カジノ法案は本当に成長戦略か?

IR推進法案がとうとう衆議院から参議院の審議になる。IR推進法案とはカジノ法案とも呼ばれていて、問題が山積みの法律なのであるが、短い時間の審議であっという間に承認された。このカジノ法案に前のめりであった維新と、維新を取り込みたい安部自民党の思惑が一致した結果であろう。それにしてもこんなにも問題があるのにも関わらず、法案に賛成した公明党の姿勢にも疑問がある。社会的弱者の味方であると公言して憚らない公明党だが、実は強者の代弁者であるということが判明したとも言える。

カジノ法案は、ギャンブル依存症を増やすことになる。その歯止め策として、法案が部分修正されたが、焼け石に水である。何年か後には厳しい規制のためにカジノの運営が暗礁に乗り上げ、それをなんとか救済しようとして、法案の再修正が実施されて規制がなくなるのは目に見えている。優秀なキャリア官僚たちであるから、IR推進法案がやがて日本の荒廃を生み出してしまうことは予想している筈である。政治家の暴走を食い止める役割を担うのが官僚なのに、官邸に言われるまま行動する官僚の体たらくぶりに落胆している。

それにしても、IR推進法案は成長戦略のひとつだと胸を張る政治家たちの不見識に驚くばかりである。成長戦略とは、本来は実質経済の成長をどう導くかというものである。三本の矢に例えていて、円安誘導の金融政策、そして規制緩和、さらにはそれに伴う実質経済の成長だと主張する。しかし、いつまで経っても三本目の矢は的を射ていないのである。実質経済はけっしてよくない。庶民の生活は一向に良くならないし、国民の消費意欲が沸かず消費支出が伸びていないことからも解る。2%の物価上昇率を目指した日銀のインフレターゲットは白々しく聞こえる。円安傾向と株価の上昇は、一般国民にとっては何の恩恵もないばかりか、かえって円安による石油製品などの値上げの影響で国民生活が苦しくなっている。

そんな中で、IR推進法案を通して景況を演出しようとしているのだが、逆効果になるのは目に見えている。まず、IRの設置により外国人観光客を増やす目論見であるが、カジノを目玉にして外国人観光客が増えるかというと、そんなことはまったくあり得ない。韓国での失敗がそれを証明している。韓国の外国人観光客を目当てにしたカジノは、現在閑古鳥が鳴いている。そればかりかギャンブル依存症の韓国民が住居まで失い、ルンペンにまで身を落としている始末である。日本版のカジノも同じ状況を招くことが予想される。

もうひとつカジノ法案には問題がある。カジノの運営ノウハウを国内の業者が持たないから、カジノの運営は外国企業に任せるというのである。ということは、カジノで上げた収益はすべて外国に持ち出さられるということである。いくらかの還元が地方財政へあったとしても、収益が国民には行かないのである。何のためのカジノであろうか。大きなショッピングセンターが地方に進出して、利益が本社に吸い取られている。地方に工場が進出して、利益が本社に吸い上げられて税収は本社所在地で納められる。地方が経済的に疲弊している構図とまったく同じではないか。

都市部から地方に進出した大資本のパチンコ店が、地元資本のパチンコ店を潰している。地方の人々から、なけなしの資産を巻き上げている。パチンコ店では、年金支給日になると大勢の高齢者が列をなしている。パチンコによって生活費を巻き上げられた主婦がサラ金に手を出してしまい、やがては借金返済のためにデリヘル産業などで働かされている。経済的だけでなく家族関係まで崩壊させられている家庭がある。カジノが出来たら、こんな崩壊家庭が益々増えるのは目に見えている。こういうギャンブル依存症による貧困家庭の現実なんかを知ろうともしない政治家だから、こんな悪法のIR推進法案を通そうとしているのであろう。

政治家というのは経済的に恵まれた人間がなっている。特に政権与党の政治家は、二世議員が多いし裕福家庭の出身が多い。貧困家庭に育って苦労した人間の気持ちなんて解ろうともしない。だから、社会的弱者を救う政治を実施できないのだ。政治というのは社会的弱者や貧困が世代間連鎖しないように、経済的豊かさの再配分をする役目を担っている。IR推進法案を通すというのは、その役目を政治家が放棄するようなものである。カジノ法案は、成長戦略を実現しないばかりか、絶対的貧困家庭を益々増やすことになろう。国民のためにならないIR推進法案は、絶対に成立させてはならない法案である。

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