抜け出すのが難しいオーバードーズ

 オーバードーズで昏睡に陥った女性を放置して死に至らしめたとして、医師たち男性3人が逮捕されたというショックなニュースが報道された。市販薬の咳止めを多量に飲むと、ハイな気分を味わえると、SNSで知り合って共同で使用していたらしい。市販薬に限らず、処方された睡眠剤や咳止め薬をオーバードーズしてしまうケースも少なくない。薬物依存の一種と言える、このような危険な行為は身体を徐々に蝕んでしまうだけでなく、精神をも破滅させてしまう。また、オーバードーズによりショック死してしまうケースも多い。

 そんな危険なオーバードーズを何故止められないのだろうか。それは、薬物にすっかり依存しているからである。薬物の過剰使用をしている時に感じる快感やハイな気分を一度でも味わってしまうと、抜け出せなくなってしまうのであろう。薬物の過剰飲用というのは、昔から存在していたが、このオーバードーズという言い方が軽く感じてしまい、ついつい習慣化してしまうのかもしれない。命の危険が伴うオーバードーズに陥ってしまう原因、そしてその状態から抜け出そうとしても抜け出せないのはどうしてなのであろうか。

 オーバードーズは薬物依存であると前述したが、まさしく深刻な依存症に陥っているのは間違いない。快楽や麻痺をもたらす脳内ホルモン、または脳内ホルモンと同じような薬理効果を起こす物質が放出されて、一時的な現実逃避ができるのであろう。それだけ、強い生きづらさや生き苦しさに追い込まれているのではなかろうか。薬物依存を起こしてしまう青少年は、押しなべて強烈な生きづらさを抱えている。その生きづらさは、不安感や恐怖感に起因しているし、強烈な自己否定感と強いHSPを持っていることが多い。

 自己否定感が強いというのは、子育ての間違いによる悪影響と言っても過言ではない。学校教育や社員教育の影響が強いと思っている人が多いかもしれないが、三つ子の魂百までもと言われているように、三歳の頃までの子育てによって自己肯定感を持つかどうかが決まる。乳幼児期まで、まるごとあるがままに愛されて育てられると、絶対的な自己肯定感が作られる。また、無条件の愛である母性愛をたっぷりと注がれることで、オキシトシンホルモンが分泌されるので、愛着障害にはならないし、HSPにもならない。

 親から支配され制御され育てられ、愛着障害を根底に抱えるとHSPになり、不安や恐怖感をいつも感じることになる。それ故に強烈な生きづらさを抱えてしまうし、何かに依存しないと生きていけなくなる。オキシトシンホルモンが不足している状況から、愛情不足と不安をいつも感じることになる。それ故に、薬物依存を起こしやすくなるのである。快楽や癒しを求めるあまりに、それを手軽に感じさせてくれる薬物に依存してしまい、もっと快楽や安心、またはやすらぎを求めて薬物のオーバードーズを起こしてしまうに違いない。

 薬物のオーバードーズを医学的に治療することは、非常に難しい。入院させて医学的に管理した状況に置けば、オーバードーズを抑えることは可能だ。しかし、退院すると再びオーバードーズを起こすことが多い。オーバードーズによって入退院を何度も繰り返すことは、想像以上に多い。それだけオーバードーズに対して医療は無力であるとも言える。それでは、薬物依存によるオーバードーズは、絶対に治らないのかというとそうではない。適切な愛着アプローチとオープンダイアローグ療法によって劇的に治るケースが少なくない。

 しかし、残念ながらこの愛着アプローチとオープンダイアローグ療法でケアしてくれる医療機関は殆ど存在しない。それだけ難しい療法であるとも言えよう。適切な愛着アプローチによって愛着障害を癒せるカウンセラーやセラピストは、あまり存在しない。ましてや、オープンダイアローグ療法ができる医療機関は非常に少ない。それだけ、難しいし時間がかかる。ましてや、オーバードーズを治療してくれる医療機関が少ないのである。精神科の医療機関では、オーバードーズの治療に対して消極的になることが多いからである。オーバードーズの真の原因を知ろうともしないのだから、当然であろう。

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