陰謀論にはまってしまった親族に非常に困惑してしまっている人々が多数存在する。親とか配偶者とか、実の我が子が陰謀論を信じ切ってしまい、生活にも大きな影響を受けてしまっているというケースが少なくない。そして、一旦陰謀論を信じてしまった人というのは、助言や正しい情報にも聞く耳を持たなくなる。親の言葉にも耳を貸さなくなるのである。陰謀論は唯一の真実であり、一切疑う事をしないし、科学的な根拠を示しても耳を傾けようともしない。もはや陰謀論依存症と言えるような状況である。不安感や恐怖感が強いので、自分が不遇なのは社会のせいで、自分の責任ではないと思ってしまうのだ。
陰謀論依存症から抜け出すのは、とてつもなく困難である。何故なら、依存症だという自覚がないからである。アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症などその他の依存症ならば病識がある。しかし、陰謀論依存症は自分がフェイクニュースに騙されているという感覚がないので、どんなに嘘なんだと説得されても、自分の認識を変えることはない。陰謀論を信じない人こそが騙されていると思い込んでいるのだから、どうしようもないのだ。特殊詐欺がなくならないのとまったく同じ構図で、騙されている認識が全くないのである。
NHKスペシャルのドキュメントでも放映されていたが、陰謀論にはまってしまった親族をどうにか現実に引き戻そうとするが、非常に困難である実例が示されていた。冷静に考えると、陰謀論は極めて矛盾している論理であるから、その嘘に誰でも気付く筈なのであるが、まるでカルト宗教のように信じ切ってしまうのである。あたかも、オーム真理教における洗脳のような状況に置かれているのである。洗脳をしたのは、特定の誰かではない。不特定多数のネットにあげられた情報によって洗脳されているのだから、始末に悪い。
実在の人物によって洗脳されているというのなら、その特定の人物に洗脳を解かせるということも出来よう。しかし、不特定多数の者がこれでもかというくらいに嘘の情報を次から次とあげている。しかも、それを拡散している者が真実だと思い込まされているのだから、なおさらフェイクニュースに引っ掛かりやすいのである。陰謀論はスピ系の人たちがはまりやすいということもあり、スピ系の情報発信をしている人たちも偽情報の拡散をしている。スピ系の人たちは元々科学的検証を信じようとしないから、困るのである。
陰謀論が科学的、または論理的に破綻しているということを簡潔に証明してみよう。陰謀があるという人の主張は、闇の勢力(闇の政府=ディープステート)が存在していて、自分たちの利権や権益を守る為に、様々な政治や経済面での陰謀を起こして世の中を操作しているというものである。そして、闇の勢力は社会の善良な市民たちを分断させて、権力に歯向かないようにするばかりか、お互いに協力させないようにしていると言っている。しかし、こういう情報を垂れ流すことは、逆に社会の分断や断絶を起こしているのである。
もし、これらの陰謀が本当にあったとしても、陰謀論者の主張は社会の分断と不信を招いてしまっているのは事実である。もし、陰謀を企む人がいたとすれば、逆に陰謀があるという情報を流されて社会の不信と分断を起こすのは好都合ではなかろうか。権力者や為政者というのは、市民が団結したり統合したりすることが、何よりも避けたいことである。陰謀論を展開してもらうのは、闇の勢力にとってもありがたいことなのである。まんまと彼らの術中にはまってしまっていると言えよう。陰謀の真偽は解らないが、陰謀の片棒を担いでいるのが陰謀論者なのである。
もうひとつ陰謀論が破綻していることを、量子力学で解き明かしてみよう。量子力学(量子物理学&システム思考)で考察すると、この世(地球を含む宇宙全体)は、構成要素である素粒子(量子)が自己組織化とオートポイエーシスの機能を持ち、全体最適(全体幸福)や予定調和を目指す。すべての物体(生物)は、個別最適や個別幸福を追求すると、自己破綻(自己破滅)を起こしてしまう。地球の歴史においては、個別最適を目指し過ぎると揺り戻しが起きているのである。どうみても、大地震や台風などの自然災害は、人間とって必要だから起きていると考えられていて、けっして陰謀などによるものではない。陰謀論の論理は既に破綻しているのである。