カスタマーハラスメントによってメンタルが傷ついている社員・職員が急増している。企業にとっても由々しき大問題になっている。カスハラによって休職や離職に追い込まれてしまうケースも少なくないし、理不尽なカスハラにより営業に悪影響が出ている例も多い。カスハラ対策が企業や行政組織にとって喫緊の課題となっている。カスハラに関する法整備も必要不可欠であろう。だとしても、カスハラの定義をどうするのかという課題もあり、すぐに法整備が出来ることは期待できない。故に、自衛策をどう取るのかが問われている。
カスハラ対策を企業・組織全体で取り組もうという機運が高まっている。それだけ、カスハラは深刻な問題となっている認識なのであろう。特に、顧客と直接対応する窓口部門やクレーム対応部門の社員にとっては、カスハラは避けては通れない大問題なのである。それにしても、顧客だからと言いながら無理難題を押し付けたり理不尽な要求を突きつけたりする、非常識なクレーマーには困ったものである。常識が通じないし、論理的にいくら説明しても聞く耳を持たないのだから、始末に負えない。切れてしまうことも多い。
カスハラをするような人間について、若干の心理的考察をしてみたい。カスハラを自分ではしている自覚がない。どちらかと言うと、社会を代表してクレームをしてあげていて、正義の味方気取りをしていることが多い。実は、こういう人間は自分が所属しているコミュニティの中では、誰にも相手されず孤立していることが殆どである。つまり、誰にも好かれず愛されず孤独感でいっぱいなのである。いつも自分の主張が認められず評価されず、相手にされないのだ。それでいて、自分を過大評価していて、社会が悪いと思い込んでいる。
それにしても、カスハラの被害を受けてしまう人は実に気の毒である。カスハラを受けないで済ませたり、カスハラを受けても軽く受け流せたりする方法はないものだろうか。不思議なことに、カスハラを受けやすい人と受けにくい人がいるのである。または、カスハラ事案が起きても、重大な問題になることなく済ませてしまう人と、全社・全組織の大問題まで発展させてしまう人がいることに注目したい。特定の職員だけがカスハラを受けて、メンタルが傷付いてしまい、離職や休職に追い込まれてしまう傾向が明らかに存在する。
カスハラを何故受けやすいのか、その事案をより深刻なものにしてしまうのか、その訳が判明すれば、カスハラ予防やカスハラを受けてもダメージを小さくする方策が取れる筈である。カスハラをする人間と言うのは、あくまでも自分が優位に立てると思う場合、または相手にマウント出来ると確信した時に、カスハラを大々的に実施するし、より問題をおおげさに拡大させる。無意識的に、相手が自分よりも弱いと見下しているのであろう。その証拠に、圧倒的にカスハラを受けるのは若くてか弱い女性が多い。
それで、カスハラ対策として一番手っ取り早い方法は、カスハラ対応職員を配置することである。ある程度の役職以上で経験と知識が豊富で、メンタライジング能力に長けていて、コミュニケーション能力が極めて高い人が適任である。傾聴と共感能力が高く、それでいて自己肯定感が高くて、どんなに責められても挫けない人である。また、寛容性と受容性も高く、それでいて相手の要求に屈せずに、毅然とした態度を取り続けられる人である。私も病院勤めと会社勤めをしていた際には、クレーム担当として問題を処理していた。反社の人物からのクレームを何度も受けたが、一度も訴訟案件に発展したことはなかった。
カスハラ対応専門職員を配置出来ない場合は、カスハラを受けないように、または受けても軽く受け流せる社員に育てる研修をすることが必要だ。社員すべてが、上記のような能力を身に付けるというのは不可能ではあるが、少しでもカスハラ対応職員のような各種能力と人間力を身に付ける努力は求められる。少なくても絶対的な自己肯定感を持てるように、自我と自己の統合(自己マスタリー)を確立することが最低条件であろう。企業や組織というものは、職員に対して自己マスタリーを実現させる教育をしてあげたいものである。
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