鬼滅の刃が人気なのはシステム思考だから

 鬼滅の刃の映画興行収入額が史上最高を記録した。コロナ感染症という特殊な事情があったとしても、アニメ映画にこれほどの圧倒的な人気を博したのは不思議である。それも子どもや若者のアニメファンだけでなく、大人や高齢者にも絶大な支持を受けた。多くの老若男女が鬼滅の刃に魅せられたのである。どうして鬼滅の刃が人気になったのであろうか。いろんな理由をマスコミや評論家は上げている。しかし、本当の理由はそれだけでないように思われる。鬼滅の刃が人気を博したのは、システム思考を描いているからではないだろうか。

 

 鬼滅の刃を見た人は解るだろうが、この物語は人間としての正しい生き方を説いている。思想・哲学的であるし、見る人に高い価値観を示している。こんなにも鋭く人生哲学を描いたアニメは他にないだろう。しかも、それが押し付け的でなく、見る人すべてが素直にその哲学を受け要れてしまうような描き方をしている。この鬼滅の刃に終始流れている思想・哲学は、関係性重視と全体最適である。人と人との絆を何よりも大切にしているし、個人最適ではなくて、全体に対する貢献と最適化を描く。つまり、システム思考なのである。

 

 システム思考というのは、この宇宙における万物の真理に基づく価値観である。私たちがこの世界に生きている意味であり、生きる目的でもある。我々人間も含めたすべての生きとし生けるものだけでなく、物体が物体として存在する理由でもある。鬼滅の刃は、それを鬼退治、そして家族愛と人類愛の『ものがたり』として表現している。私たちの住む宇宙はシステムそのものであり、我々の住む地球そのものがシステムである。あらゆる植物や生物もシステムであるし、人間もそして鉱物さえもシステムとして存在している。

 

 人間が関係するすべての組織はシステムである。家族、企業、団体、地域、国家、地球、宇宙すべてがひとつのシステムである。そして、人体もまたひとつの完全なネットワークシステムだということが、医学的・生物学的にも判明している。人体を組成する37兆2000億個の細胞は、それぞれが自己組織化する働きがある。そして、オートポイエーシス(自己産生)の能力を持つ。誰からも指示命令を受けず、ひとりでに細胞分裂をするし、お互いが関係性を持ち、全体最適を目指す。過不足なく、少しも誤りなく人体を組成し活動する。

 

 ところが、この人間の完全無欠な人体と精神は、時折システムエラーを起こす。あまりにも外部から介入され過ぎたり強く制御され続けたりすると、システムエラーを起こして健康を損なう。メンタルが障害を起こすのも同じ理由からだ。鬼滅の刃というものがたりでは、人間の社会システムが関係性を損ない、全体最適でなく部分最適を目指してしまい、自らの自己組織化やオートポイエーシスの機能を失ってしまった状況を映し出す。鬼どもが人間を襲って殺したり操ったりする恐怖の世界である。

 

 鬼が生き永らえて強くなるために人を喰らい、さらに人間を襲う社会が現われるのはシステムエラーを起こしていると言えよう。人間が鬼になってしまうのも、家族というシステムが崩壊しているからであろう。鬼滅の刃に出てくる鬼たちは、家族から愛されず見離されて絶望し、絆や信頼する関係性を見失っている。一方、鬼殺隊の柱たちは自分の犠牲を厭わずに、愛する者を守るために勇気を振り絞って鬼と闘う。その決心はけっしてぶれることがない。炭次郎も命を賭けて全体最適のために死闘を繰り広げる。自分の私利私欲や損得のために、人間を殺していく個別最適の鬼とは根本的に違うのである。

 

 鬼殺隊の柱たちの絆は強いし、その関係性が損なうことはない。炭次郎、善逸、猪之助の友情は、何よりも固く結ばれていて、その信頼関係は揺らがない。柱たちや炭次郎たちの心にはシステム思考の価値観が強く根付いているからに違いない。炎柱煉獄杏寿郎は、自分の命を投げうってまで、無限列車から人々を救い出した。これはまさしくシステム思考の哲学に支えられた行動である。システム思考とは、人間が正しく生きるための哲学である。多くの人々は、自分たちが本来持っているシステム思考の価値観を、鬼滅の刃を鑑賞することによって目覚めさせるのであろう。だからこそ、鬼滅の刃がこれだけ熱狂的に支持されて人気を博しているに違いない。

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