V・E・フランクルのロゴセラピーが人々を救う

 ヴィクトール・E・フランクルという精神医学者&心理学者をご存じであろうか。精神科医としての認知よりも、あの悪名高きアウシュビッツから奇跡の生還を果たして、名著「夜と霧」を著した人物として世間に広く知られている。でも、精神医学者&心理学者としての功績も大きいし、ロゴセラピーという効果の高い心理療法の考案者としても名高い。夜と霧だけでなく、他にも数々の精神医学の専門書も書いていて、その研究成果は多大なものがある。そして、多くの自殺志願者を救ったという功績は、他の精神科医の追随を許さない程大きい。

 どんなに著名な精神医学者であろうとも、実際に臨床での経験や実績がなければ、いくら論理的に正しいと言っても、信頼するにあたらない。いくら科学的な根拠があると力説して、論理的にも正しいと主張したとしても、実績がなければただの空論でしかない。フランクルの提唱したロゴセラピーは、エビデンスに乏しいとか、あまりにも宗教的であり違和感を覚えるというような批判にさらされることが多いが、実際に多くの自殺志願者を救っているという点において、信頼に値する正しい理論だと言える。

 ヴィクトール・E・フランクルは、オーストリアに生まれたユダヤ人である。ヒットラー率いるナチスにとって、ユダヤ人はゲルマン民族の人々から搾取をしている守銭奴という敵である。一人残らず根絶やしにしなければならないと、ドイツやオーストリアに住むユダヤ人を違法措置で捕虜にした。ユダヤ人はアウシュビッツに代表される強制捕虜収容所に連れて行き、ガス室に送り殺戮した。フランクルもその一人であった。彼の両親、妻、兄もまた強制捕虜収容所に送られ、命を落とした。フランクル一人だけが奇跡的に生き残った。

 フランクルは、収容されながら何度も死と隣り合わせの体験をするが、奇跡的に命を長らえることが出来る経験をする。助かった要因について、奇跡の生還を遂げた後に述懐している。ひとつは、どんなに危機的状況に遭おうとしても、けっして自分を見失わず精神的な安寧を保ち続けられたせいだと言っている。そして、どんな目に遭おうとも生き延びて、収容されながら書き留めた原稿を世に発表しなければならないという使命を持っていたからだという。つまり生き延びる意味と目的を持ち続けたからこそ、助かったと言うのである。

 この生きる意味と目的を持つことの大切さを認識したことが、その後のロゴセラピーという理論の根拠になったと言えよう。自らが実証したとも言えるし、その後も自殺志願者を救うのに役立ったと言えよう。ロゴセラピーというのは、生きる意味や目的を持つことで、苦難や困難にも打ち勝ってストレスにも負けない心を持つことになり、メンタル疾患を回復させる療法である。勿論、それだけでメンタル疾患が完全治癒をする訳ではないが、回復へのプロセスに欠かせないのが正しい思想哲学であるのは間違いない。

 今まで、多くのメンタルを病んで不登校やひきこもりになってしまった方々をサポートしてきたが、その人たちのすべてが正しい思想哲学を持っていなかったし、生きる意味や目的を認識していなかったのだ。つまり、そもそもメンタルを病んでしまう重要なファクターが、正しい思想哲学を持てていないからだとも言える。それでは、思想哲学を持って生きる意味や目的を持てればそれでいいのかというとそうではない。その意味や目的というのは、特に形而上学に基づいた正しい人生の意味と目的なのである。

 その生きる意味や目的が、自分や家族の豊かさとか幸福というのであれば、それは間違いである。あくまでも世のため人のために貢献するというものであり、全体最適を目指すものでなければならない。個別最適の生きる意味や目的では、人々の心を救う効果はない。フランクルは、人智を越えた見えない力を持つ存在(神や宇宙意思)によって助けられたと語っている。つまり、全体最適&全体幸福を願うような生きる意味や目的を持つことが、ロゴセラピーの基本と言える。さらに言えば正しい目的を持つには、形而上学が必要なのである。

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