健康診断を受けると、必ずと言っていいほどコレステロールが基準値を超えているという結果が届く。さらに追い討ちをかけるように、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールの値が基準値の範囲をオーバーしているという検診結果が記載されている。そして、要医療の結果を持参して医療機関を受診するようにとの、きついお達しが同封されているのである。こんな厳しい基準値を採用しているのは日本だけで、どうみたっておかしいと思うのは私だけではあるまい。WHOも、こんな高い基準値を勧めてはいない。しかしながら、日本動脈硬化学界の基準値が多くの医療機関では採用されており、こうして大量の検診結果異常者が作られてしまっているのである。当然、医療機関を受診すると、コレステロールを下げる薬を処方されて、『高コレステロール血症』または『高脂質血症』という有難い病名を付けられ、立派な病人となるのである。
誰が付けたのであろうか、悪玉コレステロールという名前が一人歩きをしてしまい、いかにもLDLコレステロールは危険な脂質だと世間的には思われている。動脈硬化による心臓血管障害や脳血管障害の張本人みたいな取られ方をしているし、善玉コレステロールであるHDLコレステロールと対比されるに至っては、無用の長物みたいな扱いを受けている。本当に、LDLコレステロールは何の役にも立たない、病気の原因になる諸悪の根源みたいな存在なのだろうか。人間という完全なる生物において、無駄な臓器や骨格・筋肉、または細胞の中で、何の役にも立たないというものがあるのだろうか。何かの意味や役割があって、そういう細胞が作られたとしか思えないのである。そう思うのが、科学的にみても自然であろう。
以前は、以下のようなことをまことしやかに主張しているドクターがいた。HDLコレステロールが減少してLDLコレステロールが増加すると、セロトニンが不足するから、うつ病になりやすい。だから、LDLコレステロールは動脈硬化だけでなく、うつ病にも関連するので、注意が必要だと強く主張していたのである。現在、この説はまったく科学的根拠がないものであり、根も葉もないデマであるということが解ってきた。逆に、統計調査で明らかになってきたのは、LDLコレステロールとセロトニンには相関関係があって、LDLコレステロールが低い人がセロトニン不足を起こしてうつ状態になりやすいということが判明してきたのである。つまり、LDLコレステロールがセロトニンの欠乏予防に重要な働きをすることが解ってきたのである。
LDLコレステロールは、セロトニンの原料であるトリプトファンを脳に運搬するのに重要な働きをするということが判明している。また、セロトニン受容体が細胞膜へ取り込まれる働きに関係することが解ってきた。セロトニンとLDLコレステロールが密接に関連するということが解明されてきたのである。セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつであり、幸福ホルモンと呼ばれており、これが不足するとうつ状態や慢性疲労症候群に陥ると言われている。また、トリプトファンからセロトニンを生成する際に、重要な働きをするのがインスリンである。このインスリンは、炭水化物から生成される。とすれば、世の中でもてはやされている炭水化物ダイエットは、インスリンの製造をおびやかす危険性があるということである。つまり、LDLコレステロールもセロトニンの生成に必要だし、炭水化物も摂取しなくてはならないということなのだ。偏ったダイエットの危険性が、こういった点からも指摘されている。
最近の医学統計調査によると、LDLコレステロールが低い人よりも高い人のほうが長生きするということが判明している。LDLコレステロールが低い人は、自殺、事故死、癌死をする例が多く、長生きできないというのだ。特に、女性よりも男性のほうがその傾向が強いらしい。おそらく、セロトニン不足による強い不幸感から将来を儚んでしまい、自殺、事故死、病死が多いのではないかと推測されている。総コレステロールだって、多い傾向にあるほうが長生きするという統計結果が出ている。それなのに、どうして医療機関や医学会は総コレステロールやLDLコレステロールが高いと指摘して、画一的にコレステロールを下げる薬を処方したがるのであろうか。実は、ここに日本の医療界の闇が存在するのであるまいか。薬品業界と医学界及び医療界の癒着、そして厚労省のお役人の不勉強さがあいまって、こんな間違いを国民に強いてしまうのである。必要もない無駄な医療費が支出されて、財政破綻を招いている元凶がここにもあるのだ。騙されてはいけない。