行政とNPO法人による協働事業は、全国でかなり実施されていて、多大な実績を上げている。とは言いながら、本来のあるべき協働になっているのかというと、かなり疑問に思えるような協働になっていると言えよう。どうしてかというと、協働というのは対等の立場が前提になるが、実際は行政側が主導権を持っていて、NPO法人側は行政の言いなりになっているからである。つまり、行政の完全な「下請け」のようになっていると言えよう。
業務委託契約において、受託者と委託者は本来対等の立場であるべきだ。しかし、例外はあるものの、殆どの委託業務は行政側の権限が強過ぎて、NPO側では行政の指示通りに動くようになってしまっている。何故、そんなことになっているかというと、お金を出すのが行政側であり、そのお金がないとNPO側で活動出来ないという事情があるからであろう。だから、どんな無理難題を押し付けられても、NOと言えない構図になってしまうのである。いや、そんなことはないと行政側では言うかもしれないが、現実は行政の言いなりになっていると言っても過言ではない。
NPO法人側にも、問題があると思われる。委託業務が受けられるかどうかがNPOの存続にも影響してくるから、行政側の無理難題にも対応せざるを得ない。これは出来かねるとして断るとか、自分達の主張を通すということが出来ないのである。NPO側の事情として、業務執行において行政マンと対等に交渉できる人材がいないのである。行政マンに対して、圧倒的な能力を発揮して、正しいことを正しいと主張できる人材がいないと言えよう。だから、行政マンはNPO法人の役職員を尊敬しないばかりか、どちらかといと内心では見くびっているのである。
こんな現状で、どうして対等な立場で協働が出来ようか。本来のあるべき協働が進んでいないから、社会はいつまで経っても変わらないのである。NPO側では、理念があるから、その理念に沿った社会を実現したいと協働を進めて努力する。一方、行政側ではあくまでも法律や条例に基づいて業務を遂行させたいから、今までの枠からはみ出させたくない。社会変革を目指したいNPO側では、今までのしばりから脱却したい。当然、グレーゾーンが生じるのであるが、行政側では保身のために、それは絶対に認めたくないのである。
このような態度を行政側が取るのは、とんでもないNPO法人が過去に存在していたからでもある。きちんと委託業務を実行しないばかりか、いい加減な経理処理するとか不正な支出をしてしまったという歴史があるからだ。このようなコンプライアンスを無視するようなNPO法人があったから、行政側としては神経質になり、グレーゾーンを認めたくないのであろう。会計検査院に指摘されないようにと、会計処理だけでなく業務実行についても、決められたことしか認めたくないし、余計なことをして欲しくないのである。
行政とNPOとの協働は、業務執行をなるべくNPO側に任せるというのが基本になるし、しかも行政側としては、業務執行がスムーズに行くように、各種関係機関への根回し等のサポートに徹するのが必要である。しかも、NPO法人の良い処を引き出せるように、アドバイスしたり何らかのヒントを与えたりすることも行政の役割である。金だけ出して口を出さないというのは、協働とは呼ばない。委託業務の執行について、良好なコミュニケーションを取り合いながら、より良い成果を上げる為にお互いが最大限の努力をするのが、本来の協働であろう。
NPOは固定観念や既成概念にとらわれず、大胆な発想と柔軟な思考を駆使して、行政では思いもつかないようなアプローチをすると共に、結果を怖れない大胆なチャレンジをすることが求められる。行政はなるべくブレーキをかけることなく、それをそっと見守って欲しいものである。法律や条例に違反する行為でなければ、業務の執行を縛ることはなるべく避けてほしいものである。そうすれば、大きな協働の成果が生まれるに違いない。そして出来得るならば、協働としての委託事業が終わっても、NP0が自力で継続していけるようなビジネスモデルとして確立してほしい。それが、本来協働の目指すところであろう。