精神科や心療内科を受診して、確定診断をされてカウンセリングや投薬治療を受けているメンタル疾患の患者さんは多い。職場や学校で精神的に悩んでいる人に対して、関わる人々は精神科の受診を勧めるし、当人自ら精神科や心療内科の診断を望む例もある。かくして、近くにある精神科クリニックを頼ることになる。ところが、精神科医の診療レベルは、他の診療科医師とは違い、かなりばらつきがあると言える。精神科医を最初から希望する研修医が少ないし、どちらかというと優秀な研修医は他科に行く傾向がある。
精神科医を目指す研修医が少ないのは、一昔前までだった。現在は、精神科医を医学部入学前から希望していた学生も増えてきたし、優秀な研修医も多くなりつつある。しかし、以前は優秀な精神科医が少なかったのは、医療関係者なら誰でも知っている。勿論、優秀な精神科医も存在していたが一握りであり、大学の研究室に残った医師か著名な大学病院に在籍した医師たちである。精神科単独の病院の勤務医や精神科医院の医師に、レベルのばらつきがあったのは当然であろう。そんな精神科医だから、誤診があったのかもしれない。
精神科は、とても難しい診療科であると言える。他の科であれば、診断技術が年々著しく向上しているし、検査機械や診断機器の開発がものすごい速度で進んでいる。ましてや、最近はAI診断技術も進んでいるし、薬品の開発も著しい。ところが、精神科だけは医療技術の進歩から取り残されているのである。検査機械や診断機器の開発もまったく進んでいないのである。血液検査や尿検査などで、確定診断ができる訳ではない。X線検査やCT検査で異常を発見できる訳ではない。問診や心理検査、脳波検査などで診断するしかない。
一応、ICDやDMSという国際診断基準やガイドラインは存在しているが、最新のICD10やDMS5の診断基準を用いているのは先進的な医師だけで、依然として使い慣れたICD9やDMSⅣに頼っている精神科医が多い。ましてや、問診やカウンセリングにはそんなに時間をかけていないし、簡単な問診と質問だけで確定診断をしてしまい、安易に精神薬を処方する医師が多いのも事実である。最新の医学理論に疎い開業医はあまりにも多い。ましてや、精神薬は殆どがモノアミン仮説によって開発されていて、科学的根拠が極めて怪しい。
こんな精神医学の状況なのだから、誤診が起きるのは仕方ない事であろう。気の毒なのは患者さんである。患者さんは藁にもすがる思いで精神科医を訪ねたのに、まさかエリートである医師が誤診をしようとも思わないであろう。食べログのように、医院の評判が詳しくネット上に掲載されている訳ではない。知人に精神科医の評判を聞けないのだから、殆どの人が行き当たりばったりでクリニックを訪ねることになる。どちらかというと、外れを引いてしまう割合が多いのも事実である。そんな患者さんは実に気の毒である。
精神医学界は、古い医学理論に固執するケースが多い。昔の精神医学理論なんか、現代の複雑な児童心理や発達心理においては使い物にならない。昔ながらのカウンセリング学や精神分析学だって、現代の病理に対しては、歯が立たないケースが多い。それなのに、旧来の精神分析手法を使ってしまい、訳の分からない分析結果を患者さん当人や家族に宣告してしまう。それが間違っている診断だとしたら、大変なことになる。故に精神の患者さんは激増しているし、治療により完治することも少ない。寛解して医療から離脱できるケースも殆どない。
確かに、病状や育成歴、家族との問診から導き出された診断と病因だとしても、安易に当人とその親に告げるのはあまりにも残酷ではなかろうか。ましてや、その診断が間違っていたとしたら、患者さんとそのご家族の人生を台無しにしてしまう危険だってある。その間違った診断のせいで、学業を諦めたり仕事を失ってしまう患者さんだっているのだ。誤診のおかげで人生を狂わされてしまったり、人生を無駄に過ごさせられたりした患者さんを多く眼にしてきたのも事実である。精神科医の確定診断をそのまま鵜呑みにするのは危険がある。出来れば、大学病院などの専門医のセカンドオピニオンの受診をお勧めしたい。