日本農業を自然農法で再生する

田舎に行くと、青々と広がる田園風景に心が癒される。しかし、その田園風景であるが、山間のほうに行くと、耕作放棄地が急増していて、雑木林や荒地になってしまっている。由々しき大問題である。空き家になってしまっている農家も多いし、手入れされていない山林も増えている。農業では生計が立てられないと、集落から若者が街に出て生活し、年老いた老夫婦しか住んでいない農家が多いのだ。当然、老齢者だけでは手が回らないから、畑や田んぼは耕作されずに、荒れ放題になっているのである。

農地というのは農産物生産の役割と共に、本来水害を防いだりする効果もあるし、環境保全と国土保全という観点からも、耕作放棄地になるのは好ましくない。したがって、農水省・農政局や県の農林事務所も耕作放棄地対策を立てて、いろいろと苦労しているが、抜本的な改善方法が見つからず苦慮している状況にある。そもそも、農業を志す若者がいない。つまり、農業に対する魅力を感じる若者が少ないのである。何故かというと、苦労する割に収入が少ないし、農業だけで生計を立てるのが難しいからである。そんなこともあり、耕作を放棄した農地は益々増加している。

それでは、こんな農業にしたのは誰なのかというと、殆どの農家はこんなふうに言う。それは、国の農業政策が間違っているからだと。日本の農政は、まったく無策だと言う人もいる。または、工業製品輸出優先策の為の見返りに農産物輸入自由化をして、外国との競争にさらされてしまい、日本農業が壊滅的打撃を受けたと主張する人も多い。または、工業の労働力確保の為にわざと農家を疲弊させ、農村労働者を都会に呼び寄せたとも言う。果たして、本当にそうだろうか。日本の農政における失政が、農業を駄目にしたのであろうか。確かに、そういう側面もあるだろう。しかし、それだけが原因ではあるまい。もっと根源的な何か他の原因があるのではないだろうか。

最近、ユニークな農業が脚光を浴びている。奇跡のりんごと呼ばれる木村氏の自然農法の取り組みや、昔ながらの堆肥等の有機肥料や無農薬で農産物を生産しているケースである。そういう農家は、例外なく『土』を大事にしている。農業生産における労力の殆どを、土作りに注いでいるのが特長である。彼らは、声を大にして言う。化学肥料と農薬が、土を駄目にしてきたし、農業を駄目にして来たのだと。化学肥料と農薬を使わなければ、まともな農業生産は出来ないのだと、農家は思い込まされてしまい、土を駄目にしてきたのである。本来持っている土の生命力を台無しにしてしまったから、逆に化学肥料と農薬が大量に必要になってしまったのであると主張する。

化学肥料メーカーと農薬製造会社の巧妙な宣伝に騙され、その片棒を担がされた農協によって、日本農業が駄目になったと言う人々が増えてきた。農水省を初めとする行政も彼らに巧妙に騙されてしまい、悪乗りしたと見る向きも多いのだ。彼らは決まってこのように言う。化学肥料と農薬を使わなければ、生産量が低下して大変なことになると。日本農業が駄目になるというのである。まったく逆であろう。彼らが日本農業を駄目にしたのではあるまいか。そのことを知った、小数の志ある農家は、昔のようなやり方で農業を立派に復活させている。そして日本農業を立派に再生させた彼らは、こんなことも言っている。土の言い分に耳を傾け、そして野菜や果物の声を聞けと。つまり、土が何を求めていて、農産物が何をしてほしいのか、耳を澄ませば聞こえてくるのだと言うのだ。

だから、彼らは化学肥料や農薬を使わずに、土を健康にして野菜や果物を作っているのである。化学肥料と農薬を使用しないで生産した農産物は、健康である。味も格段に良い。ミネラルが豊富であり、大切な栄養素も高い。だから、子どもたちも野菜嫌いにならない。こういう野菜を食べていると、病気にもなりにくい。アレルギーにもなりにくいと言われている。いいこと尽くめなのである。当然付加価値が高いから、価格も高い。それなのに、今もって化学肥料や農薬に頼っている農家が多いのは、情けないことである。土や野菜の気持ちになりきり、彼らの声を聞けばいい。彼らの叫び声が聞こえてくる筈である。化学肥料や農薬はもう使わないでくれという悲痛な叫びが。

確かに省力化をして、大量生産をする為には農薬・肥料を大量に使用しなければならない。しかし、適量を生産するならば、自然農法でも作物が出来ることが証明されている。発想の転換である。農地が余っているのだから、農家を増やせばよい。そもそも、農業というのは、大量生産には向かないものではないだろうか。今、ふるさと回帰を志向する人々が増えている。退職したら、農ある生活をしたいという方たちが多い。そういう方たちが、自然農法で安全安心な作物を作り、老後の生活をエンジョイしようとしている。そういう作物を利用して、直売所や農家レストランを開いているケースが多い。または、農家民宿を開業している例もある。今、団塊の人たちの自然農法によって、本来の農業が再生しようとしているのである。白河を初めとして福島県には、その為の安価な耕作放棄地が用意されている。

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