仕事よりも育児を優先する父親

子どもを取るか、それとも仕事を取るかという二者択一を迫られたとしたら、親としてどちらを選ぶだろうか。母親ならば、よほどの事情がなければ殆どが仕事を犠牲にして、子どもを優先する選択をするに違いない。それだけ子どもに対する思いが強いし、母性愛というのは何よりも子どもを優先するものだ。ところが、父親というのはちょっと違うようだ。父親は一家の収入を支えるケースが多いし、仕事に対する責任を感じる傾向が強い。ましてや、男というのは仕事によってだけ自己実現するのだと、おおいなる勘違いしているからだ。

仕事に専念するあまり、妻にだけ子育てを任せてしまい、育児に対して積極的になれない父親は多い。そんな父親なら、育児のために仕事を犠牲にするなんて考えられないだろう。例えば、育児のために残業がない勤務部署・勤務体制・職制に自ら変更してもらうケースは殆どないであろう。ましてや、子育てを優先して転職するなんてことはないに違いない。子育と仕事のどちらかを優先するかという究極の選択をどうするかなんて、乱暴なことを言うつもりはないが、父親が仕事を優先するのは圧倒的に多い。

子育てを最優先にして仕事を犠牲にする父親なんていない筈だと思っている人は多い。しかし、世の中には仕事よりも子育てを大事にする行動をとる父親も皆無ではない。私自身も、実はそのひとりだ。大学卒業後から地元の農協が経営する医療機関に勤務していた。県内に6病院を設置経営していたが、経営の重要な部分を担っているのは事務職員である。各病院の院長人事さえも、事務職員が決めているのだから、実質的なトップ管理者と言えよう。県内でも有数の安定企業だから、人気があり待遇だって悪くなかった。

しかし、県内の各地域に6病院は点在していたし、本部は県庁所在地の福島市にあった。幹部候補の事務職員は3~4年に一度転勤をするのが常だった。当然、自分も15年間に転勤させられて4つの病院を経験した。子どもが小さいし、妻ひとりで育児するのも負担になるから、一緒に転勤転居した。子どもは転居する度に転校を強いられた。長男は、最期の転校の際に、「僕はもう2度と転校しないからね」と宣言した。せっかく出来た友達と別れるのが辛かったし、新しい学校や環境に慣れるのが大変だったと思われる。この言葉を聞いて、決心した。次の転勤からは、単身赴任をするしかないと。

ところが、単身赴任をするには問題があった。看護師をしている妻も仕事を続けたい希望があり、夜勤や休日出勤がある今の職場で、一人で子育てしながら仕事を続けるにはハードルが高過ぎる。ましてや、2歳、7歳、11歳の手のかかる3人の男の子をひとりで面倒見るのは不可能に近い。妻が仕事を辞めるという選択肢もあったが、仕事に生きがいを感じている妻に仕事を辞めろというのは酷だった。したがって、転勤のない職場に自分が転職するしか方法がなかったと言えよう。それで、いずれ定住するであろうと求めていた土地に家を建てて、地元の会社に転職することにしたのである。

正直に言うと、子どもの為に仕事を辞めるのは辛かった。ましてや、それまで在職した医療経営の組織では、誰よりも若くして係長になり課長に昇進していた。自分でも言うのもおこがましいが、将来が嘱望されていて、事務職のトップになるだろうと言われていた。それでも、敢えて退職して、転勤がなく残業も少ないビルメンの会社に転職することにした。給料などの待遇面でも低下したし、仕事内容もまったく違っていたから慣れるまで苦労した。でも、家族一緒に暮らせて、子どもたちの笑顔に包まれる生活を選んだことを少しも後悔していない。

それから15年後にもう一度転職した。これもある意味では、子どもの生活を守る為の転職だった。子どもが地元の行政職に就職していて、会社の仕事で大きな迷惑をかける危険があったからだ。子どものせいで親が職を失うのは仕方ないが、親の影響で子どもが職を失うなんて、絶対に許せないことだ。子どもの為だけとは言えないが、2度転職を経験している。子育てほど社会とって貴重で大切なことはない。将来の社会を担う子どもを育てられる喜びほど大きいものはない。単身赴任しなかったからこそ、度々あった子どもの不登校危機やいじめ事件、不適切指導事件にも自分で対処して乗り越えられた。単身赴任していたら、妻や子どもたちにどれほどの苦難困難を与えていたことだろう。お陰で、子どもたち3人は無事に大学を卒業して、行政職と教職に就いている。妻も、看護師を今も続けている。私自身は、家族の為に犠牲を強いられたとは思っていない。子育てによって、自分自身が大きな気付きと学びをさせてもらい、かけがえのない自己成長を遂げられたからだ。そんな素敵なギフトをくれた子どもたちに、おおいに感謝している。

※「イスキアの郷しらかわ」では、不登校、いじめ、教師による不適切指導等子育てに関する悩み・苦しみに対して、実体験を通した助言をしています。問題行動は何故起きるのか、どうしたら乗り越えられるのかを、実例を上げながらアドバイスをしています。問い合わせフォームからご相談ください。

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