パニック障害の本当の原因

 何ならかのきっかけによってパニック発作が起きてしまい、その発作が何度か繰り返すことにより、また起きてしまうのではないかという不安からそのきっかけがなくてもパニック発作が容易に起きてしまう症状をパニック障害という。動悸や心拍数の増加、発汗、息切れや息苦しさ、吐き気、めまい、しびれやうずきなどの知覚異常、コントロールを失う恐怖、死ぬことへの恐怖などの深刻で苦しい症状が起きる。不安から起きる一過性の病気として過換気症候群があるが、この症状からパニック障害に移行する例も少なくない。

 パニック障害は珍しい病気ではない。100人に1人はパニック障害になると言われている。そして、女性は男性の2倍もの確率でパニック障害になると言われている。ましてや、この不安だらけの現代では、益々パニック障害になる人が増えつつある。したがって、女性では50人に1人か30人に1人程度の割合で、パニック障害になっているのではなかろうか。由々しき大問題である。治療は薬物療法と認知行動療法を併用して行なうことが多いが、治療効果はあまり上がらない。難治性のパニック障害であることが多い。

 パニック障害の原因はまだ完全には解明されておらず、少しずつ解明されつつあるものの、まだまだ不明なことが多いらしい。危険な状態に追い込まれた際に、自分の命を守る体の防衛反応であり、自律神経の異常か暴走によるものではないかと考えている専門家が多い。とは言いながら、それがどんなメカニズムやシステム異常によって起きるのかは解明されていない。しかし、これはポリヴェーガル理論によって説明できるのである。ポリヴェーガル理論とは、最新の自律神経に関する学説であり、多重迷走神経理論と訳される。

 今までは、自律神経は交感神経と副交感神経の2つによって調整されていると考えられていた。ところが、副交感神経の殆どは迷走神経であるが、複数の迷走神経系統が存在することが解ったのである。通常リラックスした時や休息時に働く腹側迷走神経(従来考えられていた副交感神経)と、命の危険にさらされた時に働く背側迷走神経があることが判明したのである。命が危険だと感じた緊急事態に、自分の身体と精神を守る防衛反応として背側迷走神経が働くのである。これがパニック発作の起きる主原因であると考えられる。

 それでは何故そんな迷惑な症状を起こしてしまう背側迷走神経が働いてしまうのかというと、命を守るにはそれしか方法がないのであろう。肉食動物に襲われて命が危険な状態に追い込まれた小動物は、背側迷走神経が働いて『死んだように動かなくなる』のだ。死んだ動物を食べない肉食動物から自分の身を守る最終手段だ。『狸寝入り』というのも、この背側迷走神経によるものであり、狸は本当に失神状態になるのである。人間も同じように、自分の身体や精神が破綻することを防ぐ為に、背側迷走神経が働き、パニック発作が起きると考えられる。

 小動物は背側迷走神経が一旦働いて失神したとしても、危険が去ると何事もなかったように復活することが出来る。ところが、人間は一度発作が起きるとなかなか完全な復活ができないし、何度も発作を繰り返すことが多い。何故かと言うと、人間は不安や恐怖心が多いからではないかと思われる。特に女性の方が、不安感が大きいことから、パニック障害が起きやすいのではなかろうか。それでは、誰にでもパニック障害が起きるのかと言うとそうではなく、特定の心理的傾向を持った人がパニック障害になりやすいと言われている。

 それはどういう心理的傾向かというと、不安や恐怖感が普段から大きい人であり、神経が過敏な人であろう。それは、絶対的な自己肯定感が確立していない人であり、いわゆる自己否定感情が大きい人である。さらには、神経学的過敏症と心理社会学的過敏症である、HSPの症状がある人である。つまりは、こういう人というのは傷ついた愛着や不安定な愛着を抱えている人であり、愛着障害と言っても過言ではないだろう。愛着障害を抱えていることで、パニック障害を起こすと考えられる。パニック障害を乗り越えるには、愛着障害を癒すしかないということも言える。

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