イスキアの活動方針を転換する決意

 令和5年の新春を迎えて、この新型コロナ感染症などの社会情勢と自分の年齢や環境を考えたときに、今までの活動方針をこのまま続けていくべきかどうかの岐路に立たされたような気がした。今までの活動方針は、ひきこもりや不登校の若者またはメンタルを病んで休職や退職に追い込まれてしまった社会人が社会復帰できるように、様々なサポートをしていくというものであった。しかし、この深刻な感染症は収束の兆しを見せないし、自分の年齢も68歳という高齢になり、今までのようなアクティブな活動が難しくなったのである。

 残された人生を考えた時に、全国の利用者の方々をお迎えしたり、全国各地に赴いたりして出張カウンセリングを続けることが、今の社会にとって一番効果的な活動なのかという疑問にぶつかったのである。それよりも、この社会にイノベーションを効果的に起こす方法が他にあるのではないかと考えついたのである。それは、佐藤初女さんのご遺志をこの社会に敷衍させるにはどうすれば良いかの答でもある。佐藤初女さんのファンは全国各地にいらっしゃる。そして、初女さんと同じような活動をしたいと望んでいるファンも多い。

 佐藤初女さんが心血を注いでいらした活動の輪を、日本全国に広めて行くことが自分の使命なのではないかという考えに落ち着いたのである。その為に、自分として何が出来るのかをこの年末年始にかけて熟慮していた。このイスキアの郷しらかわの活動をしてきて、自分ひとりだけで頑張ったとしても、救える人々は僅かしかいないということも思い知らされた。それよりも、これから森のイスキアと同じ活動をしようとする人たちの支援をして、第二第三の佐藤初女さんが育って行くことをサポートしたいと思ったのである。

 森のイスキアは、佐藤初女さんが亡くなってから休眠状態にある。森のイスキアの扉は閉じたままである。そして、全国においても森のイスキアと同じような活動をしている処は殆どない。あまりにも佐藤初女さんが偉大であったということもあるが、初女さんと同じような活動をするのは、それだけ非常に困難だと言えよう。自分も活動していて、初女さんと同じように心折れた方々を癒すのは、非常に難しいと実感している。自分の生活を殆ど犠牲にする覚悟がなければ、森のイスキアと同じように活動するは不可能だ。

 ましてや、メンタルや身体を病んだ方々は、藁をすがる思いで頼ってくる。依存することもありえるし、転移をしてしまうケースもある。佐藤初女さんは、365日24時間に渡り電話応対をしていらしたし、イスキアの扉はいつも開けていたと聞いている。生きるエネルギーを喪失してしまわれた方は、無意識で相手のエネルギーを奪い取ろうとしてしまう。中には、すぐに効果が出ないからと責める方もいらっしゃる。クライアントからも恨まれることもあるだろうし、自分の無力感を思い知ってサポート者自身が心身を病むことさえある。

 心身を病んだ方々を癒してさしあげるという尊い活動をされている人は、外から眺めている以上に心身を痛めつけられている。自分の活動が上手く行かないことが多いからである。短い期間で成果が出ることが少ない活動だからだ。勿論、癒しの活動が効果をあげて感謝された時の喜びは大きい。しかしながら、それは一時的なことが多いし、心身の病が再発することが少なくない。このような活動は長い期間と多大な労力を要する。気の遠くなるような長い時間をかけて寄り添い支えて行く活動が必要なのだ。

 森のイスキアのような活動を引き継ぐ、第二第三の佐藤初女さんが生まれてこないのは、その活動が想像以上にハードであり自分自身の犠牲が多大なものであるからと言える。自分の生活をすべて捨てるという覚悟がなければ、出来ない活動だと言っても過言ではない。マザーテレサのように、信仰がなければあのような活動は難しい。佐藤初女さんが、信仰を持っていたから出来たとも言える。これから佐藤初女さんのような活動を志す人を、信仰のように支える存在が必要だと思った。故に、イスキアの郷しらかわは、これから佐藤初女さんを目指す方々を支援することにしたのである。見学や研修したい方々を受け入れる準備をしたいと思う。

“イスキアの活動方針を転換する決意” への8件の返信

  1. 素晴らしい働きをしていた方がいる事を教会のお友達が教えて下さいました。日本に、この様な方がいた事、本当に素晴らしいです。
    感動しております。
    私は今、神様に言われて大阪におります。
    地元は千葉県です。
    青森県にも神様が私に促しておられましたので、お祈りしておりました。

    1. 真野たか子さま、心温まる応援のコメントありがとうございます。
      わたくしは、信仰を持っているとは言えませんが、神様の存在は実感しております。
      いつか、お会いできることを楽しみにしております。

  2. はじめまして。私は新潟で、天使のはね新潟という赤ちゃんを亡くしたママの会の活動を今しています。佐藤初女さんのことは、10年前に、児童福祉施設で働いていたときに上司から教えてもらい知りました。それから初女さんマインドを軸に、相手の話を聞くようにしています。簡単にできることではないですが、お守りのようで、心のにふっと思い出したりすることで、あ~そうだった~と我に戻ります。
    実家が、お寺ですが、仏陀もキリストもいっていることは同じだなと思ってます。
    高校生の時から描いてた開かれた寺子屋のようなことができたらと思っていました。
    最近は海沿いのお寺で、海のイスキアなんていいかなと最近思っていました。
    私の目指すのは、宗教の垣根を越えた女性のための女性への寄り添い、です。
    春からまた気持ちを整えて、進んでいきたいと思います。

    1. 小池真由さま、コメントありがとうございます。
      素晴らしいグリーフケアを実践されていらっしゃいますね。

      ご実家がお寺さんなんですね。
      昔は、お寺というのは人々の集う場所で、ある時は学校であり、
      ある時は保育所、ある時は癒しの場所、ある時はカウンセラー
      の機能を有していたのですが、明治以降の廃仏毀釈運動によって、
      急激にその機能を削がれてしまいました。
      江戸時代には、手厚く保護されていたのに、残念です。

      キリスト教も仏教も目指すところは一緒ですし、
      共に全体最適の価値観ですし、関係性が大切だと
      説いています。

      海のイスキア、いいですね。
      寺子屋もいいですね。是非、実現させてください。
      陰ながら、応援しています。

  3. 大阪在住です。

    10年近く前に佐藤初女さんの講演会に行かせていただき、何が起きても『受け入れること』の大切さを教えていただきました。

    信仰心を持って活動されていた偉大な方がお亡くなりになられたことは残念でなりません。

    信仰心を持ちながら活動されていた佐藤初女さんとはタイプが違うかもしれませんが、看護師の経験を生かしながら、地域の人々を支えたいという信念を持って、おむすびを通して活動されている方が大阪にいらっしゃいます。

    小鹿千秋さんという方で、コミュニティナースとしての輪を広げ、活動されています。

    先日、LIFE~夢のカタチ~にも出演されていました。

    5月27日までTVerで観れますので、よろしければご覧になってみてください。
    https://tver.jp/lp/episodes/epwvqb47uo

    人との繫がりの場を作りたい、寄り添いたいという想いで活動されていて、佐藤初女さんを思い出しました。

    コミュニティナースと聞いて、新しいカタチ、流れができつつあるな〜と思った次第です。

    1. rikaさま、コメントありがとうございます。
      コミュニティナースという看護師さんがそれぞれの地域で活動されているのは、
      存じ上げております。新しい看護師の活動の場が広がっていることは、とても
      喜ばしいことです。ボランティア活動の真の目的は、『コミュニティケア』
      だと思っています。ばらばらになってしまったコミュニティを復活させ、そして
      地域の方々の関係性を豊かにするツールとして医療や介護・福祉は有効だと
      思います。コミュニティナースとして、地域に出ていき、人々を結びつける
      活動をしているというのは素晴らしいことですね。

  4. コメントお邪魔致します。
    これから活動する場を東京に持ちたいと思い、昨日はそのために支援してくれる方と会ってきました。
    私は一僧侶なんですが、
    これから、普段は悩めるひとの話を聞き、おにぎりとお味噌汁のお接待をし、求められれば、お見取りから僧侶が参加するお見取り葬を始めようと思っています。

    佐藤初女さんのようにはいかないと思いますが、微力を尽くしたいと思っております。

    1. 高橋秀緒さま、素敵な目標です。是非とも実現させてください。お寺の本来の役割である、癒しの場であり教育の場でもあり、コミュニティセンターとしての機能を取り戻されることをお祈りしています。僧職にある方は、江戸時代まではカウンセラー、セラピスト、メンター、教育者でありました。そういう役割を果たして頂けるのであれば、多くの市民の方から注目されるでしょうし、求められるでしょう。先進的な取り組みを応援いたします。

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