我が子をありのままに愛したいのに

 子どもが3歳になる頃までに、ありのままにまるごと愛し続けてあげれば、大人になっても健全で幸福な人生を歩める。つまり無条件の愛である母性愛を注ぎ続けることで、自尊心が芽生えて、自分をまるごと好きになれるし、どんな苦難困難も乗り越えられる。ところが、母性愛を十分に注ぎ続ける前に、父性愛(条件付きの愛)で接してしまうと、自己肯定感が確立されない。または、母性愛と父性愛を同時に注いでしまうと、愛着障害になることもある。お母さんは、我が子をまるごとありのままに愛したいと思うのである。

 ところが、我が子をまるごとありのままに愛することが出来るお母さんは、極めて少ないのである。どうしてかというと、子どもというのは基本的に我が儘だし、母親の言うことを素直に聞くことが少ない。素直で従順な良い子なら愛せるけど、反抗的な態度を取るような子どもはどうしても愛せないのだ。良い子に育てたいから、強く叱ってしまうし、しつけを優先してしまうのである。ましてや、父親が父性愛を発揮してくれなくて、母親だけが育児をしなければならない状況なら、なおさら子どもに厳しく当たってしまうのだ。

 お母さんが我が子をまるごと愛せない理由は他にもある。お母さん自身が自分の母親からまるごとありのままに愛されていなのだ。つまり、お母さんに絶対的な自己肯定感が確立されていないケースである。お母さん自身が自分のことをまるごと愛せないと、自分の嫌な部分や恥ずかしい自分を好きになれない。誰でも自分の中には、好きな部分と嫌いな部分が同居している。好きな部分は愛せるし、嫌いな部分は自分にはないことにしたいのである。我が子の中に自分と同じ嫌な自己を発見すると、我が子をまるごと愛せなくなるのだ。

 我が子の中に、自分でも許せないマイナスの自己を見つけてしまうと、我が子をまるごと愛せない。マイナスの自己も含めて自分をまるごと好きになることが出来ないと、我が子をまるごと好きになることが出来ない。だから、ついつい条件付きの愛である父性愛的な対応をしてしまうのである。または、我が子を完璧な良い子に育てようと、必要以上の介入と干渉をしてしまい、まるで毒親のような仕打ちをしてしまうのである。支配と制御を強く繰り返し、まるで母親の操り人形のように育ててしまうのだ。

 このように、母親との良好な愛着が形成されることなく、強い干渉や介入をされ続けてしまうと、子どもの自組織化が阻害されてしまい、システムエラーを起こしてしまうのである。これが愛着障害であり、二次的症状として『自閉症スペクトラム障害』(ASD)を起こしてしまう。ASDは発達障害と世間では呼ばれているが、アスペルガー症候群などもこれに含まれる。母親はありのままにまるごと我が子を愛したいのに、様々な要因が複雑に噛み合わさって愛せなくて、愛着障害やASDを発症させてしまうのだ。

 ASDは先天的な遺伝子の異常による障害だと医学界では言われている。確かに、遺伝子による影響もある。生まれつき、育てにくい子どもがいるのは確かである。育てにくいからこそ、あるがままにまるごと愛せないという側面もあろう。だとしても、愛着障害になってしまうのは、育てられ方に問題があるのは間違いない。だから、愛着障害による二次的症状としてASDが起きているなら、ASDの症状だって和らげることが出来る筈だ。今までの医学常識ではASDは治らないとされているが、愛着障害を癒すことで、ASDも改善するに違いない。

 子どもの愛着障害を癒すには、お母さんがまずは変わらなければならない。というよりも、お母さん自身の傷ついた愛着を癒す必要がある。それには、自分がまるごとありのままに愛される経験が必要だし、どんな時にも自分を守ってくれる安全基地が必要なのである。自分のパートナーがそういう存在になってくれることが確実なのであるが、なかなか難しいかもしれない。男性の約半数以上がASDの傾向があるからだ。お母さんをまるごとありのままに愛してくれる安全基地には、安定した愛着を持っている人しかなれないのである。自分の傷ついた愛着を乗り越えた経験を持つ人を安全基地に出来たら可能かもしれない。

 

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