青少年の死因第一位が自殺という日本

 15歳~34歳の若者の死因統計調査によると、死因第一位が自殺となっている。先進国の中で唯一日本だけがそんな結果となっているのは、驚くべきことであり悲しい限りである。希望に満ちた世代の筈なのに、将来を悲観しているというのはあまりにも可哀そうである。若者たちにそんな気持ちを抱かせてしまっているのは、我々の責任であると言えよう。勿論、政治家や経済界にも責任があるし、行政の無策ぶりが非難されても仕方ない。若者が未来に対する希望や夢が持てない社会であり、その対策が取れないというのは、実に情けない。

 どうして、こんなにも多くの若者が自殺をしてしまうのであろうか。日本全体の自殺者数は減っているのに、若者たちの自殺者数は増えている。さらに、小中学生の自殺者数も増加している。中高年者の自殺者数はそんなに増えていないのに、青少年の自殺者数が増加しているというのは由々しき大問題である。以前から、日本の社会は生きづらいし閉塞感を覚えているという人が多かったが、その思いが高まり続けていて、自殺率の増加に繋がっているのかもしれない。こんなにも便利で物質的な豊かさを享受できるのに、不思議である。

 さて、どうして若者たちは生きづらさを抱えていて、未来に希望を見いだせなくなっているのであろうか。様々な要因が考えられるが、ひとつの要因として考えられるのが、自己肯定感の欠如であろう。他の先進国と比較しても、図抜けて差異があるのが、青少年の自己肯定感が極めて低い点である。国際統計から見ても、他の欧米諸国やアジアの諸国と比較しても、自尊感情がとても低いという特徴があげられる。どんな部分もすべて含めて自分の事を好きか?という問いに、日本人だけがNOと答えている若者が多いのである。

 日本人の自己肯定感が極めて低いという事実が明らかになったのは、20年も前からである。国際比較調査で、指摘されていたのにも関わらず、文科省は有効な手立てを取れずに改善することも出来ず、却って悪化させてきている。この自己肯定感の低さが、生きづらさや閉塞感に繋がり、自殺率の高さを生み出している一番の要因ではなかろうか。このような憂慮すべき実情を国民に知らせて来なかったマスメディアにも責任があると思うし、文科省の無策ぶりを糾弾してこなかった政治家にも大きな責務があると言える。

 この自己肯定感の欠如は、自殺者数が多いと言う問題に留まらない。少子化の問題にも、自己肯定感が低いということが、極めて強い影響を与えているのは間違いない。この青少年の自己肯定感が極めて低いという事実に、声を大にして訴えて警鐘を鳴らしていた児童精神科医がいた。川崎医療福祉大学の特任教授だった、今は亡き佐々木正美医師である。自閉症スペクトラム症(ASD)などの発達障害の治療に尽力されると共に、多くのお母さんに愛着の大切さを訴えていた。無条件の愛である母性愛のかけ方を丁寧に指導されていた。

 日本の青少年の自己肯定感があまりにも低いので、佐々木正美教授は危機感を持ち、このままでは大変な社会になってしまうと警告を発しておられた。自己肯定感が低いのは、愛着が育っていないからであり、それは本当の母性愛が欠如しているからだと分析されていた。本当の母性愛とは、子どもをあるがままにまるごと愛するという無条件の愛である。0歳~3歳くらいまでは父性愛はあまりかけず、あるがままにまるごと愛するという母性愛だけをかけることが肝要だと説いておられた。この母性愛が少なく愛着が育たたなかったのだ。

 最近になり、愛着障害という概念が取り沙汰されるようになり、誤解されないようにとアタッチメントという原語をそのまま使用する専門家が増えている。良好で安心感をもたらすアタッチメントが形成されていない青少年が、自己肯定感を持てないのである。学校教育において成功体験や好成績を残せば、自己肯定感が育まれると提唱する教育関係者もいるが、完全な間違いである。あくまでも、絶対的な自己肯定感は0歳~3歳の時期に形成される。日本の青少年の自殺率を低下させるため、または少子化を解決するには、安定的アタッチメントの形成による自己肯定感の確立しか、他に方法はないのである。

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