入社後すぐに退職してしまう本当の原因

 新年度を迎えて、希望に満ちて意気揚々として入社した新卒者が、僅か1日か2日を経過しただけで、退職代行の会社を通して離職してしまう若者が激増しているらしい。退職代行の会社を通しての離職届だから、本当の離職理由も解らず、人事担当者たちは困惑していると言う。離職した当人は、退職代行の担当者に対して、上司や同僚からパワハラまがいの対応を受けてしまい、心が折れてしまったと主張しているとのこと。これだけ、職場のパワハラ・セクハラに厳しくなっているのに、実に不思議である。

 パワハラやモラハラをされたかどうかで、退職するかどうかを決断しているというのならば、益々上司や先輩社員は臆病にならざるを得ない。ちょっと厳し過ぎる指導の言葉をかけたり、批判や否定をしたりすれば、それはパワハラだと認定されてしまう。それでなくても人手不足であり、新卒社員が定着してもらわないと困る。指導教育を担う社員は大変なストレスを抱えてしまう事になる。しかし、辞められるのが恐くて厳しい指導を遠慮すれば、社員の成長が期待できないというパラドックスに陥るのである。

 新入社員がすぐに退職してしまう理由が、果たしてパワハラやモラハラだけなのであろうか。表面的にはその通りなのであるが、パワハラやモラハラで退職した訳ではなく、本当は別な原因があるとしか思えない。何故なら、パワハラやモラハラをする上司なんて以前はどこの職場にも存在していた。パワハラやモラハラに極めて近いような案件は、日常茶飯事で起きていた。それでも退職する社員は殆どいなかった。だとすれば、すぐ離職に追い込まれる原因は雇用側だけでなく、雇用者側にもあるに違いない。

 まず退職代行の会社に離職手続きを依頼するという、離職者のメンタルの弱さに注目したい。自分の気持ちや意見を雇用者側に伝えられないというのは、単なる心の弱さだけではない。社会的なルールやマナーを知らないか、守ろうとしない性格や人格だということであろう。ルールやマナーではないと主張する人もいるかもしれないが、人間として恥ずべき行為だということさえ認識していないのである。社会人として失格であろう。そんな当たり前のことさえ教えられていないということに戦慄を覚える。

 さらに言えば、すぐに離職してしまうような社員は、どんな職場に転職したとしても長続きしない。周りの人々やお世話になった方々に対する気遣いや思いやりを持てないのである。どんな酷い仕打ちを受けたとしても、社会的礼儀は尽くさなければならない。それが社会人として必要な常識なのである。そして、もしパワハラやモラハラを受けたとしたら、後に続く新入社員に同じ思いをさせないよう、再発防止策を企業側に提言するべきである。そんな社会人としての義務を果たさず黙って退職するのは卑怯だ。

 このように、すぐに離職して退職代行に手続きを委託するような社員は、そもそも入社させるべきではないし、それを見抜けなかった企業側に社員選別の能力がなかったという証左である。新入社員の学歴や学力だけに目を奪われてしまい、人間としての本質を見抜けなかったのである。何よりも、人間力や忍耐力、人間関係調整能力などが欠如しているような社員を採用した採用担当者と役員の責任が大きいと言える。採用面接に携わる役職員は、企業内で一番秀でた人間力や人格を持つ人を当てなければならないのだ。そんな基本的な認識を持っていないのは、経営者として落第だ。

 思想哲学、生きる目的、働く目的や使命感を持ち得ない青年が多くなってしまった。学校でもそれを教えないが、家庭で形而上学を語り導けない父親がいる。こんな親がすぐに離職してしまうような社員を生み出したのである。そして、そんな腑抜けのような社員を採用してしまっている企業経営者が増えてしまったのである。一昔前のソニー、本田技研、松下電器では考えられなかった大失態である。これらの会社では、以前は日常的に思想哲学の対話を社員同士が目を輝かして実践していたという。盛田さん、宗一郎さん、幸之助さん等経営者トップが思想哲学を持っていたからである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA