男性が怖くて苦手な女性

 男性が怖くて話をするのも苦手だと言う女性の方が存在する。当然、結婚することも出来ないし、お付き合いさえも避けたがる。職場でも、男性の同僚と話すことも苦手だし、男性の上司とは目を合わせることも出来ないケースもある。男性の野太い声を聞くと、怖くて仕方ないし、怒鳴る声が聞こえると震えが止まらなくなる女性もいる。学校でも、男性の同級生と話せない子どもがいる。どういう訳か解らなく、男性が苦手で怖いのである。男性恐怖症と言っても差し支えない。原因も解らないから、対処する方法もない。

 重症の方は、精神科医や臨床心理士に診断と治療を受けるケースもある。カウンセリングを受けると、乳幼児期の育てられ方に問題があるのではないかと言われることが多い。父親との良好な関係が形成されなかったことが、男性恐怖症になったのではないかと言われることも少なくない。カウンセラーやセラピストというのは、自分も同じような体験をしていることも多く、そのような分析をしてしまうことが多いようである。治療者自身が父親を憎んでいることから、父親が原因だと導くのではないだろうか。

 本当に父親が原因で男性恐怖症になってしまったのであろうか。厳格な父親、いつも怒鳴っていた父親、子どもを所有物のように扱っていた父親、自分を支配してコントロールしようとしていた父親、そんな父親は世の中にたくさん存在する。それだったら、もっと多くの女性が男性恐怖症になる筈だ。怖い父親がすべての原因だとするのには、無理があるように思われる。確かに、あまりにも厳格で暴力的な父親が、男性恐怖症になるひとつの要因だとしても、それだけが原因だと言うのは言い過ぎのような気がする。

 勿論、男性恐怖症になる原因が他にもある。幼児期に大人から性的ないたずらや暴力を受けたことが、深刻なトラウマになってしまって男性恐怖症になることもある。少女期に同様の悲惨な体験をしてもなることがある。大人になってレイプなどの恐怖体験によって男性恐怖症になることも考えられる。しかし、そのような体験をしないのにも関わらず男性恐怖症になるのは、何故であろうか。酷い父親であったから男性恐怖症になったとは言い切れないように思われる。そこに特有のバックグラウンドがあったように思うのである。

 パニック障害やPTSDになりやすい人となりにくい人がいる。同じような恐怖体験をしても、心の傷を残してしまう人と残さない人がいる。または、得体の知れない不安や恐怖に出会ったとしても、まったく平気な人もいればそれがトラウマになってしまう人がいる。その違いは何によるのであろうか。恐怖体験は単なるきっかけであり、本当の原因は別な所にあると見るのが正しいと思われる。必ず男性恐怖症になってしまうと見られる体験がひとつある。それは両親が不仲で、いつも喧嘩をしたり母親が暴力を受け続けたりするのを見ていたという体験である。

 自分が辛い思いや悲しい思いをさせられるとか恐怖体験をするのも、トラウマとなってしまい後々まで自分を苦しめる。それ以上に大きなトラウマとしてずっと苦しめるのは、実は自分自身が体験することではなくて、自分が大切にする人や大好きな人が悲惨な目に遭った体験なのである。つまり、愛する母親が父親である夫から暴言や暴力を受けている体験がトラウマになりやすいということだ。自分自身が虐めや暴力を受けるよりも、同級生が目の前で虐めや不適切指導を受けた記憶のほうがトラウマになりやすいのである。

 家庭内において、母親や兄弟姉妹が父親から虐めや暴力を受けていて、助けてあげられなかったという体験のほうがより大きなトラウマになりやすいと言える。そして、男性が怖い存在として脳に刻み込まれているのである。さらに、母親が夫からまるごとありのままに愛されていなかった故に、我が子に豊かな母性愛を注げることが出来なかったことで、自己肯定感が育たなかったことが大きな影響を与える。つまり、自分を守ってくれる安全基地がないまま大人になると、男性恐怖症になるのである。強すぎる不安や恐怖感を持ち続けることになる。男性恐怖症の本当の原因は、愛着障害にあると言ってもよい。

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