妻が夫に不満を持つのは何故か

 夫婦の満足度についてのアンケート調査をしたら、驚くような結果になったという。夫が妻に対して満足している割合は69%であるのに対して、妻の夫に対する満足度は49%だというのである。この差は何なのか、どうしてこんなに差があるのであろうか。昔は、夫の方から離婚を切り出すケースが多かったが、現在は妻から離婚を申し立てるほうが圧倒的に多いという。しかも、夫の方では離婚の理由が解らないと主張するケースが殆どだというから驚きだ。ということは、妻の不満を夫はまったく把握していないということになる。

 夫の満足度は現実と相違ないが、妻たちの本心を明らかにしているかというと、そうではないような気がする。というのは、この満足度に対する設問が総体としてのものであり、個別の満足度設問になっていないからである。確かに、全体としてはまあまあ満足という気持ちがあるが、かなり不満な部分が相当あるのではなかろうか。特に、妻の気持ちに共感してくれているか、または妻の話を真剣に聞いてくれるか、さらには妻のことを自分のことのように心配してくれるか、という設問だったら妻はNOと答えるに違いないのである。

 多くの妻たちが抱いている不満は、以上のようなことなのである。とは言いながら、経済的には裕福な暮らしをさせてくれるし、高望みをしても仕方ないという意味で、満足していると答えているのではないかと思うのである。だから、このような設問をすること自体が、まずいのではないだろうか。以前、既婚男女に対してのこんなアンケート結果がある。生まれ変わって、結婚するとしたら今の伴侶と結婚するかどうかを聞いた。男性は約半数が現在の妻と一緒になると答えたのに対して、妻はそれよりも1割以上低い数字になった。

 しかも、20代~30代の妻たちは別の男性と結婚したいと願う割合が低いが、50代~60代になると半数以上の妻たちが別の男性と結婚したいと答えているのである。つまり、夫と長く暮らすほど不満が高まるということになる。若い頃は見えなかった夫の嫌な部分が年齢を重ねると目立ってくるのか、夫が高齢になると身勝手で我が儘になるかであろう。夫婦生活の中で、夫が抱いている不満感よりも妻が抱える不満感が圧倒的に多いということになる。年齢を重ねるとその傾向が強くなるということであろう。熟年離婚が増える要因であろう。

 それでは、何故妻たちは夫に対して不満を持つのか、考察を試みたい。妻たちが持つ不満は、夫の傾聴力と共感力の乏しさに対してである。または、コミュニケーションが成り立たないという不満でもある。どうして妻よりも夫のほうが、コミュニケーション能力が低いのか。夫たちは職場で、コミュニケーション能力やプレゼン能力を発揮して、部下たちを統率管理している筈である。年齢を重ねれば重ねるほど、その能力は高まっているに違いない。それなのに、家庭では妻が夫のコミュニケーション能力が駄目だと感じているのである。

 それは職場での意識と家庭での意識がまるで違っているからであろう。夫たちは職場において、意識を集中してコミュニケーション能力を発揮しているのである。そうしないと、仕事が上手く行かないからである。特に顧客の気持ちを汲み取ろうと必死になるし、上司の意思を把握しないと出世できないのだ。部下の話をよく聞かない男性の上司は多いが、上司の話を聞かない管理職は極めて少ない。それだけ気を張り詰めて職場でコミュニケーション力を発揮している。その反動であろうか、家庭では妻の話を聞こうとしないし、共感しようとしないのだ。

 「世の中の男性なんて、みんな発達障害みたいなものよ」と言った女性がいる。東京大学名誉教授でフェミニストである上野千鶴子女史である。発達障害の夫によって心身の破綻を起こすカサンドラ症候群の方たちに招かれた講演会での発言である。言い得て妙である。気を張り詰めて仕事をしている職場においては大人の発達障害の症状はあまり出ないが、気が緩む家庭においては発達障害の症状が強く出てしまうのだ。当然、傾聴力と共感力が乏しいし、コミュニケーションが上手く行かない。妻の気持ちを解ろうともしないし、身勝手で自己中な夫に愛想を尽かすのは当然なのである。熟年離婚をされるのも仕方ない。

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