エディプスコンプレックスが自立を阻む

 エディプスコンプレックスという心理学用語を、最近の精神医学界隈では使用することが少なくなってきた。マザーコンプレックスという用語も使わなくなっているので、その対語であるエディプスコンプレックスも話題に登らなくなったのも当然だ。マザコンというのは、母親に対するコンプレックスであり、エディプスコンプレックスというのは父親に対するそれである。ファザコンという用語もあるのに、どうしてエディプスコンプレックスというのかというと、ファザコンよりも強烈で敵対心がある言葉だからだろう。

 ファザコンというのは、どちらかというと女の子が父親に持つ憧れや依存心を意味する。エディプスコンプレックスというのは、男の子が父親に対して殺意までも持つような敵対心を抱えたコンプレックスを言う。どうしてエディプスと言うのかというと、ギリシャ神話であるオイディプス王(エディプス王)の悲劇から名づけられた。その神話とは、オイディプス王子が父親の王様のお妃である母親に横恋慕して、父親を殺して王様になり、母親を自分の妃にしたという悲劇からの命名だという。

 男の子というのは、思春期を迎えると父親が克服すべきライバルでもあり、潜在意識で好意を持つ母親の恋敵と思い込むケースが少なくない。ましてや、人生でも成功者であり厳格な性格を持つ父親なら、殺したいほど憎むケースも多い。特に、自分のように人生の成功者たりえるように、子どもを見下して支配して強く干渉するようなら、その支配から逃れるには殺すしかないと思い込むこともあろう。逆に、父親の支配から逃れないと諦め屈服するようなら、父親の操り人形のようになり、精神的に自立出来なくなることも少なくない。

 実はこういう親子関係に陥り、自立が出来なくて依存関係を継続してしまう若者が増えているのである。父親を憎みながらも屈服してしまうという無念さとつらく苦しい葛藤に、子どもは悩み苦しむ。特に完璧さや潔癖さを求めていて、それを自分の子にも要求し続ける父親に育てられると、子どもは逃げ場がなくなる。父親の見えない圧力に押し潰されることが少なくない。完全無欠な父親は、子どもにとって乗り越えられないあまりにも強大な存在であり、逃げることも闘うことも出来ない場合は、子どもは自立できなくなり閉じこもる。

 子どもは、本来は父親を乗り越えて自立していく。父親を潜在意識下で殺して存在を消してでも克服していくのである。それなのに、何もかも完璧でスキがなく強過ぎる父親では、逆に返り討ちになってしまい、乗り越えられる筈がない。だから、父親は子どもの前で完璧な父親を演じてはならないし、あまりにも強い圧力を掛け続けてはならないのである。時には、だらしなく不完全な父親を演じることも必要である。お酒を飲んでグズグズになったり、情けないような姿も見せたりすることで、子どもは安心して父親を乗り越えられるのだ。

 さらに、完璧な大人の姿だけではなくて、時にはインナーチャイルドを発揮して天真爛漫で無邪気な父親の言動も見せなくてはならない。インナーチャイルドをけっして見せない親に育てられると、子どもがインナーチャイルドを出してはいけなんだと思い込む。そうすると、本当の自分をさらけ出せなくて、自分らしさを楽しめなくなってしまう。これも、精神的な自立を阻む要因になってしまう。人間が大人になっても遊び心を失わない為には、インナーチャイルドを慈しむ心が必要なのである。

 このように子育ての中で父親が果たす役割は、想像している以上に大きい。子どもは父親の後ろ姿を注目していて、模倣をしながら成長していくし、その父親を乗り越えて自立していくのである。だからこそ、父親はエディプスコンプレックスを子どもが乗り越えられるような配慮をしなくてはならないのである。そして、父親たるものは、インナーチャイルドを発揮する姿を、子どもに時折見せなくてはならない。そうしないと、健全に子どもは自立できないばかりか社会に適応せず、不登校やひきこもりになってしまうこともある。父親は子育てに対して、もっと積極的にそして真摯に取り組んでいかねばならない。

※イスキアの郷しらかわでは、父親が対象の子育て講座を実施しています。不登校のお子さんがいて悩んでいらっしゃる家庭へのサポートを長年体験してきて、お父さんの役割がとても重要だと認識しています。父親講座と子育て悩み相談を随時開催しています。個別開催も可能ですからご相談ください。

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