引きこもりを乗り越える

引きこもりは若者だけかと思っていた人も多いが、実は中高年の引きこもりのほうが多いことが判明したという。内閣府が引きこもりの調査をしていたが、それは15歳~39歳の若者が対象者だった。しかし、中高年者の引きこもりも多いのではないかという指摘があり、40歳~64歳の中高年者の引きこもりを調査したところ、なんと61万人もいると推計されたという。15歳~39歳の引きこもり推計数が54万人だから、それよりも多いということになる。若い引きこもりが高年齢化したとも言えるが、困った事態になっている。

引きこもりになるのは、圧倒的に男性が多いらしい。7割以上が男性だというから、驚きである。中高年の引きこもり男性は、老齢の母親と二人暮らしをしているケースが多いと言われる。中高年の引きこもりは、親と同居して養ってもらっている場合が多いが、親が他界したらどうするのであろうか。年金の受給権を持たない引きこもりは、やがて生活保護の受給者になることだろう。引きこもりの多くが5年以上に渡り長期化していることが多いことから、一旦引きこもりになると社会復帰は極めて難しいと思われる。

どうして社会復帰が難しいかというと、引きこもりを自分の力だけで乗り越えるのが難しいからである。かと言って、親などの家族がどんなに支援したり働きかけたりしても引きこもりを乗り越えることが困難である。行政も引きこもりを解決する働きかけを積極的にすることが出来ないし、メンタルを病んでいなければ医療の対象になることはない。つまり、引きこもりを解決する手立てがないのだ。だから、引きこもりが長期化するのである。社会復帰の支援をしている民間業者があるが、利用料が高額になるので、高額所得者しか利用することが出来ない。

引きこもりやニートを乗り越えるには、そもそも引きこもりやニートになった根本的な原因を探り出し、その原因を解決しなければならない。引きこもりになる原因は、彼らにとってあまりにも生きづらい社会だからであるのは間違いない。彼らにとっては学校や職場があまりにも冷たくて厳し過ぎるので、適応しにくいのであろう。しかしながら、生きづらさを抱えているのは引きこもりになっている人だけではない。生きづらさを抱えて居ながらも、社会に適応できている人もいる。とすれば、引きこもりになる人とならない人の違いはどこにあるのだろうか。

引きこもりになる人は、学校や職場で嫌なことが続いたり、失敗や挫折を繰り返したりした経験を持つ。そして、そうした体験から不安や恐怖感が極限まで高まり、また同じことが起きるのではないかと思い込み、外で活動することに臆病になり、引きこもりになるのではないかと想像されている。一方、引きこもりにならない人は、たとえ嫌なことに遭ったり失敗や挫折をしたりしても、不安や恐怖感でいっぱいになることはない。どこが違うのかと言うと、オキシトシンやセロトニンなどの脳内ホルモンの分泌異常が起きているのではないかとみられている。

そのような脳内ホルモンの分泌異常が起きるのかというと、乳幼児期から思春期にかけての養育環境、または育てられ方の影響が大きいとみられる。親の育て方が悪かったという訳ではない。あくまでも、親としては子どもの為にと精一杯努力したし、健全に育つようにと懸命に尽くしたのは間違いない。手抜きや育て方のミスがあったという訳ではなくて、あまりにも一生懸命過ぎたせいかもしれない。良い子に育てようという親の思いが強過ぎてしまい、介入し過ぎたというか干渉し過ぎた為に、人体システムの異常が起きて、子どもの自己組織化が阻害されたと推測される。

したがって、引きこもりを解決するには、子どもだけのカウンセリングやセラピーだけでは難しいと思われる。子とその親の両方との家族カウンセリングが、引きこもりを乗り越えるには必要だと考える。それもミラノ型の家族カウンセリングを利用したオープンダイアローグ療法が望ましい。親に対しても、当事者の子どもに対しても、けっして批判することなく否定もせずに、ただ優しく質問を繰り返すセラピーである。そして子どもが自分の幼児期や思春期に言えなかった親への思いを吐露し、その辛くて苦しかった気持ちを親が受け止めて共感する作業を通して、傷付いた心を癒していく。誰も傷つけないで、家族の関係性を再構築していくオープンダイアローグこそ、引きこもりを乗り越える為に必要なプロセスであると言えよう。

※「イスキアの郷しらかわ」では、オープンダイアローグ療法を駆使した引きこもり解決プログラムを実施しています。老齢の親だからといって、このオープンダイアローグが機能しない訳ではありません。いくつになっても親は親です。親子が共に変わることで、引きこもりやニートが解決します。不登校もまったく同じです。まずは、イスキアの郷しらかわに問い合わせフォームからご相談ください。

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