痛みは心からの大事なメッセージ

 痛みは辛く苦しいものだ。抱えている痛みは本人しか解らないし、それが四六時中続いているというのは耐え難い苦しみである。なによりも辛いのは、この痛みがいつまで続くのか解らないということだ。一生に渡ってこの苦しみが続くと言うのなら、途方もない悲しみの渦に巻き込まれてしまいそうだ。この痛みを取ってくれるというのなら、藁にでもすがる思いでどんなこともやってみたいと思うだろう。そして、どうしてこの痛みは出てきてしまったのだろう、どうすれば解放されるのだろうと、心を悩ませている。

 辛い痛みを抱えている人に話を聞くと、自分のこの痛みを一番身近な人がまったく解ってくれないし、何か他人事のように思われていることが感じられて、それが一番辛いと言っている。確かに、心の痛みは何とか共有しようとすれば出来そうだが、身体の痛みはなかなか解り合えない。ましてや、夫婦や親子という関係において、あまり良好な関係に無い場合は、特に身体の痛みに共感しにくいかもしれない。身体の痛みに共感してくれないという『心の痛み』が、益々の痛みの増幅を産み出しているようにも思えて仕方ない。

 身体の痛みを抱えている人が急増している。何らかの痛みを持っていて、普段の生活に影響が出ている人の割合は、おそらく半数を超えていそうな気がする。そして、その割合は女性のほうが遥に高いように感じる。女性の痛みの場合は、原意不明の痛みが多いのが特徴的だ。膠原病、関節リウマチ、線維筋痛症、神経因性疼痛、気象病など原因が特定できない痛みの病気で苦しんでいる女性が多い。どうしてなのか、不思議な事ではあるが、おそらく女性が置かれた環境(人間関係)が大きく影響しているとしか思えない。

 一昔前の医学的な常識として、痛みの原因はこのようなメカニズムで起きていると考えられていた。一つめは、痛みが起きている局部に存する神経細胞が何らかの刺激を受けて痛みが出ているのではないかという見解である。二つ目は、筋肉内に乳酸などが溜まり血管を圧迫して、血流が滞って痛みの原因物質であるプロスタグランディンなどが溜まり、痛みが発症するという見解だ。ところが、この二つだけでは説明できない痛みがあることに注目されている。それは心因性の疼痛であり、この痛みは脳が痛みを感じさせるとも言われている。

 原因不明の痛みとは、この心因性の疼痛が起きる仕組みと同じだと考えられている。何らかの原因で血流障害が起きてしまい、血液を何とか流そうと努力をして、その箇所にバイパス的な毛細血管(モヤモヤ血管)が出来てしまい、そのモヤモヤ血管が痛み神経を刺激して、発症しているという診たてをする医師が増えている。血管造影撮影をすると、痛みが出ている部位に何だか分からないモヤモヤとした毛細血管が写っているらしい。不思議なことに、癌を発症した患者の殆どが、発症する前にこのモヤモヤ血管が出来ていたというのだ。

 痛みの原因や背景を明らかにして、どうして痛みが出ているのかを特定するのは難しい。でも、痛みは自分の心や脳が敢えて起こしているのではないかと考えると、痛みを起こしている本当の意味が少しずつ理解できそうだ。現状において問題を抱えていない人は皆無であろう。それでも、その問題があまりにも大きくて、解決しそうもないという八方塞がりの状況に追い込まれている人は、そんなに多く居ない筈である。現に抱えている困難な状況に、闘う事も出来ず逃げることも許されず、どうやっても乗り越えることは難しいと半ば諦めているケースがあるかと思われる。

 そんな状況が長く続く時に、原因不明の痛みが起きやすいのである。そして、その状況を解決することを諦めて、痛みを放置しておくと取り返しのつかない重病まで発症してしまうのである。ということは、痛みというのは自分自身に対する大事なサインorメッセージなのではなかろうか。今の生き方で良いのか、今の生活を守りたいのか、それとも大胆な変革をしなければならないのか、そろそろ気付きなさいよという自分に対するメッセージだと読み解くことができよう。こういう時こそ、自分の力だけでは解決できないので、誰かに相談すべきだろう。その誰かが解決してくれるとは限らないが、対話を続けているうちに、自分でその『答』を見出すことになろう。

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