依存させる子育ては駄目なのか

 子どもを育てる際にどの親も願うのは、自立した子どもに育ってほしいということだろう。それは、経済的に自立できる大人になるということであるが、それ以上に願うのは、親も含めて誰にも依存しない生き方をしてほしいという意味である。誰にも依存せず、しっかりと自分の足で大地に立ち、主体性を持って自主独立の道を歩むことを、親は心から願っている。そのために、親たちは我が子が甘えようとしても甘えさせず、依存をさせないようにと自分でやりなさいと突き放すことが多い。依存性を持たないようにという親心である。

 確かに、子どもに依存性を持たせないようにすることは必要である。小さい頃から依存させないような子育てをしたいと思うのは、親にしてみたら当然であろう。しかし、あまりにも小さい頃から、自立させようとして我が子に厳しく接するのは、逆効果になってしまうことを知らない親が多い。特に、三歳になる頃までは、依存させて構わないのである。三子の魂百までもという諺があるが、三歳になるまでが子育てでは大切なのは言うまでもない。三歳まではどんなに甘えさせても、過保護であっても良いのである。

 逆に、三歳の頃までに過保護にしなくて、甘えさせることなく、依存させずに育てると、自立できなくなってしまうのである。そんな馬鹿なことがあるかと思うかもしれないが、幼子とはそういうものなのである。乳幼児期の子どもには、まずはたっぷりと母性愛を注ぐことが肝心なのである。無条件の愛である母性愛を注ぎ続けて、『あるがままにまるごと愛する』ことが必要だ。あまりにも小さい頃(3歳未満)に、時に親から厳しくされて、ある時は突き放されて、自分は嫌われているんじゃないかと不安感を持つと、自立できなくなる。

 子どもは、『親にどんなに甘えてもいいんだ、自分はどんなことがあっても守られているんだ、いかなることがあっても自分は見離されることがないんだ』という安心感を持つことが必要なのである。その為には、いかなる時もどんなことが起きようとも、親は我が子を見捨てることはないのだと、常に言い続けることが必要だし、安心させる行動が求められるのだ。だからこそ、乳幼児期まではどんなに過保護でもいいし、甘えさせていいのである。中途半端な過保護や依存は逆効果になる。一貫して、依存させていいのだ。

 子どもを十分に甘えさせ、依存させ続けて3歳に到達すると、子どもは不安感や恐怖感がなくなる。子どもに絶対的な自己肯定感が確立されるのである。そうすると、ひとりでに自立心が芽生える。このように絶対的な自己肯定感が確立されれば、どんなに厳しく辛い境遇も受け入れ乗り越えられるし、困難を極めるチャレンジにも挑める。あるがままにまるごと愛され続けてから、条件付きの愛である父性愛(しつけ)をされるなら、自立できる。自我を乗り越えて自己を統合できる。真の自立が実現するだけでなく、自己を確立できるのだ。

 三歳頃までに、あるがままにまるごと愛され続けると、オキシトシン・ホルモンが十分に分泌される。オキシトシン・ホルモンは、幸福ホルモンとか愛情ホルモン、または安心ホルモンとも呼ばれる、生きる上で大切なホルモンである。母性愛が注がれず、このホルモンが不足すると、いつも不安で恐怖感を持ち続けるし、常に愛情に飢えているので、強烈な生きづらさを抱えることになる。HSP(ハイリーセンシティブパーソン)と呼ばれる、神経学的過敏と心理社会学的過敏になってしまう。そして、深刻な愛着障害を抱えることになる。

 愛着障害を抱えると、精神的な自立が出来ないばかりか、不安や恐怖感がいつも心を支配する。睡眠障害を抱えることも多いし、メンタル疾患にもなりやすい。深刻な摂食障害を起こしたり、パニック障害で苦しんだり、PTSDで長い期間に渡り悩んだりする。それも、三歳頃までに自立させたいと、甘えさせずに依存させずに、過介入や過干渉を繰り返したせいである。幼児期にたっぷりと依存させることは必要なのである。小さい頃には我が子を過保護と思われるほど愛し続けることが必要だ。そうすれば、成長すると共にしっかりと自立できるし、自己組織化もするし、幸福な人生を送れるのである。

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