正式な傷病名ではないが、最近カサンドラ症候群という気分障害で苦しんでいる妻たちが多く存在する。あまりにも共感性の低い発達障害の夫と暮らす妻が陥るメンタル障害を、カサンドラ症候群と呼んでいる。ASD(アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム)の夫との暮らしにおいて、正常な会話が成り立たず、家族愛で包まれることのない不毛な家庭で、身も心も疲れ切ってしまうという。ほとんど役に立たないASDの夫である故に、家庭の切り盛りを一人でせざるを得ない妻が、カサンドラ症候群で苦しむという図式であろう。
現在サポートさせてもらっている、メンタルを病んでいる女性のクライアント、または不登校やひきこもりの子どもを持つお母さまであるクライアントは、殆どがカサンドラ症候群である。勿論、妻が発達障害というその逆のケースもない訳ではないが、ごく少数である。カサンドラ症候群の妻たちは、自分の夫がASDだと気づいていないケースもある。そういう場合には、何故自分がこんなにも家庭生活で生きづらいのかが解らず、長い期間に渡り苦しみ続けている。そして、子どもがその影響をもろに受けてしまうことが少なくない。
ASDの夫は、職場においてはごく普通に職務をこなすことが出来るケースが多い。しかし、家庭においては、まともな会話が成り立たない。まず、妻の話や子どもの話を聞かない。聞いたとしても、相手の気持ちを理解しようとしない。相手の顔を見ようともしない。自分の興味あることに心を奪われていて、上の空で会話をする。育児や教育の大切なことを話しても、まったく聞こうとしない。なにしろ、傾聴しようという気がないし、共感性がない。まるで、ロボットと会話しているようだと妻たちは嘆く。
一口に自閉症スペクトラム(ASD)と言っても、それこそ症状は様々であるし、重症の方からほんの軽い症状の方もいる。特に問題になるのが、ごく軽い症状のASDの夫と結婚してしまった妻たちである。そのASDの夫は、ごく普通に社会生活を送っている。勿論、一般企業や官公庁で立派に働いている。中には、企業家や経営者であるケースもあるし、ドクターや技術者、または法曹界で働いている人もいる。当然、経済的には一家の大黒柱であることも多いから、経済的依存度も高いので、妻たちは我慢することが多い。
社会的地位も高く、職場で高評価を得ている人も少なくない。どうしても職業や地位で判断する人が多いから、周りの人から「いい人と結婚出来て羨ましい」と言われている。そうすると、家庭内でコミュニケーション上のいろいろな問題があったとしても、夫が悪いのではなくて、自分の努力が足りないせいだと自分を責めてしまうのである。何かおかしいと感じながら、自分が悪いと思い込みがちになる。そうすると、毎日の対話や夫の言動によって、ボディーブローのように痛め続けられ、心身の異常を来してしまうことになる。
ASDの夫と結婚生活を営んで、カサンドラ症候群になった妻たちは、不眠や抑うつ症状に陥ることが多い。パニック障害やPTSDになることも少なくない。摂食障害になる人もいるし、双極性障害や統合失調症の症状を起こす人もいる。心の病気だけでなく、身体の疾患になるケースも多い。例えば、原因不明のしびれや痛みに悩まされることもある。肩こり、首の痛み、腰痛で苦しむ妻も多い。線維筋痛症と診断されることもあるし、心因性疼痛として治療を受ける妻もいる。自己免疫疾患に罹患することもあり、子宮や卵巣の疾病を発症する人もいる。つまり、カサンドラ症候群は、命に関わるような病気も引き起こすのである。
カサンドラ症候群の妻は、不安定な精神状態になったり身体の難病を発症したりする。当然、自分の子どもたちに豊かな愛情を注ぐことが難しくなり、子どもが愛着障害を発症してしまうことが多い。そして、子どもたちは不登校やひきこもりを起こしやすくなる。カサンドラ症候群の母親は、さらに心身を病んでしまうことになる。それでは、ASDの夫と離別しない限り、妻のカサンドラ症候群は治らないのだろうか。そんなことはない。ASDの夫に適切な診断と支援をすれば、症状が軽くなる場合もある。また、妻に親身になって傾聴と共感をしてくれる適切な支援者が現われれば、症状を改善できることもある。
※「イスキアの郷しらかわ」は、カサンドラ症候群の妻を支援しています。あまりに違和感を覚える夫のことで悩んでいて、相談してみたいと思われた方は『問い合わせフォーム』からご相談したいとお申込みください。こちらから、返信をいたします。

