性的暴行に無抵抗になる訳

男性から暴力を伴う性行為を、女性が無理やりに強いられるケースがある。または男性の養育者から、女の子が性的虐待を受けるケースがある。強い立場の者が弱い立場にある者に、こんな人間としてあるまじき卑劣な行為をするというのは、絶対に許されないことである。しかし、裁判とか家裁の聞き取り調査で、実に不思議な証言が加害者と被害者から述べられることが多い。それは、被害者が抵抗しなかったという点である。だから加害者側から、合意のうえだったとか、暗黙の了解だったと主張する根拠にされてしまうのである。

この抵抗できなかったという点で、被害者の女性は法廷の場でセカンドレイプのような気分を味わうし、自分自身を責めてしまうことになる。ましてや、抵抗しなかったことで多大な負い目を持ってしまうし、多くの人々から非難めいた言葉が寄せられて、メンタルを病んでしまうことが多い。そして、深刻なトラウマやPTSDを持つことも多い。また、養育者から性的虐待を受けた子どももまた、深刻なメンタルの傷を負ってしまう。どうして抵抗しなかったのかという後悔の念を、大人になってからも持ち続けることだろう。

実は、これは抵抗しなかったのではなくて、身体が勝手に反応してしまい、抵抗できなかったというべきなのである。しかも、自分の生命を守るために、迷走神経系統が勝手に反応して、止むを得ずに起きた正しい反応なのである。どうしてかというと、それはポリヴェーガル理論で説明できる。ポリヴェーガルというのは、日本語では多重迷走神経と訳される。自律神経というのは、現代医学においては今まで交感神経と副交感神経の二つで、身体のバランスを取っていたと見られていた。しかし、副交感神経には二つの迷走神経があることが判明したのである。

副交感神経を支える迷走神経に、実は二つの迷走神経回路が存在することを、ステファン・W・ポージェス博士が世界で初めて明らかにした。そして、この二つの迷走神経のうち、背側迷走神経が進化上初めに出来た神経経路で、その後に新しく腹側迷走神経が出来たとみられる。したがって、交感神経と副交感神経だけで身体の健康や体調を調整している訳ではないということである。つまり、交感神経と二つの迷走神経の合計三つの神経経路が、身体と心のバランスを制御しているのである。これは画期的な発見であり、今までの医学界の定説を覆したと言える。

今までは、哺乳動物が命を脅かされるような事態が起きた時には、交感神経が闘争/逃走の二者選択をして生命を守る行動をすると思われていた。ところが、逃げるのも出来ず闘うことも出来ない状況に追い込まれた小動物は、背側迷走神経が働いて、不動化・固まるというような防衛行動を取ることが知られている。この背側迷走神経がやっかいな存在で、人間の場合は不動化・シャットダウンだけでなく、精神的な解離や失神状態にさせるのである。本来は、新しく発達した腹側迷走神経を働かせて、安全だと認識できたら古い背側迷走神経が働くまでは行かないのだが、レイプされるという恐怖感がシャットダウンをさせるのだ。

被害を受けた女性は性的暴行や虐待をされるという恐怖感があり、そして自分よりも強大な敵で、逃走も闘争もかなわないというので、背側迷走神経を動かすスイッチが入ってしまい、身体が動かなくなったり心が固まったりして、反抗することが出来なくなったとみるべきだろう。もし対抗したら相手を怒らせて、命までなくす危険もあったのだから、正しい防衛反応をしたと言える。性的暴行を受けた時に、抵抗しなかったのではなく、迷走神経が働いて防衛反応を無意識に起こしたのであり、被害者は自分を責めたり否定したりする必要はない。抵抗の出来ないか弱き女性を、思うままに凌辱した男性が卑怯なのである。

性的暴行を受けた被害者で、シャットダウンを起こしてしまった女性はその後、新しく進化した腹側迷走神経を働かせることが出来なくなる。そうなると、トラウマやPTSDを克服できないばかりか、正常な社会生活や社会的交流が出来なくなり、メンタル障害を背負うことが多い。ましてや、その後に異性と付き合えなくなるとか、セックスが出来なくなったり性的快感を得なくなったりする。だから、性的暴力は被害者の人生そのものを狂わせてしまうものなので、死刑に値する重罪なのである。ただ、ポリヴェーガル理論を用いた適切なアプローチをすれば、シャットダウン状態から救い出せるということを最後に付け加えたい。

※イスキアの郷しらかわでは、過去に性的暴行を受けて現在もメンタルを病んでいるとか、トラウマを抱えて生きづらいという方に、何故克服できないのかをポリヴェーガル理論を駆使して説明します。と共に、迷走神経によるシャットダウン状態から抜け出すための音楽療法やボディーワークを詳しく丁寧に説明します。

月経前不快気分障害PMDDの原因

女性なら誰でも月経前の時期は、不快で憂鬱な気分になりがちである。月経前症候群(PMS)という、辛い心身の症状がある人がいる。そして、そういう月経前の困った精神症状が強く出る障害を月経前不快気分障害(PMDD)と呼んで、ひとつの疾病として取り扱い、治療を受けている人もいる。このような月経前の辛さは、我々男性には想像もつかないが、各種メンタル障害を起こすケースもあるし、強いうつ症状を呈する人も少なくないという。そして、医学的なアプローチをしても、症状が改善することは期待できないという。

PMDDは、複雑で実に不快な気分にさせてしまう。その中で一番困る症状は、怒りが爆発することである。家族の何気ない言動に我慢ならず、いきなりキレてしまい、怒りを相手にぶつける。当然、けんか腰で言い合いになるし、関係性を損なってしまいかねない。家庭だけではなく、職場でも同様のことが起きてしまう。さすがに上司には盾突くことはないものの、上司や同僚の言動に怒りを感じてしまう。それをじっと我慢しなければならないとストレスが溜まってしまい、しまいには職場で孤立してしまうこともある。

このPMDDの症状で困るのは、イライラが募ってしまうことである。必要以上にイライラして攻撃性が出るというのは、本当に困ったものである。怒りや憎しみの感情が沸騰してしまい、ついつい相手を攻撃しがちである。爆発しそうになる怒りをないことにしてしまわないと大変なことになるからと、ついつい感情を押し込んでしまう。そうすると、腰痛や肩こりなどの症状が出やすい。かと言って、怒りを相手にぶつけてしまうと、夫婦喧嘩や親子喧嘩になりやすい。職場で怒りを爆発させてしまうと、仕事が長続きしなくなる。

PMDDという辛い精神症状を、周りの人に理解してもらえないというのも苦しい。特に、男性はその不快な気持ちを理解できないから、家庭でも職場でも寛容に扱ってくれない。自分の努力次第で乗り越えられる筈なのに、そんなに怒りを爆発させるのは、人間が出来ていないからだと思われてしまうことが多い。男性はその深刻さを知らない故に、月経前の不快な気分なんて、気持ちの持ちようでいくらでも吹き飛ばせると考えがちである。ところが、これは自分の努力ではどうにもならない難治性の精神症状なのである。

PMDDの原因が、女性ホルモンの異常から起きると考えられることから、婦人科で治療を受けるケースが多い。あまりにも酷い症状には、経口避妊薬(ピル)を処方することもある。うつ病の症状が出る場合は、抗うつ剤の投与も考慮される。女性ホルモンの異常、またはセロトニンの不足によってPMDDが発症すると思い込んでいる医師が多い。しかし、ホルモン量の検査をしてみると、異常が発見されることは極めて少ない。ましてや、幼児期からの育成歴や親との関係性やパートナーとの関係性などを詳しく問診する医師がいないので、本当の原因を探り当てることはまずないであろう。

PMDDの患者さんに、HSP(神経学的過敏症)であるかどうかを問診すれば、おそらく多くの項目で当てはまるに違いない。そして、親との愛着について詳しく聞いてみれば、愛着障害であることに気づく筈である。つまり、PMDDの患者さんの多くは、愛着障害によって症状が現れていると推察される。したがって、PMDDはホルモン治療などの医学的なアプローチでは改善されないということである。適切な愛着アプローチをすれば、症状が軽減する可能性があるということでもある。

愛着障害の人は、オキシトシン・ホルモンの分泌量が極めて低いことが判明している。オキシトシン・ホルモンの分泌量が低いために、不安・恐怖感が強くて、いつも最悪の未来を予想してしまうと共に、パートナーを心から信頼することが出来ない。職場では上司や同僚の善意を感じることが出来なくて、悪意を感じてしまいがちになる。月経前には、何らかの理由によりホルモンバランスが崩れて、オキシトシン・ホルモンやセロトニンホルモンが欠乏すると思われる。その為に、PMDDの症状が強く出てしまうのだと推察するのが妥当であろう。PMDDの患者さんは症状改善を諦めているが、愛着アプローチによって症状が収まる可能性があるので、試してみてはどうだろうか。

ゲーム障害(依存症)を克服する

ゲーム依存症という精神疾患の医学的診断名は、正式には存在しなかった。つまり、病気としては認めていなかったのである。ところが、WHOは『ゲーム障害』という名前の精神疾患として認定することにしたという。今後、ゲームに依存し過ぎて、長期間に渡り通常の生活に影響を及ぼすような状況にあると、ゲーム障害と診断されることになる。今までは単なる依存の一形態だというとらえ方で、医学的治療の対象とはならなかったが、今後はゲーム障害という正式な診断名が付いて、医学的なケアを受けられるということになる。

今まで、ゲームに依存し過ぎてしまい、ひきこもりになったり学校や職場に行けなくなったりする若者や中年は多かった。我が子がそういう状況に追い込まれても、親はどうすることもできなかった。なにしろ、病気でもないから病院にも連れて行けないし、誰にも相談することができないから、悩み続けるしかなかった。今後は、病気なのだから精神科クリニックか心療内科で診察やカウンセリングを受けることが出来るようになった。しかしながら、ゲーム障害を本人は病気だと認めないし、医療レベルで治すのは非常に難しいと言えよう。

ゲーム障害を医療レベルで治すのが何故難しいかというと、現代の精神科領域における投薬中心の医療では、ゲーム障害を乗り越える治療をすることは不可能に近いと言える。他の薬物依存やギャンブル依存などの依存症においても、精神医療の対象としてやっかいなものはないのである。依存症の治療に対して、ほとんどの精神科医は及び腰になってしまう傾向がある。何故なら、依存症を完全に治癒させる方法が見当たらないのである。ましてや、ゲーム障害が深刻な病気だという認識がないから、治療に真剣にならないことが多い。

ゲーム障害になるそもそもの原因を、精神科医、またはカウンセラーやセラピストが正確に把握しているとは思えない。新しい依存症であるから、研究の成果も上がっていないことから当然なのかもしれない。これから、ゲーム障害について研究が進めば、原因も解明されてくるかもしれないし、治療法も確立されてくるであろう。しかし、現在ゲーム障害に陥っている我が子を何とか救い出そうと悩み苦しんでいる保護者にとっては、一刻も待てない状況に違いない。ゲーム障害は、当事者が病気だという認識がないから深刻なのである。

ゲーム障害は疾病であるが、その原因は脳の異常によるものではないかとみられている。前頭前野という理性を司る脳分野があるが、ゲーム障害の人はその前頭前野の機能が著しく低下しているらしい。やってはならないと思いながら、ついついゲームにのめり込んでしまうという。依存症の人たちは、感情のコントロールが苦手であることが多い。不安感や恐怖感も強く、五感の強い刺激に敏感で傷つきやすい傾向がある。安全な居場所がないと思う人が多く、満たされない思いに支配されていることが多い。だから、ゲームにしか喜びを見いだせないし、ゲームをしている時だけ不安を忘れられるから、のめり込むのであろう。

どうして脳の異常が起きるのかというと、オキシトシンホルモンの分泌低下とセロトニンの分泌低下が起きていると思われる。特にオキシトシン不足からいつも不安感や恐怖感にさいなまれていて、自分にとって安全な居場所がないと感じている。苦難困難にぶつかると乗り越える勇気が持てないから、ゲームに逃げ込んでしまうのだと思われる。ゲームにのめり込んでいる時間だけが、不安や恐怖から解放される。または、満たされない思いや誰からも愛されていないという思いから、ゲームをしている時だけ心が満たされると勘違いするのかもしれない。強烈な孤独感に陥っていることも多い。ゲームをしている時間だけが、自分の幸福だと思い込むのだろう。

このようなオキシトシンホルモンの分泌低下が起きるのは、愛着に問題があるからだと思われる。親との愛着が傷ついていたり不安定になっていたりすると、オキシトシンホルモンの分泌が低下してしまう。すると、いつも不安感や恐怖感が高まっている状況になり、自分にとって乗り越えることが難しい課題が起きると、ゲームに逃げ込んで依存することになる。つまり、ゲーム障害になるそもそもの原因は、愛着障害なのではないかと思われる。そうだとすると、ゲーム障害を乗り越えるには適切な愛着アプローチが有効だということになる。ゲーム障害に陥っている当事者とその母親などの家族に対して、適切な愛着アプローチをすることで、ゲーム障害を克服できるのではないだろうか。

※我が子がひどいゲーム障害のために、生活に支障を来していて、とても困っている保護者がいましたら、是非「イスキアの郷しらかわ」にご相談ください。問い合わせフォームからまずは相談の申し込みをしてください。

休職者の職場復帰が実現するには

メンタルで休職している社員・職員が非常に多い。うつ病や双極性障害などの気分障害を起こして、職場に行けなくなってしまうケースが殆どである。もし自営業であるならば、休業せざるをえなくなってしまう。その原因は、職場における人間関係にあると言われている。さらに、本人の気質や言動にも原因があると見ている関係者が多い。中には明らかなパワハラやセクハラ、またはモラハラなどの被害が深刻な故に、メンタルを病んで休職や退職に追い込まれてしまっている社員・職員が多いのも実情だ。

休職している人の中には、あまりにも酷い仕打ちを受けて、パニック障害やPTSDになってしまい、ひきこもりの状態になってしまっている社員・職員も多いらしい。こうなると、職場復帰が難しいばかりか、社会復帰さえ困難になってしまう状況になることが多い。このような状況になってしまった社員・職員をどのようにして職場復帰させるか、管理者にとって悩ましいことである。大企業であれば専門のセラピストを雇用して対応したり、復帰に向けた専門施設を利用して復職プログラムを実行したりして、復帰支援をしている。

しかし、残念ながら中小企業や行政機関は、そのような至れり尽くせりの手厚い復職支援策をしてはくれない。中でも休職者が多い教職者に対する復職のための支援は、学校においても教育委員会においてもまったくない。教職員が休職したり離職したりするのは、まったく自己責任と捉える傾向がある。ベテランの教職者を育てるのに、どれほどの時間と費用がかかっているのか知らない訳でもないだろう。復職できないままの休職者を放置するということは、国として、また教育界として多大なる損失ではないだろうか。

メンタルによる休職から完全に職場復帰するのは、かなり難しいことだと認識されている。ましてや、数か月に及んだ長期休職者が以前のように元気で働くことはまず皆無と言ってよい。まず、メンタル疾患や各種障害が医学的治療によってその症状が和らぐことが極めて少ないという事情がある。また、休職してしまう背景が職場環境にあるとすれば、休職前の職場に復帰するのは難しいと言える。そして、職場復帰ばかりか社会復帰さえできなくて、ひきこもりの状況に追い込まれてしまうケースも少なくない。

そんな休職者への職場復帰支援策が、例外的に見事に成功するケースがある。それは、愛着アプローチという手法を選択して実施した場合である。この愛着アプローチというのは、傷ついてしまった愛着を癒すことである。または不安定な愛着を安定した愛着に戻す作業でもある。傷ついた愛着や不安定な愛着を抱えてしまうことを愛着障害と呼んでいる。メンタルによる休職者のほとんどが愛着障害を抱えている。そして、この愛着障害が愛着アプローチによって癒されることで、メンタルも改善されて職場復帰が可能になるのである。

職場復帰支援は、休職している当事者だけに施されるのが通常であるが、愛着アプローチは当事者だけでなく、その家族にも実施されるケースが多い。愛着アプローチが劇的に効果を上げるのは、当事者の母親に実施した場合である。愛着障害になる原因が、親と子の関係性にあるのだから、当事者である子だけでなく親にもアプローチするのは当然であろう。とりわけ親子の絆の深さや豊かさが大切なのは、母子のそれである。母親と子どもとの関係性が非常に良ければ愛着障害になりにくいし、メンタル障害になることはまずない。母親が子どもの安全基地(安全で心から安心できる守り本尊)となっていれば、メンタルが安定しているし、どんな苦難困難も乗り越える勇気を持てるのである。

愛着アプローチにより、母親の安全基地としての機能を取り戻すことができる。愛着アプローチを支援者(カウンセラーorセラピスト)が適切に母親に実施すれば、劇的な効果が現れる。この適切な愛着アプローチを実施できる支援者は、優秀なメンターでなければ効果をあげることができない。適切な共感的メンタライジングや認知的メンタライジングを駆使して、母子の関係性を良好で豊かな愛が溢れるものに修復することが出来たら、愛着障害は克服できる。愛着障害を乗り越えることが出来たら、メンタル障害は改善されるし、職場復帰も可能になる。ところが、職場復帰支援が母親に対してまで実施されるケースはないし、メンタル障害を起こした当事者の母親への積極的アプローチがされることは少ない。医学的アプローチだけでなく愛着アプローチも検討してみてはどうだろうか。

※「イスキアの郷しらかわ」では、愛着障害についての研修を実施しています。そして、愛着障害を乗り越える愛着アプローチのやり方についてもお伝えしています。どうして愛着障害が起きてしまうのか、その愛着障害をどのようにすれば乗り越えることが出来るのかを丁寧に説明します。まずは、問い合わせフォームからご相談ください。

メンタル不調の原因は愛着障害にある

複雑なメンタルの不調を抱えている人が多いが、それらのメンタル障害が愛着障害によって発症していることが判明したという。メンタル障害の医学的治療は難しいし、効果は限定的である。さらに、それが愛着障害から発症したものであれば、薬物治療などの医学的治療で根治するのはなおさら困難である。現代医療では治療が困難だとされる、双極性障害、慢性うつ病、気分障害、境界性パーソナリティ障害、PTSD、摂食障害、妄想性障害、各種依存症、ADHDなどは愛着障害による影響が大きいとされる。それらのメンタル障害が、適切な愛着アプローチによって見事に改善するという。

不登校やひきこもり・ニート、休職者の当事者は複雑なメンタル障害を抱えているケースが少なくない。そして、その根底になっているのが愛着障害だと推測されるケースが殆どである。愛着障害というのは、英国の児童精神科医ジョン・ボウルビーが1950年頃に提唱した、児童精神発達障害理論のひとつである。愛着障害は日本の精神医学会ではあまり注目されてこなかったが、近年大きな話題を集めている。著名な児童精神科医である岡田尊司氏がその豊富な臨床経験によって編み出した愛着アプローチが多大な実績を上げているからだ。

岡田尊司先生は、長い期間に渡って少年院に送致された子どもたちの精神的ケアーに携わっていらした。その中で、それらの生きづらい少年たちが複雑なパーソナリティ障害を抱えていることに驚き、その克服に尽力されてきた。現在は、大阪で岡田クリニックを開所されて、メンタル障害で苦しむ青少年たちの治療をされているという。そして、岡田先生はパーソナリティ障害などのメンタル障害の根底に、愛着障害が潜んでいること気づき、愛着アプローチを実践して、多大な効果を上げているのである。

不登校やひきこもりの青少年たちだけでなく、生きづらい大人にも愛着障害が潜んでいるし、各種のパーソナリティ障害に苦しんでいる人々にも根底に愛着障害があるというケースが多い。愛着障害というと、乳幼児期に養育者からひどい虐待やネグレクトを受けた子どもたちが持つ障害だと思われている。または、乳幼児期に養育者から見捨てられる経験で愛着障害になると思われてきた。ところが、ごく普通の家庭で育てられた子どもでも愛着障害を抱えているケースが少なくないという。そして愛着障害から発症したパーソナリティ障害などのメンタル障害で苦しむ大人に成長してしまうケースが多いのである。

すべてのメンタル障害が愛着障害から発症しているとは言えないが、想像以上に愛着障害が根底にあるケースが多い。薬物治療などの医学的な治療ではまったく効果がなかった症例が、愛着障害と診断され、適切な愛着アプローチを受けると見事に改善されるのである。それも驚くことに、愛着障害を抱えた当事者への愛着アプローチだけでなく、母親に対する愛着アプローチのほうが大きな効果を上げることが多いというのである。今までの医学理論ではそんなことはあり得ない。しかし、実際に母親への愛着アプローチによる支援によって、当事者の症状が劇的に改善するのである。

愛着障害が発症するのは、虐待やネグレクトなどの特殊なケースだけではない。ごく普通の家庭教育を受けて、家庭の外から拝見すると親から愛情一杯に育てられて、何も問題がないと思われているケースでも愛着障害が発症してしまう。特に、両親が高学歴で知能レベルが高く、あまりにも教育熱心な親である場合が多い。子どもに対して必要以上に親が介入して、子どもの主体性の発達を阻害してしまうのである。こういう場合は思春期に、いじめなどをきっかけにして、強迫性障害、摂食障害、不安障害などを発症して、不登校やひきこもりを起こしやすい。酷くなると、家庭内暴力までも起こす。これも愛着障害である。

不登校、ひきこもり、メンタル不調による休職などは、殆どのケースで愛着障害が基になっていると言っても過言でない。したがって、医学的な治療ではまったく効果がないが、適切な愛着アプローチによる支援を受けると見事に回復して社会復帰する。この愛着アプローチとは簡単に言うと、不安定になった親子の関係性(愛着)を、親密で安定した関係性に戻すことである。それも、当事者よりも母親への適切なアプローチ(支援)のほうが、効果が大きいという。母親からの子どもに対する愛情が、寛容性と受容性の極めて高い母性愛に変容すると、子どもは変わる。まさに親が変わると子は変わるのである。

※愛着障害が根底にある不登校、ひきこもり、メンタル不調による休職者への愛着アプローチによるサポートを「イスキアの郷しらかわ」では実践しています。特に、子どもが不登校、ひきこもり、休職などの問題を抱えて悩んでいる母親に対する支援をさせてもらっています。愛着障害が起きる原因とその対策に関する研修、そして実際に愛着アプローチのやり方を学ぶことが可能です。まずは「問い合わせフォーム」からご相談ください。

摂食障害を乗り越える

摂食障害に苦しんでいる人たちは、世間で想像している以上に多い。何故ならば、当事者は勿論のこと保護者も内密にしているので、文科省や厚労省はその実数が掴めていないからである。児童生徒の時から摂食障害の辛い症状が始まる場合もあるし、青年期に起きるケースもある。いずれにしても、圧倒的に青少年の時期に摂食障害が始まることが多い。摂食障害の症状は、過食、拒食、そして過食の後に嘔吐するという特徴的な状態が続くのである。最初は拒食から始まることが多く、その後過食の症状になり、拒食と過食を繰り返し、最後は過食後に吐くという症状を長く続けるケースが多いと言われている。

摂食障害は病気ではないと思っている人が多い。だから、治療も受けず当事者と家族は苦しみ続けている。確かに厳密に言うと病気ではないが、メンタル障害であるのは間違いない。心療内科などのクリニックに通院している人もいるし、重症の場合は極端な栄養障害に陥り、入院するケースもある。投薬治療も行われるが、あまり効果は期待できない。劇的に症状が改善する場合もあるが、治癒することなく長い期間に渡り摂食障害の症状で苦しんでいる人が多い。20年以上の長きに渡り摂食障害で苦しんでいる人も少なくない。

摂食障害が治りにくいのは、そのはっきりした原因が掴めていないからである。これだけ医療や精神医学が発達しているのに、まだ摂食障害の原因は謎の部分が多い。例え原因が特定されても、その原因を解消することが極めて難しいというケースが多い。つまり、摂食障害というのは難治性の症状だと言えよう。摂食障害の症状が起きるのは、脳の神経伝達回路の異常ではないかと考えられている。それでは、この神経伝達回路異常が起きるそもそもの原因は何かと言うと、完全には解明されていない。だから治りにくいのである。

摂食障害の症状が現れる子どもや若者に共通していることがある。それは、とても生きづらい生活を送っているという点である。その生きづらい生活というのは、言い換えると愛に飢えているということが言える。つまり、溢れる愛によって満たされていて、人生を楽しんでいるような子どもや若者は、摂食障害の症状が起きにくいということである。また、必要以上に無理したり我慢したりしている子どもや若者も摂食障害になりやすい。あるがままというか、自然体で生きているような人は摂食障害になりにくいのである。

すべてがあてはまるという訳ではないが、摂食障害を起こすのは、どちらかというと『良い子』である子どもが多い。無邪気でやんちゃで、自分の思いを親に素直にぶつけるような子どもは摂食障害になりにくい。手がかからず、親には一切反抗せず、親の機嫌を損なわないようにおとなしくしていて、我慢強くわがままを言わないような子どもが摂食障害を起こしやすい。そして、親からいつも「早くしなさい」「こうしないと駄目よ」「こうしたいんでしょ、こう言いたいんでしょ」と言動を先取りされて育った子どもが多い。さらに、自尊感情が育っていなくて、自己否定感が強い子どもというのが特徴である。

摂食障害という症状が起きるのは、心が不安でいっぱいになり恐怖が次から次へと押し寄せて、このままだと心が壊れてしまうのではないかという時に起きることが多いらしい。つまり、心が壊れてしまうのを防ぐのに、摂食障害という辛い症状を起こして防いでいるかのようである。心のバランスが崩れていくのを防衛するかのような不思議な働きと言えよう。だから、治りにくいのである。つまり、この崩れそうな心のバランスを正常に戻さないと治らないし、不安や恐怖感を収めないと完治しない。さらに、自己否定感情を払拭して、自尊感情を高めないと摂食障害の症状は収まらないのである。

脳摂食障害を治すのは、当事者の努力だけではなしえない。やはり、経験豊かで優秀なカウンセラーやセラピストの助けが必要だと思われる。そして、こういう摂食障害を乗り越えるには、家族も変わらなければならない。何故かと言うと、家族との関係性にこそ摂食障害が起きた原因が隠れているからである。何も親の子育てに問題があったという訳ではない。あくまでも、親子の関係性や両親夫婦の関係性にこそ、摂食障害を発症した原因があるということだ。という意味で、ミラノ型の家族療法である『オープンダイアローグ』が効果を発揮すると思われる。ご両親と当事者を含めたオープンダイアローグ療法が、家族の関係性における課題に気付かせ、自ら変わり関係性を修復することにより摂食障害を乗り越えることが出来よう。

※イスキアの郷しらかわでは、摂食障害の症状の克服に、オープンダイアローグを駆使しての対応をしています。出来る事なら親子一緒にオープンダイアローグを体験していただくのが最適です。家族療法というと、親が批判されたり子育ての拙さを指摘されたりするのではないかと危惧される方が多いと思います。しかし、オープンダイアローグは特定の誰かに原因や責任を押し付けることはしません。安心して、問い合わせをしてください。

自ら命を断つ前にすること

自殺をする人は、やや少なくなったとはいえ、年間3万人弱の数に上っている。しかしながら、実際は自殺者の数は3万人弱だけではない。この数は、あくまでも遺書を残していて、明らかに自殺としか思えないと確定した人数である。ましてや、自殺行為をしてから24時間以内に亡くなった人だけがカウントされていて、2日目以降に亡くなった人はこの人数に含まれない。また、発作的に電車に飛び込んでしまった方は事故死として処理され、自殺者としてはカウントされない。実際の自殺者数はこの倍以上に上ると推測される。

どうして政府は実際の自殺者を少なく見せているのかというと、これだけ多い自殺者を救う手立てをしていないのではないかと非難されるのを避けているからである。その証拠に、自殺者数が3万人を下回るようになったのは、厚労省や警察庁が自殺防止対策を講じたからだと自画自賛している。他の先進諸国と比較しても、こんなにも異常に多い自殺者を出している国はない。自殺をする人を救えない、無策な厚労省と言われても仕方ないであろう。自殺予防の対策をしているとは言いながら、効果を上げていないのは事実である。

自殺をする方をどうにかして救えないものであろうか。「こころの健康相談ダイアル」という自殺願望者の方が電話相談をするセンターがある。これは、あくまでも電話の相談だけであり、リアルに会ってカウンセリングをしてくれる訳ではなく、医療機関などを紹介されることが多い。『自殺サイト』と呼ばれる、自殺願望者や自殺に興味のある方が集うサイトがある。この自殺サイトは、自殺を思い止まらせてくれないばかりか、適切な自殺の方法を教えたり、背中を押したりするような不適切行為をする処もある。

自殺願望者を救ってくれるような処は、医療機関やカウンセラーしかなさそうである。自殺願望者を救うという高度な知識や技能というのは、専門家しか出来ないと思われている。しかしながら、自殺願望の方を思い止まらせてくれる民間の施設がある。佐藤初女さんが主宰していた『森のイスキア』という青森県の弘前にある宿泊施設である。この世に絶望してしまい、生きていても仕方ないと思い込み、自殺をしようと思っている方が、最後に訪れる施設である。この施設を訪れて、佐藤初女さんの温かいおもてなしを受けると自殺を思い止まるのである。

佐藤初女さんは、特別なカウンセリングやセラピーを実施する訳ではない。ただ、黙ってこの世に絶望した人の話を聞くだけである。けっして否定せず、ただ共感するだけである。じっと話を聞いて寄り添うのである。そして、佐藤初女さんの心尽くしの手料理を食べて、何日か宿泊すると元気になって社会に戻って行けるようになる。しかしながら、その佐藤初女さんは、2016年の2月に還らぬ人になってしまわれた。その後、この世に絶望してしまった人を救う『森のイスキア』の扉が二度と開かれることはなくなってしまった。

この佐藤初女さんの森のイスキアのような施設は、全国を探しても他にはない。佐藤初女さんのように偉大な方は、もう2度と現れないに違いない。日本のマザーテレサと呼ばれて、多くの方から慕われていたのだから、後を継げるような人はいないだろう。しかしながら、自殺をしようとしている方々を救う場所は必要である。例え佐藤初女さんには遠く及ばないとしても、10分の1でも100分の1でも佐藤初女さんに近づきたいと、森のイスキアと同じような施設を開設した。それが、福島県の塙町という田舎に開設した『イスキアの郷しらかわ』である。

この世に絶望してしまい、自らの命を断ってしまうしかないと思っていらっしゃる方がいたとしたら、もう一度思い止まって考えてほしい。自殺をするという決意は固いとしても、最後に『イスキアの郷しらかわ』で最後の時間を過ごしてみてからでも遅くはない。自殺をするにしても、最後の数日をイスキアの郷しらかわで愛情の籠った心尽くしの食事を食べて、自分を苦しめている悩み苦しみを一度手離して、もう一度生きる意味を考えてみてはどうだろうか。イスキアの郷しらかわでは、何も聞かず問い質すこともせず、けっして否定せず、何も強いるようなことはしない。ただそっと寄り添うだけであり、傾聴し共感するだけである。もう一度だけ、自分の悩み苦しみを話してみてはどうだろうか。

※イスキアの郷しらかわは、もう生きていても仕方ない、生きる希望もない、自分なんか生きる価値もない、死んでしまうしか他に方法がないと思っていらっしゃる方を受け入れています。もしかすると何かしらこの社会に生きる意味や、自分に課せられた使命に気付くことができるかもしれません。一縷の望みでもなんでもいいから、もう一度だけ数日だけでもイスキアで過ごしてからにしようと思ってくれたら有難いことです。下記の問い合わせフォームから、まずはご相談ください。

    ひきこもりやニート対策を営利事業に?

    ひきこもりやニートと呼ばれる若者が、残念なことに年々増加している。そして、これからも増加の一途を辿る可能性が高い。親としてみれば、何とか社会復帰させたいと思うのは当然だ。ましてや、自分が生きているうちは何とか面倒をみられるが、もし先に他界してしまえば子どもが困るだろうと思い、あらゆる対応策を考えるようだ。そんな困りきって藁にもすがりたい親や当事者から、ひきこもりやニートを必ず社会復帰させますと謳い、高額の滞在費やセミナー費をむさぼる業者がいるらしい。

    その殆どの業者は、数か月という長期間に渡り滞在させて、セミナー費用として請求するという。安くても月額30万円、酷いケースだと月額50万円以上にもなるという。そして、この滞在期間は、1ケ月では済まなくて、滞在を何度も繰り返させるケースも多いし、良くならないからと何か月も滞在させる例も多いらしい。食事も提供するのだから、そんなに高くないと考える親と当事者も多いらしい。しかし、食事内容も学生相手の食堂並みであるし、居住スペースも狭くて、研修や体験内容もお粗末な場合が多いという。

    セラピストやカウンセラーも常駐して、個別に相談も受けるというが、果たして画一的な心理療法や研修内容で社会復帰できるものだろうか。ましてや、完全に営利を目的にした法人が運営している施設である。なるべくクライアントを多く集めたいし、せっかく集めた利用者を手放したくなるのは当然である。何やかやと手を尽くして完全復帰を先延ばしたくなるのは経営者として考えたくなることである。精神科病院が『固定資産』と称して、精神疾患の患者を囲い込んだ過去の不幸な歴史と、構図が似ている。

    こきこもりやニート対策は、ビジネス(営利事業)として実行されてしまうと、クライアントを囲い込む傾向が強くなる。なにしろ利用対象者は大切な顧客なのである。せっかく得た顧客を無くしたくないし、長期に利用してもらえば収入も上がる。だから、このような福祉的な事業は公的機関が実施すべきなのである。しかし、障害者認定されてなければ、公的扶助や支援の対象ともならないし、公的機関が本格的な宿泊施設を活用したひきこもりやニート対策を取るにはハードルが高い。ひきこもりやニートに多額の公費をつぎ込むことに対しては、市民の理解を得られにくいであろう。

    さらには、ひきこもりやニートをどのようにすれば解決できるのか、行政機関が明確な答を見つけられるとは思えない。ましてやひきこもりやニートの本当の原因を、行政側で認識していないように感じられる。となれば、民間の福祉関連施設がその役割を担うしかないだろう。しかし、民間の法人がひきこもりやニートの社会復帰訓練施設を公的援助なく運営するとなれば、相当に高額な利用料にならざるを得ない。ましてや、多くの職員を雇いビジネスとして事業経営するとなれば、収益を上げることに躍起となるのは当然である。

    ひきこもりやニートを社会復帰させる研修は、一筋縄では行かない。乳幼児から十数年もの育児や家族との関わりから起きてきたことであり、そもそも社会に問題があるからこそひきこもりやニートに陥ったのである。単なるカウンセリングやセラピーだけで社会復帰が実現する訳がない。ひきこもりやニートの社会復帰支援は、家族療法や当事者の価値観教育なしには不可能である。ましてや、当事者の事情や人格は様々であるから、個別対応をきめ細かく実施しなければならない。だから、ビジネスとしては不似合いなのである。

    完全復帰を目指したひきこもりやニート対策が出来るのは、限られた施設であろう。農業体験や自然体験を十分に行いながら、家族を呼んでミラノ型の家族療法をすることが出来る施設が望ましい。それも、オープンダイアローグの心理療法を駆使したセラピーができるような施設であればなおいいだろう。何十人も一緒に生活するような施設では、こういう対応は難しいし、ましてや収益の上がらないような対応策は取りたがらないであろう。こじんまりとした個別対応のできる農家民宿が、ひきこもりやニートの社会復帰訓練には一番ふさわしいと思われる。いずれにしても、ひきこもりやニート対策事業は営利企業にとっては荷が重すぎる。

    ※「イスキアの郷しらかわ」では、ひきこもりやニートの社会復帰支援をしています。農業体験や自然体験をしながら、オープンダイアローグ療法もします。何故生きるのか、働くという意味や意義についても、哲学を基本にしたレクチャーをしています。イスキアの事業は、理念にも書かれている通り、営利を目的にしたものではなく、社会貢献活動として実施しています。まずは問い合わせフォームからご相談ください。

    夫現病を治す方法

    ご婦人の不定愁訴症候群のうち、他の特定のストレス要因がなくて、夫が原因としか考えられないものを『夫原病』と呼ぶという。この夫原病が益々増加しているし、その症状が深刻化しているという。そして困ったことに、この夫現病がそのまま改善しないと、重大な免疫疾患や内分泌疾患にもなりやすいし、うつ病やパニック障害などの精神疾患に追い込まれることが多い。さらには、これらの症状を放置しておくと、乳がん、子宮がん、卵巣がんになるケースも少なくないから、軽症のうちに治す必要があるとみられる。

    ところが、この夫現病を治癒させることが非常に難しいのである。元々、夫の言動や関わり合いが原因なのだから、投薬治療やカウンセリングで完全治癒することは期待できない。夫が変わらない限り、この夫現病は完全治癒することはない。または、夫と離婚すればこの夫現病から解放されるが、子どもが居れば踏み切れないし、離婚したあとの経済的な不安があると思いきれないものだ。自分が原因だと分かったとしても、夫は自分から変わろうとはしない。ましてや、ドクターから夫原病だと宣言されても納得できないのが人間だ。

    だとすれば、夫原病になった妻は一生この苦しさに甘んじなければならないのか。ましてや、夫が高い社会的地位や立派な職業に就いていて、高収入で経済的にも裕福な暮らしを保証している夫婦関係であればあるほど夫原病を発症しやすいから複雑である。自分が我慢しなければならないと思うほど、そして良妻賢母ならなおさらこの夫現病になりやすいから、治りにくいのである。妻よりも夫の方が社会的成功者に見られていて、圧倒的に優位な立場であるほど、夫原病が完治することが少ないというのである。

    ひとつだけ夫原病を治す方法がある。教養や学歴が高くて、プライドの高い夫が唯一自ら変化しようとする心理療法があるのだ。それは、オープンダイアローグという最新の家族カウンセリング療法である。フィンランドのセイックラ教授が開発した、難治性の精神疾患を完全治癒させるという精神療法のひとつである。これを夫婦に対する家族カウンセリング療法として実施すれば、かなりの効果を挙げることになろう。このミラノ学派の家族カウンセリング療法は、家族内に存在する病理を糾弾することはないし、介入することはない。だから、夫も協力的な態度をしてくれるし、自ら変わろうとするのである。

    通常、メンタルの疾患の原因が家族にあるとすれば、家族に対するカウンセリングを行い、その病理を明らかにして、メンタル疾患の原因になっている家族の言動を変化させるという手法を取ることが多い。ただし、その場合家族の疾患の原因が自分にあると指摘された本人はどのように感じるであろうか。おそらく、原因が自分にあるとされたならば、当事者はおおいに反発するに違いない。ましてや、妻の病気の原因が自分にあると断言され、あなたは変わらなければならないと言われたら、相当なショックを受けるし、反論したがるのは目に見えている。自分だけの責任ではないと、変化するのを拒むに違いない。

    オープンダイアローグ(以下ODと略する)という家族カウンセリングの手法は、今までのそれとはまったく違うのである。だから、治療効果が高いという。ODは基本的に確定診断をしないし、治療計画を示さない。当然、診断をしないのだから原因も追究しない。ましてや、特定の誰かに疾患の責任を負わせることをしないのである。どうするのかというと、当事者と家族に対してセラピストが開かれた対話を繰り広げるだけである。それも、当事者のつらくて苦しい状況とその気持ちを聞き取って明らかにするだけである。さらに、どのような時にそういう症状が起きるのかを否定せず共感的に傾聴するだけである。

    ODをするセラピストは、家族関係に対して一切『介入』をしない。つまり、インプットをしないしアウトプットも求めない。あくまでも、家族が自分たちで現状をどのように認識して、自分がどうすれば良いのかを気付き学ぶ場を提供するだけである。ODのセラピストは、当事者が治癒することを求めないのである。そんな馬鹿なと思うかもしれないが、人間というのは何か変化することを他人から求められると拒否するからである。人間が本来持つ『自己組織性』と『オートポイエーシス(自己産生)』を引き出すのが、ODなのである。ODを続けて行くと不思議なことに、本人自ら変わろうとするのである。当事者も含めた家族全員が、自分から変化したいと心から思うのである。これは、実に不思議な化学反応が起きると言えよう。夫原病を治すには、ODが最適だと言える所以である。

     

    ※「イスキアの郷しらかわ」では、オープンダイアローグの勉強会を実施しています。ODの手法を実際に展開しながら、その効果を実感することが可能です。家族カウンセリングをしたいからと、当事者と家族が一緒にセラピストを訪問するというのは、かなり敷居が高くて難しいことです。しかし、あくまでも心身の保養のために、一緒に農家民宿を利用するというのはハードルが低いと思われます。その際に、オープンダイアローグの手法を学びながら、家族カウンセリングを体験するという形を取れば、実質的なODが受けることが可能です。まずは「問い合わせ」フォームからご相談ください。

    ひきこもりは社会的な支援で解決

    ひきこもりの状態に追い込まれてしまっている人が益々増えている。そして、その実態が明らかにされていない故に、ひきこもりの解決を遅らせてしまっているだけでなく、固定化させてしまっている。当事者の家族が、ひきこもりの実態をひた隠しにしていて、誰にも知らせないようにしているからだ。隣近所の方たちはひきこもりにあることを薄々感じているものの、支援することも相談に乗ることも出来ず、手をこまねいている。

    ひきこもりが増えて固定化しているが、行政は手出しが出来ないでいる。当事者や家族が支援を要請しない限り、行政は何らサポートが出来ないからである。もし万が一、支援を行政に願い出たとしても、ひきこもりを解決する有効な手立てはない。保健師や精神保健福祉士などの専門家が家庭に赴いて支援行為をしようとしても、当事者は面談を受けないであろうし、家族だって面倒なことになることを回避したいと思うに違いない。長年に渡りひきこもりの状態にあり、一応平穏が保たれていれば事を荒立てたくないからだ。

    ひきこもりの方々は、今の状況に甘んじている訳ではない。なんとか現状を打破したいと思っているし、社会復帰したいと願っているのは間違いない。しかし、そんな心とは裏腹に身体は言うことを利かないのである。ましてや、ひきこもりになった原因は、社会における間違った価値観による関係性の歪みや低劣さである。人の心を平気で踏みつけ痛めつけるようなことを日常的にしている、学校現場や職場の人々の悪意に満ちた環境に身を置くことなんか出来やしない。こんなにも生きづらい世の中にどうして出て行けようか。

    そして、ひきこもりの人々がそんな社会に対する不信感を持っていること、さらにはそんな気持ちを家族も含めて誰も理解してくれないことに対する焦燥感が著しいのである。行政や福祉の専門家たちは、そんなひきこもりの当事者の気持ちに共感出来ないのである。そればかりではなく、ひきこもりになったのは当事者のメンタルに問題があり、そのようにしてしまったのは家族に原因があると勘違いしているのだ。これでは、ひきこもりの当事者と家族だって、支援を求めたくなくなるのは当然なのである。

    それじゃ、ひきこもりのからの脱却は、間違った社会の価値観を改革しないと実現しないかというとそんなことはない。適切できめ細かな支援がありさえすれば、ひきこもりを乗り越えることが可能になる。しかし、今の行政に身を置く専門家にとっては、そのような支援は難しい。また、医療や福祉の専門家にも、そのような大変な労力を要する支援を提供する余力はないし、技能もないに等しい。だから、ひきこもりというこんなにも大変な問題が、社会的に置き去りにされてしまっているのだ。

    ひきこもりから脱却するには、どのような支援が必要かというと、次のようなものだと思われる。まずは、支援者はひきこもり当事者の心に共感をすることである。ひきこもりになったきっかけは、それこそ人それぞれで違っている。そういった過去の辛く苦しかった過去を否定することなく黙ってじっと聞いて共感をすることである。当事者のメンタルや価値観に多少の問題があるように感じても、その病理を明らかにしてはならない。ましてや、当事者の行動にこそ問題があったように思っても、批判的に聴いてはならない。あくまでも、本人の気持ちに成りきって傾聴することが求められる。

    出来たら、両親などの家族と一緒に話を聞けるなら、なおさら高い効果が生まれる。ひきこもりの家庭では、家族間での心が開かれた対話が失われている。この聞き取りと共感的な対話が、家族間にあったわだかまりやこだわりを溶かすことに繋がるのである。しかし、支援者はそのような家族間に存在する『病理』を指摘してはならない。あくまでも、現状における困っている事実や症状を聞いて行くだけである。その際に、聞き取った内容を出来る限りストーリー性のある言葉で言い換え、詩的で柔らかな表現に置き換えるのである。悲惨なこととして話した内容、憎しみや怒り、妬みや嫉みをストレートに表現すると、相手を非難している感情が強くなり過ぎるからである。

    このように『開かれた対話』を繰り広げて行くと、不思議なケミストリー(化学反応)が起きるのである。当事者とその家族がお互いに大好きで愛し合っているという事実に気付くのである。愛しているからこそ、憎しみという感情に転化している事実にも。そして、その互いの愛情表現がいかに稚拙であったかということに気付くと同時に、それぞれの深い関係性にも思いを馳せるのである。勿論、正しい価値観や哲学を学ぶことにもなるし、間違っている社会であってもそれに対処していける勇気を持つことが出来る。家族の豊かで強い愛が感じられれば、人間は強く生きられるのである。これが『オープンダイアローグ』という支援である。このようなオープンダイアローグにより、ひきこもりの当事者と家族を救えるように、社会的な支援として確立していきたいものである。

     

    ※「イスキアの郷しらかわ」では、このオープンダイアローグを活用したひきこもり解決の支援を実施しています。ご家族でイスキアにおいで頂ければ対応いたします。外出が出来ないという事情があれば、交通費をご負担していただければ、出張もいたします。まずは問い合わせフォームからご相談依頼のメッセージをください。ご親戚の方からのご相談も受け付けます。