不倫報道がすさまじい。ダブル不倫、略奪不倫などのセンセーショナルな文字が紙面に踊っている。今井絵里子、上原多香子など、女性が話題の主になっている。古い話題だが、乙武さんの不倫報道に驚いた人も多いことだろう。あれだけの障害を持ちながら、社会的にも頑張ってきたのに、家族の信頼を裏切り、社会的信用も失墜させた。政治家としてのデビューも遠ざかり、大きな代償を払うことになった。宮崎議員も、代議士のポストも棒に振り、家庭も崩壊したに等しい。芸能界でも、度々不倫報道が話題になるが、男性だけでなく妻も不倫をするケースが少なくない。どうして、著名人にはこんなにも不倫が多いのであろうか。一般人も不倫をしているのだが、著名人だから明らかになっただけなのであろうか。相手に配偶者がいるのを承知で性交渉をするほうも、非難されるのは当然だ。
「英雄色を好む」ということわざがある。よく引き合いに出されるのは、豊臣秀吉やナポレオン、そして現代ではゴルフ界のタイガー・ウッズである。中国共産党の偉大な指導者、毛沢東もそうだったと言われているし、北朝鮮の指導者金一族もあちこちに愛人を作っているらしい。ある研究結果から導き出されたのは、ホルモンと権力欲・名誉欲の関係である。政治家や経済的な成功者は、明らかにテストステロンという男性ホルモンが一般の人よりも多かったらしい。テストステロンがドーパミンの分泌に大きく関わっているのだから、関連性はあると推測される。攻撃性や挑戦欲とテストステロンとは関連しているし、テストステロンは性欲と密接な関係があるのは知られている。
それにしても、どうして人間は不倫などという、我が身を滅ぼしかねない危険な行為をしてしまうのであろうか。社会的にも抹殺され、家庭崩壊を起こすような危険行為を何故してしまうのか、理解に苦しむことだろう。勿論、本人たちは家族にも内密にしようと工夫しているだろうし、職場や地域にも知られないような努力はしているであろう。けれども、著名人はマスコミがほっておかないし、世間のねたみやそねみもあったり、相手がわざわざ暴露したりするケースも少なくない。そんなリスクを負ってまでも、不倫をしてしまうというのは、何か特別な理由があるに違いない。社会的に地位や名誉がある者でさえ、しちゃいけないと思いながら不倫をするというのは、脳科学的に観て何か理由があるのではないかと思えて仕方ない。
人間が性行動を求めるのは、ドーパミンという脳内ホルモンが出るからというのはよく知られている。ドーパミンというのは快楽ホルモンとも呼ばれる、脳内神経伝達物質である。性行為だけでなく、飲酒、飲食、ギャンブル、煙草、買い物などでもドーパミンが出ると言われている。快楽を求めたくなるのは人間の宿命みたいなものであろう。さらに、最近の脳内ホルモン研究で、性行為や異性とのスキンシップを求めたがる原因となる脳内神経伝達物質があるのが判明した。それがオキシトシンというホルモンである。子育てにおいて母性を育むホルモンとしても知られているが、お互いの愛情が溢れるような性交渉でも沢山分泌されることが解ってきた。
このオキシトシンを何故人間が分泌したくなるかというと、このホルモンが満たされると、不安感や恐怖感を払拭して精神が安定するからと言われている。特に、仕事や家庭においてストレスフルな状況にあり、自分に自信が持てなくなり、将来に対する不安が強くなると、このオキシトシンを分泌させたくなり、性行為に走るらしい。つまり、職場で粛々と仕事をこなして不安もなく、家庭でも配偶者や子どもたちから愛されている状況にあれば、不倫になんか走らないということだろう。ましてや、夫婦間においてお互いの敬愛関係と信頼関係が万全であり、愛情豊かな性の営みがあったとしたら、不倫なんてことが起こりうる確率は限りなく少なくなるに違いない。
知らず知らずのうちにドーパミンやオキシトシンの分泌を求めてしまい、不倫をしてしまうというのは言い過ぎになる。しかし、無意識のうちにドーパミンとオキシトシンの分泌を求めて、性行為に走るケースは少なくないと思われる。最近解ってきたことであるが、このオキシトシンは人間を不安から守るという働きもあるが、逆に危険な行為に対する回避行動も阻害するらしい。つまり、不倫で性交渉を何度も繰り返すうちにオキシトシンを沢山分泌させて、身を滅ぼすような行動をもしてしまうということである。だから、不倫がばれたり家庭を崩壊させたりするような行動をしてしまうのであろう。ドーパミンやオキシトシンに翻弄されないような生き方を心がけたいものである。人間の性(さが)というのは、実にやっかいなものである。