サッカー日本代表西野ジャパンがロシアワールドカップで大活躍をした。戦前の予想では、活躍は期待出来ないと思われていたのに、決勝リーグまで残りベルギーと互角に渡り合えたのは、西野監督の采配とマネジメントの賜物であるのは間違いない。あんなに短い期間によくチームをまとめあげたし、選手の掌握によくぞ成功したなと感心するばかりだ。西野監督のチーム管理が成功を収めた一番の要因は、彼と選手間の徹底した『対話』にあったと言われているが、まさしくその通りだと思われる。
監督に就任してから、各選手と徹底して対話したと伝えられている。しかも、選手たちをリスペクトして、彼らの言い分にしっかりと耳を傾けて、取り入れるべき戦術の参考にもしたと聞き及んでいる。そして、選手たちとの心を開きあった対話によって、選手と監督との『関係性』が非常に良くなり、揺るぎない信頼関係が構築されたのである。監督が考えていることをチーム全員が理解して、それを一丸となって実行できたのは、対話によって彼らの『共通言語』が創造できたからに他ならない。
スポーツのチームにおいて、強くなったり成果を残したりするには、チームワークが大切であるのは言うまでもない。良好なチームワークを作り上げるには、コミュニケーションが大事だというのは誰にも共通した認識であろう。だからこそ、常日頃からの対話が必要なのである。対話というのは、モノローグ(一方的な会話)であってはならない。ダイアローグ(双方向の会話)でなければならない。ともすると、監督と選手間というのは、圧倒的に監督が優位な立場であるが故に、モノローグになってしまうことが多い。上位下達という形である。これでは、共通言語が形作れないから対話にならないのである。
日大のアメフト部のコミュニケーションは、モノローグであった。志学館大学のレスリングも同様である。ハリルジャパンも、言葉の壁もあっただろうが、ダイアローグでなかったのは確かであろう。野球の巨人がカリスマの監督を据えて、優秀で実績のある選手を金でかき集めても、実績を上げられないのは、実はチーム全体の共通言語を持たないからである。FIFAランク61位のチームが決勝トーナメントに残る活躍が出来たのは、ダイアローグ(対話)のおかけであろう。
日本人の素晴らしい精神文化を形成した根底には、「和を以て貴しとなす」という聖徳太子が提唱した価値観があると思われる。個の意見も大切であるが、お互いの意見を尊重しあい、共通の認識や意見に集約するまで、徹底した対話を続けるという態度が大切であろう。西野監督は、まさにそうした対話を続けることで、チームをひとつにまとめあげたのである。勿論、監督のリーターシップも必要である。最終的には、監督が重要な決断をしなければならないし、すべての責任を取らなければならない。今回のポーランド戦は、まさに西野監督が苦渋の決断をして、その責任を一身に背負った。あれで、チームはひとつにまとまったのである。
西野監督が、オープンダイアローグという心理療法の原理を知っていたとは到底思えないが、彼はチーム内の対話をまさしくオープンダイアローグという手法を使って活性化していたのには驚いた。各選手の話を傾聴して共感したと言われている。監督としての優位性を発揮せず、対等の立場で対話したらしい。しかも、否定せず介入せず支配せずという態度を貫いたという。このような開かれた対話をされたら、誰だって西野監督のことが好きになり、信頼を寄せる。このような対話を続けると、選手たちは自ら主体性を持ち、自発性も発揮するし、責任性を強く持つ。つまり、アクティビティを自ら強く発揮するのである。
ともすると、組織のリーダーは圧倒的な権力を持つことにより、構成員を支配し制御したがる。こうすることで、ある程度の成果は出せるものの、継続しないし発展することはまずない。大企業の著名経営者が陥るパターンであり、中小企業のオーナー経営者が失敗するケースである。家庭において、圧倒的な強権を持つ父親が子どもを駄目にするパターンでもある。ひきこもりや不登校に陥りやすいし、弱いものをいじめたり排除したりする問題行動をしやすい。組織をうまく機能させるには、開かれた対話、つまりオープンダイアローグの手法により、共通言語を形成し関係性を豊かにすることが必要である。西野ジャパンが対話によって成功したように、コミュニティケアを目指せばよいのである。
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