15歳少女は何故刺傷事件を起こしたのか

 東京渋谷で15歳少女が見知らぬ親子を刃物で刺したという事件には、驚いた方も多かったと思われる。逮捕者が15歳というまだ幼い中学生であり、しかも少女だったという点で、今までにない衝撃を世間に与えたのではないだろうか。ましてや、彼女が本当は自分のお母さんと弟を殺したかったものの、その勇気がなくて、トレーニングとして他人を刺してしまったという供述をしているのは驚きである。どこの中学校かというのは、本人が特定されてしまう危険から伏せられているが、不登校だったとも伝えられている。

 このような少年事件が起きると、マスコミは内情を知りたがるし、その本当の動機を暴きたくなる。不思議なもので、マスコミの記者とは言え、自分とその子どもとは違った人物だと思いたいという気持ちなのか、普通の人とはいかに違った特別な子どもだったと決めつける傾向にある。だから、インタビューしていてもいかに変わった人物だったかということを印象付けたい質問をしたがる。答える側でも、同じように普通の子どもとは違っていたとのレッテルを張りたがるのである。それ故に、実像とはまったく違う人格の人間に創り上げられるのだ。

 マスコミだけが悪い訳ではないが、凶悪事件を起こす少年少女は特別な存在だったとすることで、政府関係者も、そして学校関係者も自分たちに責任はなかったのだと思いたがるのかも知れない。勿論、それは不登校やひきこもりの子どもたちにも、同じような分析をしたがる傾向にある。しかし、同じ人間であるし、その本質はそんなに変わらないのである。いろんな凶悪事件の犯人をプロファイリングすると、一般人とそんなに違っていなくて、ただ育てられ方や育児環境が少し違っていただけだということである。

 つまり、凶悪事件を起こすような犯人と普通の人間とは、共通する部分は多くあるが、少しだけ違っているだけなのだということを認識すべきであろう。だからこそ、育てられ方や親の関わり方が大切であり、ほんのちょっとした愛情の掛け違いによって、子どもの人生は大きく変わってしまうのである。おそらく、今回の渋谷親子刺傷事件を起こした15歳の女の子も、ごく普通のおとなしい女子生徒であり、こんなだいそれた大事件を起こすと誰が想像したであろう。家庭教育や学校教育が根本的に間違っているから、今回の事件は起きたのだ。

 まだまだ15歳少女のプロフィールは明らかになっていないが、警察関係者がマスコミに少しずつ供述内容を伝え始めているので、その証言に基づいて考察してみよう。まずは、少女が母親と弟を殺したかったと言っている点から考えると、家族を憎んでいたということが解る。また、刺してしまった人が母親に似ていたという供述からも、余程の恨みが母親に対してあったのだろう。弟も殺したかったというのは、母親は弟だけを可愛がったのかもしれないし、弟と仲が悪かったのかもしれない。家族関係が最悪だったと思われる。

 また、凶悪犯罪を起こせば死刑になるだろうと言っているらしく、死刑にしてほしかったのでこの事件を起こしたとも供述しているとのこと。これらの供述から言えるのは、親との愛着に相当な問題があったというのは間違いない。親との愛着がしっかりと形成されていれば、親が安全基地となって子どもは安心して親に頼れる。いかなる時と場合でも、親が守ってくれるという信頼と安心があれば、けっして不登校にはならない。何故、殺したいくらいに親を憎んでいたかというと、親がまるごとあるがままに愛してくれなかったからだ。

 愛と憎しみというのは、裏表の関係にある。愛してほしいのに、愛されないと、その愛は憎しみに変化する。愛されたいのに愛されていないという思いが強ければ強いほど、憎しみは強大になる。叶えられない愛をずっと求め続けていたのであろう。その思いを親が気付いてくれなかったのではなかろうか。もしかすると、親は15歳の娘に、たくさん愛情を注いでいたのかもしれない。しかし、その愛は母性愛のような無条件の愛ではなく、過干渉や過介入の父性愛のようなものだったかもしれない。その愛の掛け違いによって、深刻な愛着障害を起こしてしまったのであろう。やったことは許せないが、育った環境が実に気の毒だったと思われる。

※15歳の少女がしたことは許せませんし、その罪を粛々と償わなければなりませんが、この女子生徒にすべての責任がある訳ではないと思われます。しかし、その親にすべての責任がある訳でもないのです。彼女の親を責めないでほしいのです。何故かというと、彼女の親も、その親から過干渉と過介入の育児をされて育ったから、同じように育ててしまったからです。そして、その親も同じように育てられたと推測されます。愛着障害は、世代間連鎖するのです。だからこそ、どこかの世代でその間違いに気付いて、愛着障害の連鎖を断ち切ってほしいのです。

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