甘えていいんだよ

 世の中には、間違った子育ての理論が横行していて、それを信じて教育した為にとんでもない子育てをしているケースが多々ある。その最たるものは、子どもを甘えさせ過ぎて育てると、依存性が高くなり自立できない子どもになってしまうという間違った教育論である。この教育の理論に毒された親たちは、子どもに甘え過ぎないよう、依存させないようにと、厳しく育てるという大変な誤謬を犯すことなる。そして、そのように育てられた子どもは、やがて自尊心が育たないばかりか、自己の確立は出来なくなり、臆病な大人になるのだ。

 この間違った子育て論は、どのようにして広まったのであろうか。または、誰がこんなとんでもない子育て論を考え出したのであろうか。おそらくは、明治維新以降の近代国家へと変貌を遂げる頃に、富国強兵策の一環としての教育理論だ。為政者にとって都合の良い国民を育てる為の教育制度として提唱されたものではないかと考えられる。つまり、明治維新後に欧米から近代教育制度を取り入れて、子どもを甘えさせずに依存させることなく育てることで、為政者にとって支配しやすく従順な国民を輩出しようとしたのではなかろうか。

 我が子をとことん甘えさせると甘えっ子になってしまうと、殆どの日本人が思っている。また、あまりにも子どもを親に依存させてしまうと、依存性のパーソナリティを持つ大人になってしまうと考えている。実は、まったく逆の結果になってしまうということを、殆どの親が知らないのである。人間という生き物は、極めてか弱い生き物であり、乳幼児期は誰かの庇護の元でしか生きられない。したがって、乳幼児期の子どもは親にしっかり守られているという安心感がないと、不安で一杯になってしまうのである。

 三つ子の魂百までもという諺がある。三歳ころまでの子育てがこそが、健全な大人に育つために大切だという戒めである。この三歳の頃までに、徹底して甘えさせて依存させてあげないと、子どもは深刻な不安感や恐怖感を抱えてしまい、やがて思春期を迎える頃になると、社会に適応できなくなることも少なくない。大き過ぎる不安や恐怖感から、HSP(ハイリィセンシティブパーソン)になってしまい、二次的症状として発達障害やパニック障害、PTSD、気分障害などを発症しやすい。不登校やひきこもりになってしまうことも多い。

 不登校やひきこもり、社会に対する適応障害などを起こす子どもは、親が過保護にしたからだとか甘やかし過ぎたからだと言われることが多い。また、犯罪をした青少年を、さも家庭の事情を知っているかのように、親が過保護で育てた、または甘やかしたからとんでない若者にしたと批判する。しかし、それは完全な間違いである。中途半端に甘えさせて依存させたからであり、どちらかというと「良い子」に育てようと、厳しい干渉と介入をし過ぎたからである。甘えさせるのと干渉とはまったく違うのである。

 乳幼児期に、子どもをありのままにまるごと愛するということを徹底して実行して、なるべく干渉を避けて、子ども自身の判断・決断・実行を自らができるようにそっと見守る姿勢が大事だ。その為には、どんなことがあっても親が敢然と子どもを守る、けっして見捨てないし否定しないということをコミットして実行することが肝要だ。そうすることで、子どもは安心して社会に出て行くことが可能だし、精神的にも経済的にも自立できる。子どもが自我の確立をして、その後自我と自己の統合をするには、このような発達段階を踏む必要がある。

 この世の中には、ひきこもりの青年たちが思った以上に多い。その青年たちは押しなべて、親に心から甘えることが出来なかった若者である。中途半端には甘えさせたが、十分に甘えることが出来なかったし、甘え下手なのである。無理して、自立したかのように見せて、親の期待に応えるべく良い子を演じてきたに過ぎない。豊かな愛情をかけ過ぎて、子どもが駄目になることはない。厳しい干渉や介入をし過ぎて、子どもが自立出来ずに社会不適応を起こすケースが非常に多い。親自身が甘えて育ってないから、甘えさせることも出来ないのである。もう一度徹底して甘えさせる子育てをし直したら、親子共に癒されるに違いない。

※ひきこもりの青少年をずっと支援させてもらってきました。その際に、「私に、徹底して甘えていいんだからね、依存してもいいんだよ」と伝えています。「どんなことがあっても見捨てないからね」とも伝えます。そして、甘え下手で甘えさせ下手の親も同じように支援します。そうすることで、ひきこもりの青少年たちは、十分に甘えることが出来て、安全基地を得ることで安心して社会に巣立っていくことが出来るのです。大人になってからでも遅くはありません。甘え過ぎるくらい甘えさせることで、人間は自立に向かって進み出せます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA