陰謀論を信じる人はスキゾタイピー

 陰謀論を信じている人は、少なくない。科学的に検証すれば、デマであることが容易に判明するのだが、まったく聞く耳を持たず、陰謀論に固執する。一度でも陰謀論に嵌まってしまうと、抜け出せなくなる。陰謀論を信じている人は、教養がなくて知能が低い人なのかと思うと、そうではない。逆に、高学歴で教養も高くて、知能も高い人が多い。だから、自分の信念が強いこともあり、陰謀論が正しいと思い込みやすい。ユニオンカレッジのジョシュア・ハート心理学准教授は、陰謀論を信じる人たちが特有のメンタルを持つと分析している。

 それはどのようなメンタリティーかというと、『スキゾタイピー』の気質を持つ傾向が強いとしている。スキゾタイピーというのは、統合失調症の傾向があるということであり、完全な統合失調症ではない。幻覚や幻聴はないものの、妄想や幻想にとらわれてしまうことが多いという。そして、インターネットの操作に長けていて、SNSやネットサーフィンを盛んにするから、そういう偽の情報を信じてしまうらしい。そして、厄介なことに情報発信をすることも多く、陰謀論を信じる人々とのネットワークがあるので、広まりやすい。

 スキゾタイピーのパーソナリティというのは、とても厄介である。前述したように、完全な統合失調症ではなくて、ごく普通に仕事をしているし、殆ど周りの人に気付かれることはない。しかし、生きづらさを抱えているし、独特の価値観を持つことから、特定の人との交友しか上手く行かないことが多い。普通の恋愛や結婚はしにくい傾向があるものの、一時的には上手く行くこともある。しかし、長続きせず破綻するケースも少なくない。婚姻関係は続いたとしても、仮面夫婦を演じている例が多い。

 陰謀論を信じる人たちは、スピ系にのめり込む傾向もある。スキゾタイピーの気質は、物事を表面的にありのままに見るよりも、裏の事情や隠された真実を掘り起こしたがる。不信感が異常に強く、他人を信じないばかりか、親族や家族さえも信じないことが少なくない。トランプ元大統領も不信感が強くて、不正選挙が実施されたとずっと主張している。不正選挙だということを信じた陰謀論者のQアノンが、米国議会を襲撃してしまい、大惨事になったのは記憶に新しい。一旦信じ込まされると、正論に耳を傾けなくなる。

 スキゾタイピーのパーソナリティを持つ人々は、精神疾患ではないので医療機関を訪れることは少ない。医学的な治療を受けることもないが、このスキゾタイピーの気質を改善するのは、極めて困難である。イスキアのクライアントにも、このスキゾタイピーの気質を持った人が何人かいたが、そのサポートは困難を極めた。なにしろ、不信感があまりにも強いので、信頼を得て心を開くことがないからである。独特の考え方をしているので、自説を曲げることがなく、一旦信じた理論を手放すことが出来ないのである。

 それでは、このスキゾタイピーの気質を何故持ってしまうのかというと、それは不安型の愛着スタイルを抱えているからだと思われる。HSP(神経学的過敏症)や弱いASD(自閉症スペクトラム症)の傾向もあることが多い。それ故に、陰謀論に嵌まってしまった人が、自分だけの努力だけで抜け出すことは難しい。カウンセリングやセラピーだけで陰謀論を乗り越えることは困難である。まずは、陰謀論を否定するだけでなく、陰謀論を信じる人の気持ちに寄り添うことが肝心である。例え間違っている考え方にも、まずは共感するのである。

 けっして否定することなく傾聴し、共感し続けて行けばいつかは信頼を寄せてくれる。人を信じることが出来るようになると、自然と耳を貸すようになるし、もしかして間違っているかもしれないと自らの過ちに気付き始める。そして、この間違っているドミナントストーリーに気付くと、この誤りの物語を潔く捨てることが出来るのである。音楽療法やボディーケアーを併用するとより効果が高い。そして、新たな正しい物語である『オルタナティブストーリー』を紡ぎ出せて、陰謀論を卒業できると思われる。このようなナラティブアプローチの効果が高い。陰謀論を捨てることが出来れば、生きづらさや不安からも解放されることだろう。

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