医師による診療・治療を継続的に受けている人は、相当な割合で存在している。高齢者の半数以上は何らかの治療を受けているし、生活習慣病で治療を受けている中高年者は多い。ましてや、最近は若者たちもメンタル障害で治療を受けている人も少なくない。その治療内容はというと、殆どが定期的な検査と診察、そして投薬治療である。その投薬治療は、根本治療ではなくて対症療法である。したがって、その投薬治療は緊急避難的に行われるものであり、徐々に減薬・断薬に向かうべきものであろう。
ところが、実際に減薬・断薬をするケースは非常に少ないのが実情である。一度飲み始めた薬は増えることはあるものの、減薬・断薬に積極的に取り組んでいる医師は、極めて稀である。辛くて苦しい症状を抑える対症療法の薬は、患者にとって有難いものである。患者にとっても、減薬・断薬をするということに対するハードルは高いと思われる。減薬・断薬によって症状が再発しないかと、不安になるのは当然である。ドクターも、減薬・断薬によって症状が悪化すれば責任を問われ兼ねない。減薬・断薬に積極的になれないのは当たり前であろう。
対症療法の投薬で問題になるのは、薬を長期間飲用することにより、人間本来の機能の低下が起きてしまい、死ぬまで薬の投与が続くことである。だから、基本的に対症療法の薬というのは、長期間化の引用は避けなければならないということが大原則である。したがって、対症療法の薬物治療で症状が落ち着いたら、疾病の原因を探り出し根本治療をする必要がある。根本治療をしながら、徐々に減薬・断薬をして完治させるというプロセスを辿るべきである。ところが、外科的な治療は根本治療をするケースがあるものの、内科的な治療においては、根本治療をするケースは殆ど見当たらない。
対症療法の薬物治療を漫然と続ける医師が非常に多いのには辟易する。特に精神科のドクターは、減薬・断薬するどころか、徐々に増やし続けるのが現状である。量も種類も増やし続ける。抗精神薬の副作用として、便秘、低血圧、肝機能障害、腎機能障害、貧血、意欲減退などが起きて、その対症療法の薬物治療も行われるので、膨大な薬を飲まなければならなくなる。さらに問題なのは、脳神経に直接作用する長期間の薬物治療をすると、薬物の血中濃度が下がると禁断症状が起きてしまい、依存性が高まることで益々減薬・断薬が益々困難になってしまうことである。
世の中には、対症療法の薬物治療だけでなく根本治療を実施している医師も存在する。小西先生や本間真二郎先生は、広く知られている。真弓定夫先生も、薬物治療をしないで治療していた名医である。他にも全国には根本治療に取り組んでいらっしゃる医師が存在する。対症療法の薬物治療は診療時間もあまり必要ないし、多くの患者を扱うことができる。根本治療をする医師は、問診や診察、生活指導を丁寧にするので、長時間の診療時間が必要で手間がかかるので、多くの医師は根本治療をやりたがらない。
なにしろ、日本の医療保険制度は、対症療法を基本にして作られている。根本治療をすると、経営的にも困難になるのである。ましてや、根本治療をし続けると患者さんがいなくなるのだから、収入が激減する。真弓定夫先生のクリニックは、最初は多くの患者さんで賑わっていたが、殆どの患者さんが完全治癒して、再発もしなくなったから閑古鳥が鳴いていたという。根本治療という療法を志向しない医師が多いのは、こういう理由もあるからであろう。経営が成り立たないクリニック経営をする医師が居ないのは当然である。減薬・断薬をしたがらない要因はここにもあるのだ。
減薬・断薬に取り組む根本治療をしているクリニックが経営困難に追い込まれて、廃院に追い込まれているかというと、そうではない。本間真二郎先生のクリニックは、評判を聞いて連日大盛況であるし、全国各地から講演依頼が舞い込んでいる。本間先生の著作はベストセラーになっている。統合医療の小西先生のクリニックも、難治性の患者さんが大勢押し寄せている。出来ることなら、減薬・断薬をしてくれる医師を選びたいものである。もし、接客的に減薬・断薬をしてくれない先生なら、自分から減薬・断薬を申して出てみたらどうだろうか。拒否されたら、ネット情報で減薬・断薬をしてくれる医師を探し出せばよい。減薬・断薬をしてくれる先生こそ、本物の医師であると言えよう。