されたが、伝統的な和食文化は廃れつつある。一般家庭の食事において、伝統的な作り方をした日本料理がなくなりつつある。世界的に見れば、和食の評価が高まりつつあるにも関わらず、逆に日本では和食の文化が退化しているというのは皮肉なものである。一般家庭の食卓では、子どもたちが喜ぶ西洋料理が並んでいるし、弁当のおかずも同様である。このままでは、和食の文化が継承されていかないのではないかという危惧を持つ人も少なくない。
世界的に和食文化がもてはやされているには、大きな理由がある。まずは、和食というのが健康に良いという点である。欧米の食事は、高カロリーの高脂肪高蛋白質が基本スタンスとなっている。肉食文化であるから、大量の脂質と動物性蛋白質を取り過ぎる傾向がある。当然、高脂質血症になるし肥満傾向になる。心臓血管障害や脳血管障害になりやすい。不健康な生活をなんとか解決するには食生活を見直さなくてはならないと、欧米の高教養の人々やセレブの間では日本食がブームとなっているのであろう。
和食というのは、見た目の派手さはないものの、その美しさは折り紙付きである。繊細な味を味わうことが出来るし、塩味や甘味を加えることを極力減らして、素材そのものの旨味を感じることが可能になる。当然、高血圧症や高脂血症にはならないから、理想的な健康食となる。少量の食事でも満足がいくようになっているから、肥満にもならないし、高血圧や動脈硬化を防ぐことが可能になる。繊細な味覚を育ててくれるので、ファストフードやジャンクフードの不味さを感じて、それらに依存することがない。
このような素晴らしい和食文化を後世まで残したいと思うのは、日本人として当然なことである。ましてや、世界的にも評価されている和食の文化を残すだけでなく、その良さを再認識して、もっと社会に認知されて広めて行かなくてはならない。その為には子どもたちに、和食の素晴らしさを体感してもらわなくてはならない。日常の食生活において、子どもたちに美味しい和食の料理を食べてもらい、繊細で確かな味覚を育んでいくのが我々の使命でもある。しかしながら、伝統的な和食を作れる若いお母さんたちがいないのである。伝統的な日本料理店でしか、本格的な和食が味わえなくなっているのだ。
以前はどの家庭でも『おふくろの味』というものがあった。煮しめや魚などの煮物に代表される、素朴で味わい深い料理であった。それぞれの家庭独自の調理方法や味付けがあり、母親の愛情がたっぶりと注がれたその料理は、子どもたちだけでなく夫をも幸福な気分にさせてくれた。毎日を生きる活力にもなったし、病気やケガを防ぐのにも役に立っていた。メンタルの病気になるのを防ぐことも出来ていた。うつ病や双極性障害、発達障害、パーソナリティ障害が多くなり、メンタルが原因の自殺が多いのも、和食文化の退化と関連しているように思えて仕方ない。
スーパーマーケットに行くと、出来あがった惣菜が並んでいるし、簡単に調理できる冷凍食品が大量に陳列されている。忙しい毎日であるから、じっくり伝統的な日本料理を作る時間がないのも理解できる。だとしても、なんとか調理する時間を生み出す努力をして、一般家庭の食卓に日本料理を並べてほしいものである。子どもたちに安全で安心な食事を提供するのは、親の大切な務めである。様々な危険性のある添加物が大量に含まれている出来合いの料理を、愛する子どもたちに食べさせることは親として出来ない筈である。子どもの未来を幸福で心豊かなものにするには、おふくろの味こそが必要なのである。
和食の文化を後世に残すには、若いお母さんやお父さんが自分達の食生活を、抜本的に変えることから始める必要がある。ファストフードやジャンクフードを美味しく感じる味覚を正さなければならない。添加物が大量に入っている料理が不味いと感じる、正しい味覚を取り戻すことが必要である。子どもたちの食育も大切であるが、大人の食育こそが求められていると感じている。繊細な和食の美味しさを感じる味覚を大人たちに育てるこそが、今必要とされると思っている。和食の文化を隆盛させることで、不登校、ひきこもり、メンタル障害をなくすことにも繋がると確信している。
※イスキアの郷しらかわでは、『森のイスキア』で提供されていたような素朴で伝統的な和食を提供しています。イスキアの食事は、子どもたちの食育として最適です。これから大人たちの食育にも取り組んで行きたいと考えています。是非、伝統的なおふくろの味をイスキアで味わっていただきたいと思います。