8050問題は解決できるのか

 8050問題は、その該当する家庭・家族・親族においても深刻な課題ではあるが、社会的にみても大変な問題となっている。いずれ親が病気なったり介護されたりするようになれば、ひきこもりの我が子を支援することや扶養することが出来なくなる。そうなると、ひきこもりに陥っている人を公的な支援で面倒をみるしか他に方法がなくなる。生活保護法や自立支援法による援助が必要になり、貴重な税金が使われることになる。憲法で生存権が保障されているのだから、社会で面倒をみるのは当然かもしないが、割り切れない思いがする。

 8050問題が深刻になると言われ始めてから、既に数年が経過している。抜本的な解決策は未だに見出せていないし、既に9060問題になっているとも言われている。政府内や国会でも盛んに議論され続けているし、都道府県レベルにおいても、そして市町村においても解決策を探し出そうと必死なのだが、ひきこもりは益々増加していて、手の打ちようがないという状況にある。民間の「引き出し業者」に依頼する保護者もいるが、効果が上がっていないようである。ひきこもりは、これからも増え続けることであろう。

 ひきこもりが何故増え続けるのかというと、その根本原因を正確に把握しいないからである。何となく子育てに問題があったのではないかと推測している人もいるが、その問題が何かというと正確に解っていないことが多い。親が甘やかし過ぎたからとか、過保護だったからと指摘する人もいるが、それは見当違いだと言える。本当の原因は、そのまったく逆である。過保護は問題ないし、甘やかせることは一向に構わない。甘やかしが足りなかったのであり、過保護にしてもらえなかったことでひきこもりになったのである。

 ひきこもりの真の原因は、『愛着障害』にある。愛着障害というと、虐待やネグレクト、または親の病気などによって起きると思われているが、実はそればかりではない。基本的には愛着障害は安全基地が存在しないことによって起きる。ごく普通に愛情不足なんてありえないくらいに子どもをたっぷりと愛して育てたのにひきこもりになったのだから、愛着障害なんてありえないと思う人が多いかもしれない。しかし、その愛情はまやかしであり、歪な愛情である。不純な愛情と言っても過言ではない。だから、子どもはひきこもりなのだ。

 どういう意味かというと、愛には無条件の愛と条件付きの愛があり、たっぷりと注いだつもりの愛というのは、実は条件付きの愛なのである。人間が正常に成長して自立する為には、まずは無条件の愛である「母性愛」をこれでもかという位に注ぎ続けなければならない。つまり、まるごとありのままに我が子を愛することである。そして、自分は親から愛されているという実感と、どんなことをしても親からは見捨てられないという安心感を醸成させなければならないのだ。子どもに安全基地が形作られてから、躾である父性愛を注ぐべきだ。

 ひきこもりの家庭においては、安全基地という存在がない。当然、子どもの心は不安感や恐怖感でいっぱいである。HSPが強く出ている。神経学的過敏だけでなく、心理社会学的過敏がある。だから、社会に出て行けないのである。自己肯定感も育っていない。小さい頃から、ああしろこうしろ、こうしては駄目だ、何故そんなことをするんだ、お前は何をしても駄目だな、というように否定され、支配され、コントロールされて育ってきた。これでは、自己肯定感なんて育つ訳がないし、自立なんて到底出来っこない。

 学校教育でも同じことをされ続けてきたし、いじめや虐待、不適切指導をされてきた。やっと就職した職場でも、パワハラ、モラハラ、セクハラ、いじめをされてきた。どこにも安全基地がなかったのだ。これでは、ひきこもりという選択肢以外は見いだせない。どうすれば、8050問題を解決できるかというと、愛着障害をまずは癒すことである。その為には、適切な愛着アプローチが必要である。80代の親が変われば良いが難しいので、誰かに臨時の安全基地になってもらい、適切なカウンセリングやセラピーを受けるしかない。または、オープンダイアローグ療法も効果的である。8050問題を解決するには、特効薬なんてない。地道な愛の溢れるサポートが必要なのである。

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